24_婚約者?2
ここは一応、自己紹介でもしておくか。そう思い、私は椅子から立ち上がり「マリと申します」と挨拶をした。
「まぁ、私に宣戦布告ですの!?どこの誰かも知らぬ女に、エリック様は渡しませんわっ!」
なぜ挨拶をしただけで宣戦布告になるのか。困ってしまいエリックに顔を向けた。エリックは「マリ、迷惑をかけてすまない」と、お嬢様を素通りし私の腰に手をあて「部屋に戻ろうか」と歩きだそうとした。が、お嬢様がそんなエリックの私の腰に回した腕をつかみ「どこを触っていらっしゃるの!?私の目の前で浮気ですか!!?」と騒ぎたてる。
エリックはエリックで「誰が貴様なんかと婚約関係にあるものかっ!」と声を荒げて言い返す。2人の間に挟まれた私の鼓膜は限界よ。
「エリック、私は一度部屋に戻るよ。そこのお嬢様とちゃんと話しておいで?」
私がエリックに提案という名の逃げにシフトチェンジしようとしたら、「私をこんな頭がおかしい奴と一緒に置いていくというのか」とすがられてしまい、セバスチャンさんの「エリザベス様のお迎えがいらっしゃるまで応接室で待ちましょう」との提案にのるしかなかった。
応接室に向かおうとすると、お嬢様はエリックのあいている腕に抱きつこうとしたが、エリックはお嬢様を「触るなっ!」と払いのけた。
「なぜその女には触って私はダメですの!?」
「マリは私の特別だからいいんだ」
「っまぁー!!」
エリック頼むから、誤解を与える言い方はよしてほしい。お嬢様は私を睨みつけ、私とエリックの後ろをついてくる。さらにその後ろにはセバスチャンさんが続く。
応接室につき、私はソファーに座り、エリックはその隣に座った。まだ人が座れる広さを残したエリックの隣にお嬢様は座ろうとしたが「貴様は向こうだ」とエリックにテーブルを挟んだ向かいのソファーを指差され、頬を膨らませながらも素直に従って座った。
エリックは私に向かって
「マリ、誤解させてしまってすまない。アイツは父親同士が学生時代から仲が良かったせいで、縁が出来てしまっただけのなんでもない勘違い女だ」と説明してきた。誤解もなにも。エリックに婚約者がいてもおかしくはないし、逆に、婚約者の別荘に自分が知らないうちに女が住み着いているのも嫌だよなと思っていたが、紳士のイメージがついていたエリックの物言いに少なからず驚いた。そのくらい、目の前に座っているお嬢様はクセが強いのだろうか?
「そのお父様同士が"お互いの子が異性だったら結婚させたら親戚だな"と仰っていたんですのよ」
「それは私たちが生まれる前に話していただけだろう。父上たちの思い出話を聞いただけで婚約者になった気でいるな。迷惑だ」
「…つまりはただの幼馴染み?」
思ったことが言葉に出てしまい、口をはさむ予定ではなかった私は慌てて自分の手で口を塞いだ。
お嬢様は私を睨みつけ「今、ただの幼馴染みとおっしゃりました?」と言ってきた。
エリックは「ただのではない。不本意なが正しい」と私の言葉を訂正してきた。それを聞いたお嬢様は「まー!なんてことを」と、耳に優しくない甲高い声をあげた。
「で、知らせもなく勝手にきたわけだが、誰から私が昨日街へ行ったことをきいたんだ?」
エリックが脚を組みソファーに背を預けながら聞いた。
「昨日、エリック様に会いにお屋敷に行ったんですの。そしたらエリック様の姿が見えなく、屋敷中を探し回っていたのです」
「それすらも知らせなく来たんだろ」
エリックは呆れてため息をついた。
「そうしたら夕方くらいに『街を一緒に歩いていた女性は誰か』をエリック様にたずねにギルバート様がいらっしゃって」
私は初耳の名前に「ギルバート?」と、エリックに顔を向けた。エリックは「私の従兄弟だ。私や、その喧しい女と同い年なんだ。まさかギルに見られていたとはな」と言った。どうやら向かいに座っているお嬢様はエリックと同じ年らしい。
「エリック様に問い詰めようと探しておりましたら、護衛に出ていた人たちが帰ってきたと聞こえてきまして。耳をすませると、別荘にいるエリック様が街に出るさいの護衛をしていた人たちとわかりまして」
「それは盗み聞きと言うんだ」
「私、いてもたってもいられなくて、直ぐに別荘に向かおうとしましたの。ですが、暗くなるから危ないよとお義父様に止められまして」
「私の父上をお義父様と呼ぶのはやめてくれ」
エリックの突っ込みをものともせずにお嬢様は続ける。
「仕方がなく夜が明けてから直ぐ様こちらに向かいましたの。そしたら!」
お嬢様はソファーから立ち上がり私を指差しながら甲高い声で続ける。
「朝食を一緒にとっていたということは、泊まったのでしょう!?この泥棒猫っ!」と言われたとき、「その言い方はよくないんじゃないかい?」とエリック父が現れた。




