【03-06】ナオト君の事情
オーガの群れをオーガキングごと殲滅するのに、1時間もかからなかった私たち。
ガチ装備と私たちは呼称する、創造神様がくれた戦闘服(私・ヒナタちゃん・ユウト君・ナオト君の4人)と、ナツキ君はチャイナ服、レイナさんは修道服とそれぞれの専用武器。これらの確認をためガチ装備で闘ったんだけど、さすがに数百匹いるオーガを1時間もかからず殲滅してしまうとは・・・・・。
そして私たちが持っているガチ装備は、創造神様のはちゃけ具合が具現化したといっていいほど、ありえない強さと性能を持っている。どれだけ激しく動いても、型崩れなど一切なく、また蒔き散らかされる血潮が付着しても、一切その影響を受けないどころか、何かで切り裂かれるといった事も起らない。
閑話休題。
オーガの解体作業を行いながら、雑談タイムに突入する私たち。ちなみに解体程度ガチ装備でなくてもできるので、現在はノーマル装備であるそれぞれの学校の制服だったセーラー服に着替えている。なお、レイナさんだけは、聖女様になった際に着ていた・・・・というか、その際普段着用に神殿からもらった修道服を常時身に着けていたりする。
どうもレイナさん曰く、聖女様になった際に来ていた修道服の方が学校指定の制服よりもなんだか心が落ち着くらしい。
「そういやあさ。レイナさんが聖女様になった時にあたしたちも巻き込まれたけどさ。あの時も大変だったけど、ナオト君があたしたちと合流した時も、ちょっと大変だったよね。」
雑談のネタにしたのかどうか知らないが、ヒナタちゃんがナオト君が合流した時の話をふってくる。
そういやそうだったなあ~~~~と、皆で思い出しながら昔話(そんなに昔ではないけどね)に華を咲かせる私たちだった。
「僕だって、最初現実に戻る時はびくついたね」
そんな語り口から始まったナオト君の独白。
説明文・・・・・とかうか、ゲームの取説には、『男女の差なく女性モノなら、今着用している服装で現実世界に戻る事ができる』となっている。こう記されてはいるが、やっぱり最初の1回目は「本当だろうか」という疑問があったそうだ。
いくら神様仕様のゲームだと言っても、そこは固定観念が聳え立っているからね。
また、ナツキ君のように、常時女装している男の娘でもなく、ユウト君のように学校以外の時間は女装する隠れ男の娘でもなく、ナオト君は普通の男という事がネックになってたらしい。
つまり、いくら全裸生活から卒業できるといっても、やっぱり女のモノを常時着用するには抵抗があったんだと。なんせ、上物のセーラー服はもちろんの事、その下に着用している(半袖)体操服とブルマ、さらに下着に至るまで、すべて女物であるからね。ちなみに下着以外の装備は、元鏑木学園高等学校が指定していたセーラー服と、半袖体操服・ブルマのセットである。
今ではすっかり慣れてしまって、抵抗なく着用できているんだから、・・・・慣れって恐ろしいね。
「で、現実世界の無人島に戻った時ちゃんとゲームの中と同じセーラー服着ていた時はうれしかったよ。それも、ポケットがアイテム袋になっているのもそのままだったし、ゲームの中に入っていたモノもそのまま現実に出す事が出来たんだからね。
ただ、その当時は、下着まで女の子しなくても・・・・・・とは考えていたけどね。」
「それはよかったね。ゲームの中で、ポケットにいろいろと詰め込んでいたからね、・・・・ナオト君は。ボクとユウト君は男の娘だから、上から下まで女の子仕様は『ありがとうございます。これはご褒美でしょうか?』てな状態だけど、女装趣味のなかったナオト君にとっては、最初は地獄だっただろうね。」
ナオト君の独白みたいな語りに、ナツキ君が相槌をする。なお、ユウト君とナツキ君は、この世界に来てから数か月間ずっと女性モノを着用し続けているため、現在男の子の象徴はすでに無くなり、女の子の象徴へと変化してきている。胸の大きさなんか、すでにCカップの中間くらいまで成長しているのだよ、・・・・・2人とも。
実はナオト君も、その変化が表れているらしいとは、本人から聞き出した情報の中に入っていた。
「でも、ゲーム世界内においての始まりの町・リンドバーグが、僕の暮らしていた島からそう離れてなくて助かったよ。とはいっても、アリサちゃんたちが先にリンドバーグに到着して、その後星を視る事によって方角と現在位置を割り出す方法を教えてくれなかったら、今頃まだ無人島生活だったけどな。」
