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第六十四話「異変」


 言い訳は後書きで語らせていただきます。

 いえ、語らせてください。



 辺りに生える木々から伸びる枝葉が真上に位置する太陽から大地を覆い隠す。上を見ても枝葉の間から僅かに光が差し込むくらいで、真昼にも関わらず森の中は薄暗い。それは同じ森の中にあるが木のない道でも同じで、それだけでこの森がどれだけ深いのかが窺い知れた。

 この森に辿り着いてからただひたすらに一本道を辿って来た俺達は途中でその足を止めていた。

「さて、桜華・・・君はどっちだと思う?」

 地図を片手に左右にある道を交互に見ながら腰に手を当てるオルスレッド。

 そもそも、どっちだと思う? と訊かれたところで答えは既に決まっている。ルート上、この道は真っ直ぐ(・・・・)進むことになっている。

 分かれ道など存在しないのだから。

 戀国を出発してからの三日目。朝食を摂っていたら突然姉さんがやって来て、


『ちょっとこの先の様子を見てきてくれない?』


 という具合に駆り出されたのだ。強制的に。

 しかも、馬車だと遅いから自力でGO! と言われて先行して来たのだが、まさかこんな事態になるとは思ってもいなかった。

 俺達が今いるのは戀国とフィアナード王国の間にある、若干フィアナード王国よりに広がる広大な森だ。樹海と言っても差し支えないだろう。まあ樹海と言っても、山あり谷あり(文字通りの意味で)川あり泉あり砂漠あり廃墟ありと・・・。

 何でもござれの場所だ。

 もちろん霊、妖怪、霊獣も生息している。しかも、アトラントの周りを囲む『迷いの森』よりさらに上の高ランクが。

 そんな訳で今回の旅にあたり一番の懸念点がここであり、何事もなく無事通過出来たらいいな、なんて思っていたのだ。まあそんな思いは森に入ってしばらくしてあっさりと砕け散ったわけだが。

 この森を抜けるために存在する唯一の一本道。

 その一本道になんと、左右へと別れる道が出来ていた。

「天上院先輩は感がいいと言うか、単に僕たちがついてないと言うか、何と言うか。不運だよね~」

 笑みを浮かべながら言い放つオルスレッドに溜息を付きつつ、左右の道を観察する。

 薙ぎ倒されたり鋭利な何かで切断された木々がそこら中に転がっている。微かだが、霊力の残り香も感じられる。

 それを見て何かが気になったが何が気になったのかがはっきりしなかった。

「とりあえず、何かが向かった方に行くか」

「そうだね」

 はっきりしないモヤモヤ感を抱きながら何者かが作った、あるはずのない分かれ道を、おそらく何者かが向かったであろう方の道を進むことしばらく。荒れ道はようやく終わりを向かえた。

 と言っても、その先もこれまた薙ぎ倒された木々でいっぱいで、違う所と言えばそこが広場になっていた事だ。

 争った後がそこら中に見て取れた。

 そして、一ヵ所だけ木がない場所があった。そこはまるで爆発が起きたかのようにクレーターが出来ていて、俺とオルスレッドはその中心でそれ(・・)を見下ろしていた。

「・・・ねぇ、桜華。これって、もしかして・・・」

 オルスレッドの声が戸惑いで震えていた。

 男がそう簡単に震えてどうすると言いたい所だったが、かく言う俺も若干震えていた。

 目の前に存在するものに。

 それがそうなった原因に。


 額の中央から生えた一本の角に、純白の毛を持つ馬。

 普段は大人しいが、自らに害意を加える相手に対しては獰猛になり、一度暴れ出したら周囲に存在するもの全てを薙ぎ倒すか、乙女の抱擁でしか静まらないというさまざまな逸話を持つ霊獣。


「・・・一角獣(ユニコーン)

 その死体を見ながら俺はそいつの名を小さく呟いた。


                  ◇


「どうだ、オルスレッド。何かわかったか?」

 オルスレッドはユニコーンの死体を、俺は周囲の状況を調べ始めた。一通り調べ終わって戻って来たがオルスレッドはまだユニコーンの死体を調べていた。

「残留霊力と腐敗の状態から見て死後一週間前後。これをやった奴は相当な手練れだよ。死因は心臓を突き刺されたからだけど・・・」

 オルスレッドの言いたい事はすぐにわかった。

 腐敗はしているものの、何かと戦って殺されたにしてはあまりにもその死体は綺麗すぎた。外傷は心臓を突き刺した時の一つだけった。

 霊獣の中でもSランクを誇る、神獣級の霊獣―――一角獣(ユニコーン)

