第29話 詰問の裏側
話すきっかけ、かあ。確かに、あんな『秘密』を共有したら、いろいろと話すことが増えるね。同じことは、実は拓也にも言えるんだけど。ゲーム内では相変わらずあまり一緒じゃないけど、リアルであれこれ話題を繰り広げることが多くなったと思う。いいこと…なのかな。
と、つらつらと思いふけりながら空のお弁当箱を包み、私も教室に戻ろうと立ち上がる。そのタイミングで、近づいてくる人々が。
「霧雨さん、ちょっといいかしら?」
他のクラスの女子生徒が3人。そのうちのひとりに、そう話しかけられる。
「前島さんのことで、話があるんだけど」
…ああ、これは、アレか。
これまでにも他の生徒から何度かあった、アレである。
そういえばこの娘達、前島さん…『ユーマ・アイスフィールド』がギルマスやってるギルド『新緑の騎士団』のメンバーだって言ってたかな。一度、教室を訪ねてきたところを見たことがある。前島さんと少し話をして、私がいることに気づいたら、例によってそそくさと去っていったっけ。なんだかなあ。
「いい、けど…」
「ここじゃなんだから、一緒に来てくれる?」
「う、うん」
とりあえず、素直についていく。これまでの経験から言って、変に逆らわない方がいいのは確かだからだ。はあ…。
◇
教室棟の一階の、階段のところの人目に付きにくいところ。そこまで連れられてきて、3人は私の方に向き直る。
「霧雨さん、さっき、前島さんと一緒にお昼食べてたわよね?」
「楽しそうに話していたけど、どんなことを話していたの?」
「一通り、聞きたいんだけど」
ああ、イントロが始まってしまった…。
「えっと、ゲームで手に入れたっていうユニークウェポンのこととか、最近の登下校での出来事とか…」
という感じで、うん、嘘じゃないよねってノリで適当にごまかしつつも、当たり障りのない内容を伝えた。
「だから、ほとんど他愛もない話で…。ホントだよ?」
そう言って、少し微笑んでみる。正直言えば、どうにも面倒なところがあるんだけど、敵意があると思われても嫌だし。
3人の娘達は、しばらく呆然とした様子を見せていたが、そのうち、はっとなって、
「そう、なの…。霧雨さん、」
ガシッ
「本当に、本当にありがとう! 優希様のことをいろいろ教えてくれて!」
「ゲームではギルメンでも、リアルのことはなかなか教えてくれないし!」
「でもでも、ギルマスのことはいろいろと知っておかないといけないし! でしょ?」
「え、まあ、そうかも、しれないね…」
そう言って、私の手を一斉にとって感謝を表す三人娘。『新緑の騎士団』って、事実上の前島優希ファンクラブらしいからねえ。隣のクラスだとリアルで話しかけることも難しいだろうし、なんというか、必死である。こうして相手にすると疲れるけど。
「霧雨さん、また機会があったら教えてね! それじゃあ!」
そう言って、3人は隣のクラスに向かって戻っていく。うん、やっぱり疲れた…。
◇
ちょっとお疲れの顔をしながら、私も教室にむかっていると、前から前島さんがやってきた。
「ミナ、まだここにいたんだ」
「あ、前島さん」
「なかなか教室に戻ってこないから、探しに来たんだよ。何かあったの?」
「ごめんなさい。実は…」
多少オブラートに包んだけど、三人娘のことを正直に伝えた。はっきり言って、悪い話ではない。少なくとも、前島さんには。
「え!? ミナ、彼女らに何かされた!? 大丈夫だった!?」
「え、も、もちろん、何もされてないよ? やだな、楽しくお喋りしただけだよ」
「楽しく…そう、そうか。ミナが、そう言うなら…」
え、前島さん、なんかちょっと怖いよ? なんで?
「とにかく、もう午後の授業始まるよ。急ごう」
「うん」
すたすたすた
「…ボクをダシにしてミナとお喋りなんて、ずいぶんバカにしてくれるじゃないか…。今日のギルド会議で吊るし上げようか…」
ん?