ナオト君が私たちと合流できたのは、ひとえに数か月間暮らしている無人島と、ここリンドバーグとの位置関係を把握できたことが大きい。ゲームの中で(私が)方位磁石を作り、地球と全く異なる星々の配置から、勝手に星座を作って夜空に配置していったのだ。
その後この世界にも、占星術というモノが存在していおり、その結果いろいろな星座も作られている事を知ったのだが、それはレイナさんが聖女様になった後に知った事である。
この時作った星座や、太陽の運行位置を基に、まずはナオト君のいる無人島が北半球にあるのか南半球にあるのかを突き止める事になった。もちろん、ここリンドバーグにおいてもだ。
その結果、両方とも北半球にある事が判明。緯度的には、リンドバーグの方が北極側に位置し、無人島の方はほぼ赤道側だという事が判明。だいたい、太陽の運行位置や北極星と勝手に決めた星の角度から計算して、リンドバーグが北緯30度付近、無人島は北緯25度付近という計算結果を得る。この星の大きさは知らないが、地球と同程度かそれよりも1割程度大きいと仮定すれば、1000~2000㎞程度離れている事になる。
で、次は経度である。
実を言うと、経度の計測は結構難しいんだ。地球でも、正確に経度が図れるようになったのは、大航海時代以降の話だしね。
実を言えば、リンドバーグ自体の緯度経度は核に判明している。その理由は、私たちの持っているスマホに入っているアプリ、『自動地図作成』を利用すればいいだけの話である。なおこのアプリは、私たちが実際訪れた事のある場所と、そこから見た事のある景色の情報が地図になるので、ナオト君のいる無人島の場所は解らない。
つまり、今回については、あまり役に立たないアプリでもある。
なお、前回購入したドローンを飛ばしていけばいいんじゃないかという意見もあったが、あれはあれでいろいろと使い勝手が悪いのだ。
ドローンの操縦自体は、スマホにインストールしたアプリで行うわけだが、送受信できる距離が最も条件がいい状態で最大で500㎞ほど。条件が悪ければ、50㎞にも届かないのだ。
ちなみに、異世界通販サイト:ISEZONでは、人工衛星すら購入可能だが、購入価格が一機あたり、今の私たちの総資産額の100倍くらいなので手を出せない。人工衛星自体は、設計図も購入可能(設計図自体は分厚い百科事典ほどのサイズはあり、購入価格は一般市民の5年分くらいの生活費くらい)だけど、モノを作った後に宇宙区間まで飛ばさないといけないのが難点である。ちなみに、人工精製自体を購入した場合は、すでに宇宙空間(それも静止軌道上)に設置される形になる。
まあ・・・・・、それはいいとして、だ。
ある程度の経度情報を特定しないといけないので、いろいろとやり方を考えてみた。
ちょうどゲーム内の時間と現実世界とがリンクしているので、これをそのまま利用する。その上で、絵ぞれの地点の真南を正確に覚えておき、ちょうど正午になった時間に現実に戻ってくる。
これにより、経度が大きく狂っていれば、どちらかの太陽の位置が中点を差しておらず、東西に振れているはずである。この振れ幅を計測すれば、だいたいの位置関係が判明するという手法である。
その結果、無人島の方がリンドバーグに対して、15度ほど東側にある事が判明。つまり、約1時間の時差がある事になる。
ちなみに、私たち5人が持っているスマホのアプリ『自動地図作成』では、緯度の起点は赤道になっているが、経度の起点(つまり子午線)は、最初にいたあの森の家を建てた地点が基準となっている。
そして、偶然なのかどうかは知らないが、この子午線の位置がちょどリンドバーグにある神殿の鐘楼と重なっているのだ。
最初にこの事実を発見した時は、5人全員で驚いたモノだ。普段はあまり使わない情報だけど、転移魔法で移動したり、船を利用して大洋を渡ったりする際には、緯度経度の情報は必然的に利用しないといけなくなる。
現在位置を割り出すためには、緯度経度の情報は不可欠であり、また詳細な地図を作る際のも必要な情報になってくる。この世界において陸地の移動はともかく、どのようにして大洋を渡っているのか知らないが、きっと超原始的な方法を取っているんだと思う。
将来的に詳細な地図と共に売り出す際(そもそも地図は軍事情報なので、おいそれと売買できるとは限らないが)、子午線として指定される場所は、十中八九私たちが創った地図に書かれている子午線になるだろう。こういう情報は、最初に提供した者が決めた場所が、(その世界においての)世界標準店となるわけだからね。