 そのユニコーンが殺られたのだ。

 俺でも無理だ。

 たった一撃でなんて。しかも、急所を。

「・・・ちょっと待て」

 そこまで来てある事が気になり、死体に近づいた俺は右腕の服の裾を捲り、覚悟を決めて右手を死体の傷口へと突き込んだ。

 グチュリ。と、腐った地肉の感触が右手を覆う。それを堪えて更に肘の辺りまで突き込み、そこにあるはずの物を探す。

「・・・ない」

 目的の物がないことを確認して腕を引き抜いた。

「ないって・・・まさか、心臓が!?」

 そう、このユニコーンの死体には心臓がなかった。おそらく抜き取られたんだろう。

 しかも、ないのは心臓だけではない。

 一角獣と言われる所以の角までも根元から切断されていてなかった。

「ユニコーンを狩れるチーム。ヤバいんじゃない?」

「チーム・・・か。そいつはどうかな」

「え?」

 確かにSランクの霊獣を狩れるチームはある意味ヤバい。そこまでの実力があり、まともな思考の持ち主じゃなかったら問答無用で襲われる可能性があるが。

 だが、それがチームであるならばだ。

「その死体を踏まえて、ここまでの道と周りを見て何か思わないか?」

「思わないか、て言われても・・・っ!」

 一瞬困惑の表情を浮かべたオルスレッドだが突然立ち上がり首を世話しなく動かす。

「まさか、そんな。これをやったのが一人だとでも!? あり得ない!」

 そう、俺はこれが単独犯だと思っていた。

 何故そう思うのか。それはここまでの道に残っていた戦闘の痕にある。

 薙ぎ倒された木と切断された木。あるのはこの二つだけ。

 薙ぎ倒された方はユニコーンがやったのだろう。何かを追って薙ぎ倒したのか逃げる際に薙ぎ倒したのかは取り敢えずおいていて。切断された方はどちらかはわからないが、切断面に微かだが霊力を感じ取れた。

 どれもこれも同じ風属性の上位属性である疾属性の霊力。しかも、残留霊力の特徴からして使われた霊術の数は、一つだけ。

 複数人だったとしたら霊術を一種類しか使わないなんて非効率的で意味のない事はしないはずだ。そんなのでは相手に逃げられてしまう。そもそもSランクの霊獣を相手に一種類の属性だけで倒すなど不可能だ。

「最近・・・戀国の周辺だけじゃなくて、少なくともこの大陸の至る所でSランク霊獣の死骸が発見されてるってこの前、師匠が言ってた。でも、どこの商会や国にも討伐成功の報告は来てないらしいんだ」

 オルスレッドが小さく呟く。

 確かに似たような情報が十二天族にも来ていた。

「そのどれも、心臓と霊獣の象徴たる部分が剥ぎ取られていたらしい」

 ここまで来ると、犯行は一人でもそれら全部の仕業が単独犯という線は薄いだろう。いくらなんでもそれだけの規模を一人でとは到底思い難い。

「とりあえず警戒レベルを上げないといけないな」

 嫌な予感がする。

 これだけ高ランク霊獣の素材を集めているとなると相当な触媒が作れるはずだ。善悪は分からないが大規模霊術が行われていてもおかしくない。

「・・・はぁ。面倒事が増えたな」

「確かにね。ついでだから反対側の道の方も見ておく?」

「何もないだろうけど、一応見ておくか」

 オルスレッドの提案に乗って来た道を引き返すことにした。


 反対側の道は先ほどより少し長く、その先は池になっていた。湖と言うには少々物足りない大きさの池で、中央に直径五メートル程の陸地が顔を出していてそこに一本の木が生えていた。

 木にしては小さい部類に入るが大量の葉が青々と茂っている二メートル程度の高さの木。


 だが、その木は・・・光っていた。


「こんな所に天然ものの霊樹が生えてるなんて」

「・・・知らなかった」

 霊樹は霊力を宿した木とされているがその実、霊力や霊素を生産する木である。

 霊力が他の場所より濃い霊力スポットなどに生えていることがあり、大気に漂う霊力や霊素を生産するだけでなく、霊樹が生えるその地は枯れる事がなく、動物や霊獣などの住処、もしくはここのように水場に生えていると水飲み場等といった場所になる。

