68_エリック父母、帰る
エリック母と先に朝食を頂いていると、遅れてエリック父とエリックが連れだってダイニングルームに入室してきた。
「先に頂いているわよ」
エリック母が2人に声掛けをした。
「あぁ、遅れてすまない」
エリック父はそう私達に声かけをして椅子に座り、エリックもそれに続いて椅子に座った。
「マリ、エリックのやり方は褒められたものではないが、私達の娘になってくれるのは本当に嬉しい。
エリックに不満があったら遠慮なく私達に話してくれ。セバスチャンでもサラでも、この別荘で働く誰にでもいいから。自分の内に溜め込むことだけはやめてくれ」
「そうよマリちゃん。もう貴女は私達の娘なんですもの。遠慮なくエリックの不満をぶつけてきてちょうだい」
「おじ様おば様、ご心配頂きありがとうございます」
エリック父やエリック母の心遣いがとても嬉しかった。
「……私への不満とはなんなんだ?いつでもマリを第一に考えているのに」
エリックは不貞腐れてしまったが「そもそもエリックが騙し討ちのようなことをするからだよ?」と私が言ったら「だがマリは受け止めてくれただろう?」と満面の笑みを向けられた。
うん、そうなんだけれど。なせがその自信満々の笑顔が少し憎たらしく見えた。騙し討ちしたことには変わらないのだから、もう少し謙虚になれ?
「マリ、エリックには色々話してあるから。急に別荘にきたからもう戻らなければいけないんだ」
「え?もうお戻りになるんですか?
寂しいですけど、今度は私がそちらにお伺いしますね」
「マリ、本邸にくる時は伺うではなく、帰ると言うんだ。もう私達の娘なのだから"ただいま"と帰ってくるんだぞ」
「そうよマリちゃん!もう貴女の家でもあるんだからね!いつでも帰ってきてちょうだい!」
「おじ様!おば様!
はい!次にお伺いする時は娘として帰らせてもらいます!」
こんな出自のわからない私を受け入れてくれる2人には感謝しかない。私の瞳に涙の膜がはられ、私とエリック父母の3人の間に親子となる感動の雰囲気が漂ったその時、「……早く食べて帰られては?」とエリックが空気を読まずに発言をしてきた。
エリック父が深いため息をつき、エリック母は「あらあら、まぁまぁ。私達が邪魔なようね」とエリック父の顔を見て笑った。
「マリ、私達のような親にも嫉妬するような男だ。本当に我慢だけはしないように。
エリックも、マリを縛り付けるようなことはしないように」
「私がそのような男に見えますか?」
「見えるから言っているんだ」
エリック父の言葉にエリックは黙った。
「まぁまぁ、エリックは早くマリちゃんと2人きりになりたいのよ。マリちゃん、エリックをよろしくね?
エリックも!結婚するまでは色々と我慢するのよ?」
「……わかってますよ」
色々と我慢とはなんだ、色々とは。そう思ったが聞ける雰囲気ではなく黙って朝食を口へと運んだ。うん、相変わらずに美味しい。
朝食を食べ終え、本邸に帰るエリック父母をエリックと私とセバスチャンの3人で見送るべく、外へ一緒に向かった。
エリック父がセバスチャンさんに「急の訪問にも関わらず、美味しい朝食をありがとうと伝えておいてくれ。あと、くれぐれも間違いがないように引き続き頼む」と話していた。
セバスチャンさんは「きちんと伝えましょう。旦那様のお言葉は私達のやる気に繋がりますからな。それと引き続き任されました」と右手を胸にあて一例をした。
そのやり取りを見ていたエリックは「私への牽制ですか?しかし今までと違ってこれからは婚約者としての距離になるのでね」と勝ち気に話していた。
エリック父とセバスチャンさんはそんなエリックを警戒の眼差しで見つめていた。
おそらく、私のエリックの距離感のことを言っているのだろうが、今までもゼロ距離で近かったのに婚約者の距離とは?
一抹の不安を抱えながらエリック父母を見送ったのだった。




