【02-05】早速レベル上げを行う所存ですが、何か?
町へと入った私たち一行は、何よりも先に宿屋を確保するために通りを歩く。通り沿いの店に何が売っているのかは気になるが、今は何よりも先に寝床を確保する方が先決であるとの判断だ。もちろんすでに、(現実世界において)ニートブルという町で活動をしている面々からのありがたい忠告に従ったまでだ。
どうも一番最初の日に、宿屋の確保を忘れて野宿をする羽目になったらしい。
ログアウトをすれば、現実世界へと帰る事は出来るが、再びログインする際に、ログアウトした場所になるので、なるべくなら宿屋で行った方がいいとの判断もある。
そういったわけで、門の近くから順番に、宿屋に突撃していく私たち。何とか5件目に宿屋に、全員が泊まる事ができて一安心する。
なお部屋が取れた宿は、最も最低限のセキュリティーの身が完備された「自炊推奨」と壁にでかでかと書かれた宿だった。つまり、寝る場所のみの提供で、食事は外で食ってくるか、厨房を貸し出すので自炊しろという宿である。
なお、ミノリさん曰く、現実世界でもこの形式の宿が最も多く、食事の付く宿はおカネが高いらしい。まあ、おカネの節約は絶対必要(現在の手持ちは銀貨100枚)なので、別にこの形式でも構わないが・・・・。
そしてなぜ自炊推奨なのかといえば、宿屋の料金が「1日いくら」ではなく、「1回いくら」なのだ。つまり、ログアウトしている場合は、何日泊まっていても大丈夫だという事になる。そうなると、食事があると、その分無駄になるからね。
本日の寝床を確保した私たちは、おカネを稼ぐために冒険者ギルドへと向かう。私たち12人は冒険者の資格があるので、冒険者として活躍しないとおカネを手に入れる事ができない。いや、いろいろな事をやっていけば、自然に手に入るかもしれないが、手っ取り早く稼ぐには、冒険者ギルドで依頼を受けた方がいいのだ。
ギルドの中に入り、まずはどんな依頼があるのかを確認する。ちなみに全員がGランクなので、Gランクもしくは1つ上のFランクの依頼を受けれる仕組みになっている。しかし、ランクアップを狙うのならば、Fランクの依頼を10回連続で成功させないといけない。
ちなみにGランクの依頼は、ゴミ拾いや草むしりといった、町の中だけで完結する依頼となる。そしてFランクになると、薬草採取とか、果物採取といった、町を起点にして半日程度で往復できる距離で行う依頼となる。なお、自分のランクと同じランクの依頼を何度受けて成功しようとも、ランクアップは出来ない仕組みになっている。
「今日はもう、昼を回っているからなあ。外の依頼は明日以降に受けるとして、今日のところは街中の依頼にしておこうか。」
「そうだね。Fランクの依頼を受けるには、時間が遅い。今日のところは、街中で済むGランクの依頼を受けておこう。」
そういう事になり、全員が1枚ずつ得意そうな分野で依頼を選び、受付に提出。依頼の受諾を完了させる。
「それじゃあ、また夕方に、ギルドで会おう。今受けた依頼が終わって時間があれば、Gランクの依頼ならもう1つ2つ受けておいてもいいぞ。」
一応冒険者の先輩?でもある、ダイゴ君たちの意見に従い行動を起こす私たち。
ちなみに、私とミノリさんが受けた依頼は、ギルドの食堂の厨房担当・・・・つまり、お食事作りで、ヒナタちゃん、トモミさん、ユウト君、ナツキ君は、ギルドのホール担当の依頼を受けた。レイナさんとミサさんは、教会の依頼を受けており、もうこの場にはいない。あとの、ナオト君、ダイゴ君、サキョウ君は、町のゴミ拾いの依頼を受けて、先ほどギルドから出ていった。
他の面々が受けた依頼内容はなんとなく理解できるが、何故私たちが受けた『ギルド直営食堂の厨房及びホール担当の募集』という依頼があったのかといえば、今日の朝、いきなり「もうやっていけません。やめさせていただきます」という書置きとともに、厨房担当とホール担当が消えてしまったらしい。
これは・・・・あれだね。
現実世界ではこんな事は起こっていないだろうが、ゲーム世界においては、たぶんこの厨房担当とホール担当の全員が間引き対象になったんだね。急にいなくなると現実と齟齬が出てしまうので、書置きをしたうえでに仕事を辞めた扱いになっているんだね。