 霊獣たちにとっては霊力も食す対象になるため、霊力の多い場所は貴重であり、知性の低い動物や霊獣たちでもそういう場所では争わないような場所になっていて、俺達人間の間でも神聖な所であるという認識になっている。

 戀国の中心都市、アトラントの中心にも戀国では世界樹と呼ばれる程に超巨大な霊樹が生えている。

「ここで一息ついている時にでも襲われたんだね」

 敵が隙を見せている時に襲うのは格上の敵を相手にする場合は有効であるが、それでもSランクの霊獣がそうそうやられるものではないはずなのだが。

「これ以上収穫はなさそうだね。そろそろ僕たちも戻ろうか」

 幸いにして休息しに来た動物や霊獣、霊も精霊もおらず、周囲を調べ終えたオルスレッドが戻って来る。

「・・・・・・」

「桜華?」

 しかし、俺の意識は霊樹に向けられていた。向いていた(・・・・・)ではなく、向けられていた(・・・・・・・)

 何かがそうさせるように。

 確かにこんな所に天然の霊樹は生えているのは珍しかったが、そんなことではなくもっと別の何か・・・それが一体何なのかはわからないが何故か無性にその霊樹が気になったのだ。

 どうして気になったのかもわからない。

 それなのに何故か悲しさが込み上げて来た。

 これはいったい・・・。

「桜華!」

 オルスレッドの大きな声に意識が引き戻される。

「あっ、ああ。なんだ」

「どうかしたの?」

「いや・・・なんでもない。それで?」

「本当に? まあ、君がそう言うなら。これ以上は何もなさそうだから戻ろうかって」

「そうだな、戻るか」

 口ではなんでもないと言ったが、やはりどうしても霊樹の事が気になってしまっていたが、これ以上長くは姉さん達から離れてはいられないため、合流すべくその場を後にした。


                  ◇


 桜華達がその場を去った後、それは起きた。

 池の中心に生え、葉や枝、幹に根と言った木全体が淡い光に包まれ、霊力を放出している霊樹に―――異変が起きた。

 突然、まるで止まっていた時が動き出したかのように青々としていた葉が茶色に変化し、光を失った後に地に落ちる。


 霊樹が、枯れ始めた。


 枝はまるで痩せこけるかのように細くなっていく。

 人工的に植えられた霊樹ならば十分な栄養や霊力が摂取できなかったり、植えた場所が霊の瘴気やドス黒い霊力に汚染されていない限り枯れる事はないとされている。人工的に植えた霊樹は仕方がないとしても、天然ものの、しかも二メートル程まで成長した霊樹ならば、ちょっとやそっとじゃ枯れる事はない・・・・・・はずなのだが。

 枝先から光が消えていき、幹からも、根からも完全に光が失われてしまう。

 十分にまで成長したとは言え、これからまだまだ大きくなりこの地を支えていくはずの霊樹が、目だった外部からの干渉を受ける事なく、静かに、その寿命をおえていく。

 後には完全に枯れきった木だけが残り、二度とそこに動物や霊獣、霊といった生命が群がることはなかった。


                  ◇


 フィアナード王国の領土の大半は自然だ。その比は7:3の割合で自然で成り立っている。実際、この王都以外は町というよりも村と言った方がいいようなもので、城壁に囲まれている王都自体も、王城の向こう側は手つかずの大自然で半分もの面積を占めている。と言ってもこの城壁、居住部分のみを囲っているだけで王城よりも向こう側にはない。

「……ちなみに、あの城壁は十一年、いや。もう十二年前になるのか。クーデター時にもあったが、当時は今の半分ほどの高さしかなかったらしい」

「へぇ~」

 暇だと言って俺とオルスレッドが乗る馬車に遊びに来た綾香と美永瀬。そろそろ到着する頃になってフィアナード王国について教えて欲しいと言い出したので、少し調べればわかるようなことを美永瀬に説明し終えると、馬車の入り口に設置されている馬車同士を繋ぐ転移霊術が発動して誰かがやって来た。

