37 グレーでも、良いオトナ -Dirty but heartfelt-
待夜家のキッチンでは、玄恵が夕食の下ごしらえを始めていた。
カウンターでは、紘が身を乗り出して玄恵に話しかけている。
「ねえ、ママ。にーちゃんもカッコいいけど、にーさまもイイよね?顔のシワみたいなの、すごく似合ってるもん。」
猫好きAの目の下には、頬にかけて薄らとシワがあった。
「紘、二人のこと気に入ったのね。今も多分、梨人と和室にいるんじゃない?誘ってみなよ、一緒に遊ぼうって。梨人に先を越されちゃうわよ〜?」
「それは大変!」
紘は玄恵のアドバイス通り、遊びに誘うために自分の部屋からトランプを持って和室に突撃した。
「頼も〜〜〜〜!」
固まって話していた男性陣は、ビクリとした。
「や、やあ紘。」
「どうしたんだよ〜?」
ぎこちない反応のふたりに、紘は口をへの字に曲げた。
「なあに?内緒話〜?」
「違うよ。ただ、驚いただけさ。」
「ホントかなぁ。」
苦笑いする梨人の前を横切り、紘はテーブルの上に箱から出したトランプを広げた。
「ねえ、皆でトランプやろうよ!!」
「お、トランプか。久しぶりだな、俺は強いぞ〜?」
「何を言ってる?マスターがトランプ強いなんて話こそ、初耳だけどね。」
「いや、弱くはない。はず。」
「梨人は?トランプ得意だったりする?」
「普通だよ、普通。」
紘が人数分のトランプを配る。
最年少のリクエストで、ババ抜きをすることになった。
「ああ、そうだ。マスターは目瞑って。あと、接触禁止。」
「うう……悲しいなあ……。」
文句を言いながら、カードを片手に蛇遣いは
目を閉じた。
記憶の力がゲームに最適なインチキ技になり得ることを、猫好きAは分かっていた。
皆が机を囲み、ゲームが始まった。
トランプは遊びとは言え、それぞれの個性が垣間見える面白い場面だった。
年下に気を遣って、わざと負けてくれる蛇遣い。
自分は一番に上がっておきながら紘の助太刀をする、大人げないと大人の微妙なラインを行く猫好きA。
普通と言いながらも、一度も勝てない最弱の梨人──。
「ねえ……コルク、何もしてないよね?」
家族でやる時はそこそこ勝っていたのに──。
梨人は、蛇遣いの不正を疑い始めた。
「してないって。」
「できないよ、この状態じゃ。」
能力者って、ゲームにまで強いのか──?
肩を落とす梨人の頭を、猫好きAがクシャクシャと撫でた。
「実践はね、練習した数だけ成果が現れるものさ。梨人が上達したいなら、これからいくらでも付き合うよ。」
猫好きAの大きな瞳に映った梨人が笑う。
「じゃあ、もう一戦。」
「ハハッ、負けず嫌い。」
強くなるためと共に道を歩いてくれる存在が、どれほど心強いものか──。
たかが、カードゲームひとつだとしても。
梨人は徐々に、猫好きAのニンゲン性に惹かれていた。




