62_黙っていたこと
「……まずは服を着てもらってもいいかな?」
私はエリックに背を向けた。
「あぁ、すまない」
背後から布が擦れる音がする。暫くすると音がやみ、エリックに「もう大丈夫だ」と声をかけられた。私はエリックの方に顔が向くように座り直した。
「マリ、まずは私の父上に報告……は、セバスチャンから行くだろう。正式に婚約を結ぶにあたり、私の父と母の訪問があるだろう。
━━……おもに父上から私へのお叱りが主だと思うがな」
「私、貴族でもなんでもないのにエリックと結婚できるの?」
ルーパパは自称・私の父を騙っているだけで本当の親ではない。魔塔所属になってしまう関係で、正式には私の後見人ではないし。
私の心配をよそにエリックは「大丈夫だ」と私の頭を軽く撫でた。
「侯爵家の者と会ったことはないか?」
エリックのその問いに私は頭をフル回転させ、過去の出来事を思いだそうとした。
「……たしか、どこかで見たような見たことないような夫婦がこの別荘には訪れたよ」
「マリはそこのヴァシュマン侯爵の養女になっているから、身分は問題ない。
見たことあるのは貴族名鑑でもしれないな。マリの養女先の候補を絞るために、いいと思った家名にメモを挟んでいたから」
確かにそんなメモが挟まれた貴族名鑑を見た記憶はある。が、面白くはない。
「私に関係することを、私に黙って進めるのはいい気分がしないよ。
……他に私に黙っていることはない?」
「……嫌わないでくれよ?」
エリックはそう言って色々とやらかしてきた事を話してくれた。
セバスチャンさんの勉強会、エリック母との淑女教育、殿下との接触も全てエリックの奥さんになるためだったなんて……。
勉強会や淑女教育はけっこう早い段階から始まっていた。え、私はいつからエリックの思惑に乗っかってしまっていたのだろう。
「あとは?あと黙っていることはない?」
「……実は、父上がマリを学園に通わせたいらしい」
「学園?」
「マリに良からぬ感情を抱く男共を近づけさせたくなくて、私が頑なにマリの通学を拒否していたんだが、私と婚約するにあたってマリの入学は父上からの条件になると思う」
「え、今から通うの?」
学園に通いだしたら魔道具の制作などが滞ってしまうため、本当ならば拒否したい。が、それがエリックとの結婚の条件ならのむしかない。
まぁ、条件もなにも魔法契約がある限り、互いに他の人とは結婚できないのだけれども。
「いや、マリが学園に通うのは来年の1年だけ。私の最後の年だけ一緒に通うことになる」
「……1年だけ」
「同じ学年に鳴れるよう勉強を頑張ろうな、マリ」
エリックは微笑見ながら私の肩をポンと軽く叩いた。




