第44話 存在
「美奈子が…ミリアナだったの!?」
「そういうこと。あ、ちょっと待っててね」
たったったっ…
がちゃっ
ごそごそ
…
……
………
「拓也、美奈子が部屋に行ったっきり、戻ってこないぞ?」
「まあ、もう少し待っててくれ。そろそろ…」
ぶおんっ
「ほいっと」
「み、ミリアナ!?」
「え、美奈子…なの?」
「これが、ミリアナの『現界』…!」
という感じで、自宅のリビングにて、拓也くんの立ち会いの下、お父さんとお母さん、そして、霧雨浩人さんに、実演を交えていろいろとぶっちゃける。あとで、あらためてフォークロア・コーポレーションにも行ってもらおう。
ちなみに、あの後どうやって機動隊やら警察やらをどうにかしたかというと。
(1)私ひとりだけ、船から逃げ出すかのように降りる。
(2)警察軍団(仮)が近づくのを見計らって船を急速出港させる。
(3)埠頭から離れた地点で、拓也くんが『現界』スキル付与魔石を使って船ごと回収する。
本人が無事だったのだからおしまいだよってするのに時間がかかった。事情聴取が長かった。はう。
「そうか、ミリアナの『現界』能力は、美奈子の霧雨一族の力としての発現だったのだな。制約はあるが、VRゲームと組み合わせると、なかなかに強力だ」
「そうなんですか、浩人さん?」
「私の力も『現界』なのでね」
「そうなんですか!?」
「一年に一回、春分日にしか発現できないがね。詳しく思い浮かべた物が『現界』する」
「すげえ!!」
拓也くんが驚くのも当然だ。まさしく神のような力だよ!
「いや、所詮は私も人間だ。想像力…いや、創造力か、自ずと限界がある」
「というと?」
「たとえば、あの小型クルーズ船は、数年前に『現界』させたものだ。船舶設計に関心があってね」
「あ、なんかわかりました」
天地創造ってレベルではないな。そう考えると、『ファラウェイ・ワールド・オンライン』内のあらゆるものを現界できる方がとんでもないか。人外レベルを競うのもどうかと思うが。
「しかし美奈子、そうすると…なぜ『レインフォール』なのだ? お前は霧雨一族のことを知らなかったのだろう?」
「あれは、私が『ミリアナ』として最初にボス討伐した時にドロップした、ユニークウェポンの名前なの。『魔剣レインフォール』。それにちなんだだけ」
「その武器の名前を付けたのは?」
「それは…ああ、アレも一種のクエストかあ」
つまりは、『NPC制御システム』である。霧雨一族という、世界中で暗躍する人外集団のことまで把握していたわけだ。開発当事者のはずのフォークロア・コーポレーション社長以下、運営の面々すら知らないことを。私自身の『現界』能力まで取り込むのだから、相当なものである。
「他にも気になることがある。私達の『暗示』だが、美奈子と拓也には全く効かないのだ」
「そうだったねえ。って、拓也くんもなの?」
「そうなのよ」
「ああいや、だからそれが俺達の力なんじゃね?」
「私達の? ああ、ゲームで言う『耐性』か!」
「そうそう。もちろん、パッシブスキルな」
「なるほど…」
なんか、だんだんピースがハマってきたような。
「そういえば、『耐性』には『反射』が含まれていることもあるね」
「というと?」
「『レインフォール』が『霧雨』の英語名と知っているなら、私がミリアナであることをまず疑うと思うんだよね」
「「…あっ」」
「私達にも力が発現する可能性も気づいてなかったしね。存在すら疑わない、っていうのがふたりに『反射』していたのだとしたら…」
「ちょっとまて、もしかして、それ俺にも影響していた!?」
「あー、そうかも。前島さんの方が先に気づくって、確かに変かもね」
「灯台下暗しだと思っていたのに…」
そんなこと言ったら、『コナミ・サキ』との差別化成功っ、と思っていた私は…。がっくし。




