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第22話 リアルでの邂逅

「えっと…本当にいいのかな?」

「昼間は両親とも出かけているから、今は弟がいるだけだよ。もしかすると、ログイン中かもしれない。一度、ゲームの中で会ったよね」

「あの弟くんか…。い、いや、なら余計にマズイかもというか」

「そんなことないと思うけど…」


 などと話をしつつも、結局ふたりして私の家にたどり着く。

 玄関に鍵…はかかってないな。私が出かける時は閉めたのに。拓也がログインしてるかもしれないのに、不用心だなあ。


「それじゃあ、入って」

「お邪魔、します…」


 ぱたぱたぱた


「姉ちゃん、早かったじゃん…って、その人…は?」

「今日、一緒にお出かけしたクラスメートの、前島さんだよ」

「えっ、今までこいつと二人きりだったのか!?」

「拓也、こいつとか失礼。あと、指差さない」


 なんでいきなり敵視してるかな?

 前島さんって、学校では男女問わず人気があるから、ここまでの反応を見るのは珍しい。


「とにかく、ゲームのアバター設定のことでちょっと寄ってもらったの。だから、これから私の部屋に…」

「ダメだ! フルダイブ装置持ってきて、リビングでやれよ!」

「なんで? 面倒じゃない」

「ミナ、ボクもリビングの方がいいと思う…」


 ピクッ


「『ミナ』…? あんた、姉ちゃんのこと、いつもそう呼んでるのか?」

「え、ああいや、その…まあ…」

「ふーん…」


 …

 ……

 ………


 え、何この剣呑な雰囲気。


「わ、わかったよ。じゃあ、リビングで…」

「いや、それもダメだ! 父さんのフルダイブ装置を持ってくる。アバター設定とやらは、俺が一緒にログインして、そいつに教えるから!」

「え?」


 なんでそうなるの? ていうか、そいつとか言わない。あと、指差さない。



 リビングの様子は、なかなかシュールだ。


 それぞれフルダイブ装置を付けて横たわって眠っている、拓也と前島さん。テーブルを挟んだソファーふたつがそんな状態である。そして、その姿を眺める私。


「私は、どうしていればいいんだろう…」


 私も自室からログインして『コナミ・サキ』としてふたりの様子を見に行くと、たぶん、中にいる拓也がうるさいと思う。かといって、『ミリアナ・レインフォール』としてふたりのアバターに近づく理由が見当たらない。むう。


「しかたない、今日は当番じゃないけど、夕飯の下ごしらえでもしておくか…。今日はカレーライスの予定だったよね」


 日曜日の夕食はお父さんが当番だ。休みの日くらいは作りたいということで、さほど凝ってはいないもののよく作ってくれる。拓也も、見習って欲しい…。


「たまねぎを刻んで、じゃがいもとにんじん、お肉を一口サイズに切っておけばいいか。お父さん、一番手間がかかるはずのたまねぎを炒めるの好きなんだよね。味の決め手だって言って」


 ということで、自室に戻って鍵をかけ、『ファラウェイ・ワールド・オンライン』にログインする。


 マイルームで、すぐに偽装アバター『コナミ・サキ』を設定すると共に、オンライン通知がオフのままとなっていることを確認する。表向きのアバターである『コナミ・サキ』でログインしている時は、偽装ステータスのままでオンライン通知をオンにしていることが多い。今回みたいに、ログインしていることを知られると面倒そうな場合は、わざとオフのままにする。


 そして、今や土曜日午前はおなじみとなった、長時間の『現界』時も同様だ。


現実世界(Real World)の『自宅・リビング』に転移します。よろしいですか? 〔はい/いいえ〕】


 〔はい〕を、押す。


 ひゅんっ


「…ふたりは、まだログアウトしていないよね。よしよし」


 リビングの転移地点は一応、隅の目立ちにくいところに設定してある。見た目『霧雨美奈子』そのままの存在が転移してきたところを見られたら、まるで言い訳がきかない。


「さてと、材料は並べたから…『調理(クッキング)』マニュアルモード」


 調理スキルを発動させながら、包丁でじゃがいもを切っていく。このモードで一度やればレシピとして記録されるから…。


「終わりっと。あ、お皿に乗せてラップをかけておくところまで記録しておこう」


 そこまで済ませてから、にんじんとお肉をまな板に乗せて、同じように記録していく。一口サイズといっても、皮を向いたりするところが食材によって違うから、個々に記録していくしかない。次作る時にレシピモードで楽をするためだ。


「たまねぎは、マニュアルモードにしてから、皮を向いて…『ウィンドカッター』」


 普通(?)の風魔法を発動して、皮なしのたまねぎを切り刻む。範囲限定の高密度な発動だ。これを、たまねぎ1個分のレシピとして記録し、他のたまねぎはレシピモードで自動みじん切り。全てのたまねぎが刻み終わり、鍋に放り込む。


「冷蔵庫には入れなくてもいいかな。今日は涼しいし。…って、まだふたりともログインしてるの!?」


 スキルである程度手早くやったとはいえ、あれから1時間は経っている。アバター設定のためだけにしては時間がかかり過ぎる。


「さすがにこれだけ遅ければ、見に行っても文句言われないよね…。よし」


【エリア1『中央噴水前』に転移します。よろしいですか? 〔はい/いいえ〕】


 〔はい〕を、押す。



 ガヤガヤガヤ


 あれ、なんか騒がしい。えっと、私が見られているわけじゃないよね? 今は『コナミ・サキ』に偽装してるし。セレブ反応とやらは勘弁。


「うお、あともう少しだったのに!」

「ああっ、おしい!」

「そこ、そこにキマれば!」


 周りのアバターのほとんどが、手元に中継スクリーンを表示させて何かを観戦している。


「あのう…何かあったんですか?」

「ああ、今ログインしてきたのか。いや、ふたつの大手ギルドのギルマスふたりが、最終クエストの『闇の王』に挑んでるんだよ!」


 はあ。


「しかも、パーティ組まずに、どっちが先に討伐できるか競ってるんだと」

「相手に削るだけ削らせればいいのに、どっちも競うように『闇の王』に攻撃していてさ」

「剣士が前衛で魔導士が後衛って分担すればかなりいけそうなのに、アホだよなあ」


 はあ。


 って、剣士と魔導士!?


 私も中継スクリーンを表示させ、戦っているアバターの情報を見る。


 剣士『ユーマ』。前島さんのアバター名。

 魔導士『ヘラルド』。拓也のアバター名。


 なにしてんのよ、もう。

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