四日目 捜査開始!
「ひっ........」
こはるはその無様な画面を見て声を上げた。実里も顔は平気そうだが、額から汗がにじみ出ているのがわかった。加奈は口をあんぐりと開けている。
海真は何度もデータを元に戻そうとするが、それも無駄だった。海真はこちらに振り向いて、諦めた顔で言った。
「なあ、こはる、言ったろ。俺が出来ることは確認するところまでだ。もういいだろ。あとは警察に連絡しろ」
海真は自分のパソコンとスマホを持って、部屋を出ようと、ドアノブに手をかけた。
こはるはそれを黙って見ていたが、遂に我慢ができなくなって、海真の腕を掴んだ。
「まだ.....まだだよ。まだ終わってない。犯人を見つけなきゃ。きっとアクイムの中の誰かだよ。加奈ちゃんのデータを取り戻さなきゃ」
こはるはもっと強く海真の腕を握った。
「い......っ」
海真はこはるの手を振り払った。そしてこはるを睨んだ。
「犯人見つけてどうすんだよ。俺達じゃ力不足だ。警察の手を借りた方がいい。大体、子供がこんなのに干渉したらアウトだろ」
こはるは真剣な目で海真を見た。
「力不足じゃないよ。ここには優秀なプログラマーもいるし、ゲーマーだっている」
こはるはチラッと実里を見て、また海真に視線を戻した。
「そして.......」
こはるは自分を指差した。
「名探偵がいる」
こはるはニッと笑った。
「は?」海真はあざ笑った。「名探偵?」
こはるはくるっと体の向きを変えると、部屋の中をゆっくり一周し始めた。
「名探偵とは、様々な難事件を解決する上で、必要な存在だよね。そのほとんどが、有名な殺人事件。複雑なトリックをも解いて、犯人を暴く。かっこいいよね。でも、私はそれだけに執着しなくてもいいと思ってる」
こはるはピンっと人差し指を立てた。
「こういう顔がわからない犯人を相手にしてもいいのではと!」
こはるは誇らしそうに胸を反らした。
「遂に頭がおかしくなったか?」
ドアに背を預けている海真が鼻で笑う。
こはるは海真に近づき、海真の顔を指差した。
「とゆーことで、アベ君、君には私の助手を頼みたいんだ」
「俺が?」
海真は顔をしかめた。「冗談じゃない」
「相棒?馬鹿馬鹿しい。結局お前は一人じゃ何もできないんだな。俺達みたいな能力が無いんだから」
海真はそう言って鼻で笑ったが、こはるの期待の目に、押されそうになる。
「ねっ?ねっ?いいでしょ?アベ君のいう通り、私は一人じゃ何もできないんだから、力を貸してよ!友達じゃんか!」
こはるはニッと笑う。海真はまたも、その笑顔に恐怖を覚える。
海真は頭をポリポリと掻いて、決心したように、こはると向き合った。
「.......二度は無いぞ」
こはるはパアッと顔を輝かせて、腕を上げて喜んだ。
「やっったああ!!わーいわーい!!」
実里はそれをニヤニヤしながら見つめていた。加奈は海真とこはるを見比べて、混乱した顔を見せていた。
「ええっと、何?解決したの?してないの?」
こはるはくるっと加奈に向き直った。
「仲間割れは解決した!でもねえ加奈さん。事件は解決しとらんのですよお!」
愉快そうに言うこはるに、加奈はため息をついたのだった。
* * *
時雨「こんにちは。あなたが"ルーラー"さんですね」
ルーラー「?はい。もしかして、MIMI の知り合いですか?」
時雨「その通りです。実は、アクイムで起きているある事件について調べている
のですが、ご協力お願いできますか?」
ルーラー「構いません。事件というと、例のアレですか」
時雨「アレ?」
ルーラー「アクイムで起こる不具合などです。どうか気にせず続けて下さい」
時雨「MIMI さんから聞いたのですが、あなたは以前、ハッキングされたご経験
があるそうですね」
ルーラー「ええ。本当ですよ」
時雨「その時のことを詳しく教えて頂けますか?」
ルーラー「あのときは、急にハッキングされたわけではなく、少しずつ異変が起
きていたんです」
時雨「異変?」
ルーラー「ええ。なぜか、他のプレイヤーのプレイヤー状況が現れたんです。怖
くなって、機械いじりが得意な父に、見てもらったんです。そ
したら、見事にハッキングされてましたね」
時雨「なるほど」
このルーラーという人も、やはりレモンと同じ現象が起きていたということか。
チラリと実里に目をやると、軽快な音と共に、ニコニコしながらキーボードをタップしていた。加奈のパソコンの設定を、海真と共に頑張ってくれているみたいだ。