まあいいや。
厨房の食材は自由に使ってもいいとの事なので、早速制服であるメイド服(何故か厨房担当もホール担当も制服はメイド服だった)に着替えて食材チェックです。なおホール担当は、メイド服に着替えた後、食堂内の清掃をして、何故知らないけど、そのままギルド中の清掃活動を始めてしまっている。トモミさんはともかく、ヒナタちゃん、ユウト君、ナツキ君の3人は、掃除は毎日行っており、それなりの腕前に成長してしまっているからね。汚い職場は、なんだか気になってしまうんだろうね。
ちなみに、私とミノリさんも、厨房の掃除をしながら、どんな器具があるのかのチェックを、同時進行で行っていたりする。
夕方。
ギルド内は、午前中とは全く異なった様相をしていた。
午後、私達が依頼を受けた際は、ところどころにカビがはえて煤汚れていたのだが、夕刻になった現在。壁・床・天井含め、ピカピカに磨かれた、まるで新築の建物になったかのような様相に激変していた。当然、カウンターの奥、ギルド職員がいる空間にまでは掃除していないので、カウンターを境にまるで別空間が広がっているのだ。
そんな別空間になったギルドに、ガサツな冒険者たちが仕事を終えて入ってくる。ギルド内に一歩足を踏み入れた瞬間、その場で足を止めて「ここは何処だ?俺たち、建物間違っていないよな?」といった感じで、何度も出入り口を往ったり来たりする不思議な光景が繰り広げられる。
依頼の達成報告を受け、報酬を貰った冒険者たちは、(半分近くの冒険者は)そのまま食堂へとなだれ込んでくる。そして、席を確保すれば開口一番。
「おい姉ちゃん。エールを6人前と、とりあえずつまめるものをくれ。その後は、腹に溜まる食事を6人前だ。」
「かしこまりました~~~~。アリサちゃん、エール6つとつまみ6つね。その後、焼き定の特盛6つ。」
「了解。エールはそこに冷えている奴があるから、勝手に汲んで持っていって。つまみはさっき作ったタコ足の塩辛があるから。」
厨房とホールとの間で、そんな言葉が次々と行きかい、大量の注文が通されていく。
「はい、エールとつまみお待ち!食事の方は10分くらい待ってね。」
「おう!威勢がいいな!姉ちゃんたち!」
「お触りは、ダメだよ!お・に・い・さ・ん!」
お尻を触ってこようとした冒険者の一人の手をパチンと叩くヒナタちゃん。完全に食堂は、この6人の手中の中にあるといっても差し支えない。
「あっ!ダイゴ君たち、お帰りなさい。ちょっと席が空くまで待っててね。」
そんな大盛況な食堂に、外回りをしていたレイナさん、ナオト君、ダイゴ君、ミサさん、サキョウ君が顔を見せる。席が埋まっている事をさっと確認したトモミさんが、席が空くまで待つように伝えた。
「はい、焼き定の特盛6つ、お待ち同様。ここまでの料金は・・・・・、6人で銀貨60枚ね。毎度あり。」
素早く計算をしたヒナタちゃんは、一番最初にオーダーを通した客から代金を徴収し、メイド服のポケットにねじ込んだ。ちなみに焼き定とは、焼肉定食の略である。オーダーをホールから厨房へと通す際は、このように略して伝える事になっている。なお、焼肉定食に使われている肉は、どの肉かは知らない。大量に入荷していた肉を消化しているだけで、試食したところ豚肉みたいな味だったので、本日のメインとなっているだけだ。
こうして、閉店時刻になるまで、ギルドの食堂は満員御礼となり、ここ最近では一番多い売り上げを記録したそうだ。その後私達6人は、食堂周りのかたずけを終わらせて報酬を貰い、宿屋に帰還し、ログアウトをして現実世界に還ったのだった。
なお、現実世界では、まだまだお昼を少し回った時間だった。つまり、ゲーム世界の時間の流れは、現実世界の半日で1日となるみたいだね。1日の流れている時間は同じなので、単純に時間加速しているんだろうね。ちなみに、ゲーム世界での飲食は、現実世界とは関係のない事が分かったし、生理現象も普通に起こる事も理解できている。だって、度々ログアウトをしておしっこやらをしに戻っていたんだから。
あとこれならば、午前中はゲーム世界でレベル上げを行い、午後になったら現実世界で体の確認作業をする事ができる。