「天蘭院さん、いる?」

「は、はい! て、えぇ! 天上院先輩!?」

 我が物顔で突然やって来た姉さんの姿を見て綾香は驚きながら立ち上がる。

「わかっていると思うけどそろそろ到着なのよ。それでね、悪いのだけど先頭の方に来て欲しいの。あ、この馬車でそのまま来てもらっていいわよ」

「わかりましたけど、どうして先頭に?」

 俺たちの乗る馬車(正確には俺とオルスレッドが乗る馬車)は最後尾にいる。王城近くの宿舎までこのままの予定なのだが、王都にすら入っていないのに今ここで綾香を先頭に呼ぶということは……。

「どうやら向こうさんに先手を取られたみたいでね。ま、来れば分かるわよ―――ふふ」

 最後何やら意味ありげな視線を俺に向けて姉さんは再び転移霊術で帰って行った。

「先手って、何の?」

「さ、さあ? 何だろう。あ、すいません。このまま先頭まで行ってくれますか?」

「この状況で先手と言われれば、一つしかないだろう」

「え?」

 止まりかけていた馬車が再び加速していく。先頭まで行くと列から離れて一車だけ城門手前で止まっていた。そしてその向こうには、甲冑を着た集団とその先頭に立つ二人組がいた。

 女性と男性の二人組。

 男女といった違いはあれどその顔立ちは似ているところがあり、姉弟だと言われても納得出来そうなほどだった。

 姉弟であることは事実なのだが。

 綾香は俺たちを迎えている人物を見て誰かわかったのか、急いで身だしなみを整えて馬車が止まるなり若干慌てながら馬車を降りて既に降りていた姉さんの所へと駆けて行った。

「あれが……」

 窓越しにお互いに挨拶をする四人を視界に入れながら、俺の意識は相手の二人に向いていた。

 写真で見たことはあったが、こうして実際に本人達を見るのは今回が初めてだった。

 男性に比べ女性の方が少し背が高く凛とした佇まいで、離れていてもその瞳に強い意志が宿っていることが感じられ、高貴さが伺えた。服も気品差が感じられる物で、所々に最低限の防具がついていて戦闘用だと思われるが、赤色をベースにしたドレスのような衣装。顔立ちも大人びていて、美人と言っても差支えない。

 男性の方は大人になりかけといった、やや幼さが残る顔立ちだが青色をベースにした衣装に身を包み、どこか威風を感じさせる佇まい……をしているが、見る人が見れば背伸びをしている一人前になりきれない少年といった感じだ。

 そしてその二人に共通する―――他の者は絶対に持ちえない―――紅い瞳。


 フィアナード王国第二王女、エルナティア・ウル=フィアナードと、同じく第一王子、フィルアート・ルウ=フィアナード。


 今回の【おまつり】の主催者にしてこの国のトップに位置する二人がわざわざこんな所まで律儀に出て来て俺たちを出迎えていた。



 1年と半年前に活動報告にて、大学生活が忙しいとの旨で執筆時間がなかなか取れないと言う事を嘆いて以来、音信不通になっておりました。


 まだ覚えていてくれてる方はいますかね?

 お久しぶりです。アリッサです。

 大丈夫です。無事です。生きてます。逃げてません。現実逃避してただけです。(←逃げてるよね?w)


 単刀直入に言い訳を言うとですね……いくつかあるんですが、大学生活が忙しいのはもちろんのこと、書く気力のムラッ気が酷かったり、他の方の長編小説にはまってしまったり、ログインIDを忘れてしまったり、そもそも存在を忘れていたり、etc,etc……

 はい。もうね。本当に―――現実逃避してました。ごめんさい。

 書ききる気ではいるんですが思い通りに上手く書けなかったりして、一度遠ざかると戻って来るのに凄い時間が掛かってしまったりで。

 本当、申し訳ない。


 え?謝るくらいだったら少しでも書いて更新しろって?まったくもってその通りです。ぐぅの音も出ないです。

 と言っても、そうほいほいと更新できるかはわかりませんが、少しでも多く書いて少しでも早く更新できるように頑張りますので、どうか温かく見守ってください。よろしくお願いします。

 あまり長く語っても疎ましいだけかと思いますし。

 ではでは、次話でまたお会い出来る事を。


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