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二人の転生者

この小説は『悪役令嬢に転生したら正体がまさかの殺し屋でした』と同じ世界観のお話です。

 席に着くなり、レリアはキラキラした目で俺を見た。


「お互い転生者なら敬語はいらないわよね? 貴方、前世は日本人? この世界がゲームの世界だって知ってるんでしょう?」


 その目を見て確信する。

 コイツ、二つのゲームのどちらかの熱烈なファンだ。

 語りたくて仕方ない、という圧を感じる。


「ああ、前世の俺はこの《ローズオブエンペラー》のゲームの制作を手掛けていたんだが……」

「えっ! 制作者だったのっ?」

「ああ……だからこそ、キャラクターの性格が設定と変わりすぎてて愕然としたよ」

「だよねぇ。こっちのキャラの性格も、制作者が聞いたら卒倒しちゃうくらい変更されてるよ? 聞く?」

「……今はやめておく」


 ただでさえ思考が追いつかなくなってきているので、まずは情報を整理したい。


 俺はまず彼女の話を聞くことにした。


 彼女曰く、悪役令嬢の家は殺し屋という裏の顔があり、自分の殺し屋として一人前になるための最初の依頼がジーク王子暗殺だったそうだが、本来ヒロインが王子と出会うはずのイベントでどういう訳か自分がジーク王子に気に入られ、かくかくしかじか聖女として覚醒し、王妃を呪っていたベルフェール公爵令嬢を逮捕するに至り、更にそれを目論んだ黒幕第二王妃を捕えた後、平穏な暮らしを求めて家出したら、よくわからんが皆ついてきてしまった、ということらしい。


 しかも、その後アヴェンタドール王国の南西にある森を歩いていた時にジークとルイスが喧嘩を始めて、魔術を使った戦闘になったのを、近くに住む竜人族が襲撃と勘違いして混沌竜カオスドラゴンを呼んでしまった、と、とんでもないことまで教えてくれた。

 すぐに誤解は解けて呼び寄せは中止したものの、混沌竜カオスドラゴンは引き返さず、アヴェンタドールに向かったらしい。


 どうやら先日のアヴェンタドールに混沌竜カオスドラゴンが襲来した原因はそれだったようだ。


「……そんなことが……」


 思いもよらぬところで謎が解け、驚きが隠せない。


 まぁ、そのおかげで、アヴェンタドールをあっさり侵略できたのだが。


「責任を感じて、混沌竜カオスドラゴンを退治しようと思ったんだけど、あの国って表向きは他国からの入国者を受け入れないから、魔術でアヴェンタドール人に変装して入国しようかって話してたんだけど……」

「ちょっと待て、表向きはってどういうことだ?」


 妙に引っ掛かる物言いに聞き返すと、レリアはきょとんと目を瞬いた。


「え? 知らないの? てっきりもう調べはついてるんだと思ってたけど……ウェスタニアのベルフェール公爵が、帝国から攫ってきた女の子をアヴェンタドールに高く売りつけてたのよ。旅に出た後、国王からジーク宛にその連絡があって、たまたま進もうとしてた方角的に行きやすかったから、調査のためにアヴェンタドールに向かってたの」

「……何だって?」


 おいおい、これは重要どころじゃない証言だぞ。


「そしたらさっき話したようにジークとルイスの喧嘩が原因で竜人族が混沌竜カオスドラゴンを呼び寄せちゃった訳なんだけど、私たちがアヴェンタドールに入る直前で、誰かが文字通り飛んできて、混沌竜カオスドラゴンをやっつけちゃったの。誰だか知らないけどすっごい強い魔術師だったな」

「ああ、それはうちの筆頭魔術師だ」

「え? バラエンの方はあんまりプレイしてないから詳しくないけど、帝国の筆頭魔術師って引退してから後継者がいないんじゃなかった?」


 バラエンとは、《ローズオブエンペラー》の略称だ。

 ローズは薔薇という意味がのため、ファンからはそう呼ばれていた。同じく姉妹ゲーム《ローズオブキング》はバラキンと略されていた。


 ゲーム名が何故『皇帝の薔薇』『王様の薔薇』なのかというと、前者は皇帝の花嫁を薔薇に例えてのこと、後者は王子とハッピーエンドを迎えるとエンディングで王子が国王に即位する際、『王の薔薇』と呼ばれる薔薇を咲かせられるかどうかというイベントが発生するから、という理由になっている。


 まぁ、実は『語呂がいいから』という理由でこの名にした制作サイドのこじつけなんだが。


「こっちも色々変更があってな。何故か隠しキャラの女盗賊フィアが筆頭魔術師に抜擢され、その相棒ネオが皇帝の花嫁に選ばれたんだ」

「へぇー! さっき皇帝の後ろにいた美女二人だよね? その二人は設定と性格変わってないの?」

「ああ、フィアとネオはほとんど変わってないな。ネオが竜人族だった、ってことくらいか」

「そんな重要な設定が変わってるなんてこともあるのね。他には何か変更あった?」


 俺たちは小一時間、お互いが過ごしてきた中で見つけた、ゲームのシナリオとの相違点を話し合った。


「ぶっ! あはは! まさか、踊り子が男だったとか! ウケるー!」


 ゲラゲラ笑うレリア。侯爵令嬢としてはあり得ない態度だ。

 だが、彼女の本来の姿はこちらなのだろう。


「笑いごとじゃねぇよ。俺の推しキャラだったのに……」

「ああ、推しキャラが残念キャラに変貌を遂げた悲しみは心が痛いくらいわかるわ……」


 すん、とした顔になるレリア。

 生前の彼女の推しキャラだったディアスは、レリアの実兄だが、まさかのシスコンでロリコンでヤンデレだったらしい。


 うん、なんていうか、うん、ご愁傷様。


 と、しょっぱい気持ちになったところで、召使いが食事の支度が整ったと呼びにきた。

 レリアの連れたちは既に食堂へ通されているらしい。


「あー、楽しかった。帝国の人なんて面倒ごとの予感しかしなかったから絶対関わりたくなかったんだけど、まさか転生仲間と出会えるなんてね。召喚に応じて良かったわ」

「それはこっちのセリフだ。まさか日本人が悪役令嬢に転生してたなんてな」

「また会いに来て良い? 隠しごとせず素で話せるのってストレスフリーでリフレッシュできるし」

「ああ、それは俺も同感だ。大陸各地を見て回るなら、異変があった時に知らせてくれれば助かるし、ギブアンドテイクってことで」


 そんな会話をしつつ、俺とレリアは食堂へ向かう。


 この会食で、俺とレリアの仲を誤解したジークとルイスに決闘を挑まれたり、何故かそれにフィアが嬉々として乱入したりと、また一悶着あるのだが、この時の俺は知る由もなかった。


 皇帝の花嫁選びは一旦終わったが、賢者クロードの受難は、まだまだ続く。

 しかしそれは、また別の話だ。

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