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第40話 自覚

 そういうわけで、ミリアナとしての私は予定通り、エリア23の街の内政権を入手した。それまでユーザの管理下になかった場合はタダで手に入る。『始まりの街』があるエリア1と比べたら、競争がない辺境である。ゆったり内政ができるだろう。まずは、MPポーションの素材になる薬草の栽培を街の名産にしてみようかな。


「いくぜ、お前ら! 『ミリアナ・レインフォール』から領地を奪ったとなれば、一躍有名になれるぞ!」

「「「「「うおおおお!」」」」」


 ゆったりできなかった。これで5回目の防衛戦である。ぐっすん。


「付与『風圧烈波』『氷結撃槍』『雷鳴乱輝』。蹂躙せよ、魔剣レインフォール!」


 カッ


 ドゴオオオオオオオオオオンッ………


 …

 ……

 ………


 くるっ

 チンッ


「防衛、完了」


 まあ、数人のパーティなら瞬殺できるね。


「な、なんだよ、これ…。魔剣レインフォールは、『シャイニー・レイン』特化のユニークウェポンじゃなかったのかよ…」

「忘れたの? 私は魔法剣士だよ」

「どんな剣でも、魔法で強化するのは当たり前ってか…くっ」


 シュウウウウ…


 パーティメンバーが揃って死に戻っていく。ステータス半減が半日続くペナルティは変わらずである。合掌。


「そういえば、防衛に成功しても、ワールドアナウンスはされないんだっけ。それがないから、宣戦布告が後を立たないのかな…」


 防衛成功のアナウンス、ユリシーズさんを通して運営に提案してみようかな。なんというか、専守防衛をしている気分にならないほどの労力だ。はう。



 フォークロア・コーポレーション本社。土曜恒例の定例ミーティングで早速言及したのだが。


「あー、申し訳ありません。勢力争い全体の活性化のために、防衛成功アナウンスは導入しないことにしたのですよ」

「続けて防衛成功していることを知ったら、どこもしばらく避けるか…」

「宣戦布告といっても仕組みはPvPですから、戦闘を拒否することもできますよ?」

「それはイヤ。相手に失礼」

「難儀な性格ですね…。だからこその『ミリアナ・レインフォール』ですが」


 魔剣レインフォール自体が、初心者同然のアバターがひとりでエリアボスを倒そうとか考えない限り手に入らないシロモノである。ユニークシリーズを手に入れたユーザは、どこか妙なこだわりや言動がある者達ばかりだ。ユーマ・アイスフィールドの超絶回避のプレイヤースキルもしかり。


 そして、そんなユーザは、他と比べてアバター同期率が凄まじく高いそうだ。スキル修得の効率、レベリングの速度は桁違いらしい。調理スキルでいえば、マニュアルモードで記録する際の手作業の精度や速度が、通常のユーザの数倍というオーダーである。

 そしてその中でも、私は少ない情報量のやりとりでそれを可能にしている。生身では役に立ちそうにないそれは、VRゲームでは絶大な効果がある。肉体的にも精神的にも。


「ヘラルドくんにしても、美少女NPC集団を攻撃魔法であっさり殲滅ですからね。少しは躊躇しそうですが」

「拓也、ゲーム内でもいいから女性アバターにモテたいってアレほど言ってたのに…」

「それ、本心だったのですか?」

「まあ、ユーマ…前島さんへの対抗意識でそう言っただけかもだけど…見苦しいほどに」


 実際、学校での拓也は女子にデレデレするようなことは一切せず、それどころか、関心の薄そうな態度らしい。中二特有のカッコつけとかそういうのではなく。…というのは、拓也のクラスメート兼ギルメンの言だ。ウチに来たことがあり、ミリアナと一緒に火山噴火に対応した、あの二人である。


「そういえば、ヘラルドがユーマに対抗意識を燃やし始めたのは、ゲーム内で『コナミ・サキ』としての私がユーマに紹介した時から、とも言ってたな…」


 つまり、それは。


「霧雨さん、もう気づいているんでしょう? 拓也くんが前島さんに対抗しているのは…」

「…姉離れは、してほしいものです」

「あなただって、メイド集団に思うところがあるのでは?」

「…小姑に、なりたくないし」


 いや、拓也とまた仲良く話すようになったのは嬉しいよ? 嬉しいけど、それはほら、家族愛っていうかね? 他に何があるっていうのかな? ねえ。


「霧雨さんの場合、前島さんに対してもですね。あれだけわかりやすく好意を示しているのに…」

「…別に、私にだけってわけでは…。前島さん、モテるし」

「確かに、()はかなりのイケメンですね。でも、モテることと人気があることは違いますよ?」

「それ、は…」


 …


「とにかく、あなたは自身が他者からどのように見られているか、よく理解した方がいいと思います。もちろん、今回も正しくいい意味でですよ?」

「どうって…」

「私達運営スタッフが初めてあなたのプロフィール写真を見た時、とても驚きました。その昔、フォークロア・コーポレーションが総力を挙げて作り出した、理想のNPC。それに生き写し(・・・・)だったのですから」

「理想の…NPC?」

「今は、様々なNPCやアバターの素体データとして使われています。最も近いのは、女ドワーフのアバターですね。偽装セット『コナミ・サキ』の基礎データでもありますね」


 その通りだ。その通りだけど…。


「…整った童顔ルックス、小柄でほっそりとしたスタイル、清楚な美少女感溢れる雰囲気…わがまま放題しても許されそうな可愛らしさなのに謙虚な態度。そして…そして、あのNPCすらなかった、反則的なまでのふくよかな…!」

「…ユリシーズさん?」

「なんでもないですよ。はあ、女性スタッフ一同に頼まれたスナップ写真、どうやって撮りましょうかねえ…」


 なにやら小声でぶつぶつ喋り続けるユリシーズさんをぼーっと眺めながら、これからのことを考え始めていた。これからの…拓也や前島さんとの接し方について…。

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