なお、ゲーム世界で取得した神様の神像や、セーラー服などは、現実世界にしっかりと持ってくる事ができました。これはナオト君も同様で、この世界にて初めてまともな服を着用できたことを喜んでいた。なお、女装については、すでに吹っ切れており、「もうこのまま服装がセーラー服でも別にいいかな」っと思っているらしい。
私からは、『男の娘』というスキルを取得すれば、「心も体も時間経過で女の子になれるよ」っと囁いてあげると、この暇な時間を利用して取得すると意気込んでいた。
実は、このスキルの取得は案外簡単なのだ。連続して10日間ほど下着も含めて女装していれば、勝手に取得するのだから。
あと、マイホームのリビングの片隅に、神像を祀るスペースを創りました。毎日朝と夕方に、皆でお祈りをしています。だってね。こんなに溺愛してくれている神様なので、その感謝の気持ちを込めて毎日お祈りを欠かしてはいけないと思うのですよ。
神様たちになんで溺愛してもらっているのか、私たち5人とナオト君は、理解できていないのだけど・・・・。まあ、いつかは神様と何らかの形でお話し合いができたら、その時の出も聞いてみようと思っている。
(現実世界で)翌日。
今日はミノリさんたちは、現実世界で用事があるとかで、ゲームにはログインしてこない。しかし、雪深い山奥にいて、現実世界では身動きが取れない私達や、無人島ライフを満喫しているナオト君は、しばらくの間引き籠りの暇人様である。なので毎日、午前中はゲームで遊びたいと思います。午後は、昨日も言ったとおり、現実世界での体の確認や、マイホームの掃除やらを行うので、ゲームで遊ぶ時間はありません。
しかし、暇人である私たちには関係のない事ですね。
なので、堂々と、レベル上げを行っていたい所存です。
さて、ゲーム世界にログインした後、今日は何をしようかと依頼表を物色する私たち。
今日の予定は、町の外に出ての魔物討伐が主体なので、それをメインに、同じ方向に生えている薬草やら最終物やらを纏めて受付のお姉ちゃんに提出。少し恨みがましい視線を受けたが、『私たちには関係ありません』という姿勢をとって、さっさと町の外に出ます。
今日のところは、初めてこの世界に来た際にいた、あの大木が生えている丘周辺で狩りをしようと思っています。昨日の段階では、何もいなかったあの丘周辺ですが、どうもあそこから1時間ほど入った場所に行けば、オオカミやらゴブリンやらがいっぱいいるらしい。そのため今日は、そいつらとの戦闘を行って、戦闘経験を一杯積もうと思っています。
ちなみに、転移スキルの習熟を兼ねて、全員であの丘の大木まで転移して、移動時間を大幅にカット。ちなみにナオト君も、転移スキルは持っていた模様。今は(現実では)無人島から脱出できないくらいの転移距離みたいだが、ここで一般転移をしてレベルアップを計れば、無人とからの脱出を自力でできるようになるだろう。まあ、それは私達にも言えている事で、私達の場合はあの森の中から、何処かの人里への転移を目標にするんだけどね。
そうやって私たち5人とナオト君は、現実世界で暇なのをいい事にゲームにどっぷりとはまり、気が付いた時には世界最強クラスの実力を手に入れていたらしい。
ついでに言えば、ゲーム世界内では、冒険者ランクがいつの間にかBランクまで上がっており、始まりの町・リンドバーグがある国家・プルトピア王国を取り囲んでいる大小合わせて国家12カ国をすべて制覇。気が付いたら、このプルトピア王国が存在している大陸の約半分の場所に(現実世界においても)転移可能になっていた。
そして雪解けの春を迎え、私達は4ヶ月ほどお世話になったあの森の奥地を旅立つ事になる。ちなみに、半分の土地(実際は町や村だが)に転移可能だけど、それでは旅の(異世界テンプレ的な)醍醐味がなくなるという身勝手な理由で、歩いて移動する事になっている。ついでに今私たちがいるこの森の中って、いろいろな貴重な資源がたっぷりと眠っているので、そのあたりもすべて一通り回収していきたいとの思惑もあるんですよ。
・・・・・・・・これでもね。
さあて、そんな感じで、雪が解けて地面が見える森の中を、ピクニック気分で歩き出した私達であった。




