Ⅳ
緊急事態の為、数週間天界での対応に追われていた片翼のミカエルは久しぶりにウィルの元へ訪れた。
ウィル達は、ホールでのコンサートを皮切りに、いろんな都市へ遠征し、いくつものステージをこなしていた。
今は移動の合間でオフだ。ラルフやケイン、年長のリーダーのミロやその他の子達は引率の大人と共に見知らぬ街へ探検に出かけていた。
だがウィルは皆と一緒に行動せず、ホテルのテラスのベンチで寝そべっている。
片翼のミカエルは黙ってウィルの隣のベンチに腰掛けた。
心地よい風が吹き抜けた。
「どこ行ってたの?」
ウィルは、顔を上げずに問う。
「寝てなかったのか?」
「うん。でもウトウトはしてた。」
ウィルは、片翼のミカエルへの問いの答えを待っていた。
「なに、ちょっと遠くへ・・・だよ。」
少し声が疲れていたのかも知れない。
でも、それはどうという事はない。今もあそこの民は苦しんでいるんだ。
「それより、ウィルは街へは行かないのか?」
詮索されたくなくて話題を変えた。
「僕にとって知らない街は、怖いよ。何がどこにあるか、わからないからもの。」
彼にとっては、知らない街は宇宙の彼方に飛ばされたようなものなのだろう。
地球を見失ったら、生きてはいけない。
自分の発想に、片翼のミカエルはフフと笑った。それはちょっとオーバーか。
「でも、この前は行ったんだ。コリンが手を引いてくれた。いろんな音を聞いたよ。
有名だっていう、門も触りながらくぐった。美味しそうな匂いもたくさんしたな。」
そこで、少し思い出し笑いをしながら、
「でも、僕等は皆から、はぐれてしまってね。コリンは僕より小さいから泣き出してしまったんだ。」
少し、ため息が混ざった。
「僕はコリンをずっと励ましてた。そしたら親切な女の人が、僕たちを気にして助けてくれたんだ。
手を探したら、誰かがその手を差し伸べて握ってくれた。」
ニッコリと笑うウィルには、見知らぬ顔で通り過ぎていく手もたくさん知っている。
だから人の温もりがある“その手”が好きなのだといつも言う。
「ウィルー!ただいまー!土産だぞー!」
そう言いながらどやどやと街の探索隊が返ってきた。
タンバリンのおもちゃや、笛、それにお菓子が次々に目の前に置かれていく。
少年達は、おもちゃで遊び、歌を歌い、みんなでお菓子をぼりぼり食べた。
夜になると、年長のリーダーのミロの部屋に集まった。みんなは、ベットに寝転んだり足元に座ったりしてミロの読む本の話を楽しみにしている。
今日はブレーメンの音楽隊だった。
少年達は、モノマネをしながら話を聞いている。
ミロがロバのマネをする。ケインは犬。ラルフは猫。
「じゃぁ、僕はニワトリやるよ」
ウィルがベットの上に立ち上がった。
「ニワトリの羽は、こうだよ!」
ベンがウィルの手を後ろにした後、パタパタとさせ動きを教えた。
「コケコッコーー!」
「似てるよ、ウィル!」
「僕もする!」
みなが動物達の真似事をしながら楽しい時間を過ごし夜は更けていった。
そこには、舞台を降りた無邪気な少年達がいた。
翌日は移動日だった。彼らはまた新たな街へと旅立った。
最終の街のホテルにたどり着いた時、聞きなれた声がウィルと片翼のミカエルを出迎えた。
「元気だったか?ウィル」
「!」
「おじさん!!」
そこには、精悍な顔立ちの大人のマイクが立っていた。