ちなみに子午線の反対側にある日付変更線は、地球のように大洋のど真ん中を通っているのかどうかは、今のところ分からない。この星の裏側まで行った事無いからね、・・・・・・私たち。そもそも、そこまで到達するのかどうかも、怪しい所なので。
閑話休題。
これを、ナオト君に、毎日同じ時間に計測してもらいながら、北へ北へと進んでもらったのだ。
なおナオト君は、海の無数にあった無人島を渡っていく事を考えて、私やヒナタちゃんよりの身体能力を(ゲーム内で)身につけてもらった。
その結果、水の上を問題なく走り、軽く50mくらいジャンプできる。たぶん競争をしたら、ヒナタちゃんといい勝負をすると思っている。
こうしてなんとか、リンドバーグのある大陸に上陸し、採集計測を行って、海岸沿いにリンドバーグまで来てもらったわけだ。
そして、私たちと合流する時は、すでにレイナさんは聖女様になっており、町で一番の有名人となっていたのだった。
閑話休題。
オークの集団を解体した後、再び周囲を探索する私たち。
オークの集団がいた場所から3時間ほど進むと、何やら不気味な魔力を放出している洞窟を発見した。
「これ・・・・・、何だと思う?」
不気味な洞窟の中を覗きながら、ヒナタちゃんがこう質問する。
「こういった異世界的な場所で考えるのなら、『ダンジョンの入り口』と考えるのが一番しっくりとくる答えだね。どうも、洞窟の入り口から10mくらい入った場所から先が、異界化している感じだし。」
私は、自身の持っている能力を使って調べた結果を参考に、この洞窟についての推測を話していく。ヒナタちゃんも私も、しーふとしての能力は持っているが、特化している方向が全く違っている。私は、こういった調べもの関係に特化しているため、こういった調査には適した人材となっている。ヒナタちゃんは、どちらかと言えば索敵能力に特化しているからね。
「それじゃあ、ダンジョンと仮定して行動していこうか。まずは、このダンジョンに入るのか、それとも入らないのかを決めよう。」
私の推測結果から、ダンジョン攻略をするのかどうかを問うてきたユウト君。いや、今はユウトちゃんだね。道のダンジョンだから慎重に生きたいところだけど、異世界に来たら入ってみたい場所ベスト10に必ずランクインする場所でもある。
皆(みなと言っても6人しかいないわけだが)で協議した結果、やはり全員がダンジョン攻略をする事に否定的な意見は出なかった。こういった場合、慎重意見を出す事が多いレイナさんですら、ダンジョン攻略には積極的である。
「それじゃあまずは、装備品と消耗品の確認をするね。装備はとりあえず、『ノーマル装備』でいこう。どんなダンジョン構造をしているのかは知らないけど、初めの方はそんなに大変じゃないはずだからね。ノーマル装備できつくなってきたら、ガチ装備に変更という事で。」
まずは、装備品関係を確認。初めからガチ装備でフルスロットルしてもいいのだが、これの何かの訓練になるだろうとこう提案する。その次は消耗品関連だ。
レイナさんがいるため、回復手段に事欠く事はないと思うが、それでもお薬での回復手段を全員持っておく事にしている私たち。レイナさんに何かあった時にそういった回復手段がないと詰みになってしまうからね。現実世界で詰みの状態になったら、それはイコール死亡フラグが建つ事になる。
それだけは避けないといけない。
次は、食料品関係と寝床関連だ。
ダンジョン内に安全地帯があるかどうかも定かではないが、ないと仮定して動いておいた方がいい。あったらあったで、ラッキー程度にしておいた方がいいだろう。
そう仮定するならば、自力で安全地帯を構築するほか道はない。いろいろと準備をしてきているので、何とかできると思っているが、ダンジョン内でそれが可能かどうかはやってみないと解らない。
ちなみに、食料品に関しては、私が持っている【料理魔法〔A〕】というスキルが役に立るだろう。このスキルは、私が飲み食いした事のある食べ物ならば、どんなモノでも取り出す事ができるからね。
つまり、ダンジョン内で火を熾さなくても、暖かい食べ物をでも何処でも取り出す事ができるのだ。
後は、時間を計る事かな?
ダンジョン内の時間経過がどうなっているのかは知らないが、現実世界での時間経過を参考にしておいた方がいい。そのため、ダンジョンへの突入時刻を、スマホの時計に合わせて、明日の午前6時にする事にした。
ちなみに現在は夕方近くなので、明日の朝に突入する事になっているわけだ。




