第5話 -死にたい私は出会いました-
「そういうお前こそ、行かなくていいのか?」
俺が話しかけてきたこいつに、そう返すと、
「僕のことはいいからさ、君のことを教えてくれないかな?いじめられっ子君?」
なんだか腹が立つ返答だなこのチビ。
目の前のこいつは、自分よりも一回り小さい。
だが、少なくともあいつらよりは言動に知性を感じるな。
「君は同じクラスのあの子たちにいじめられている。それなのに、必死になってランクを上げようとしない理由がわからない。ランクを1つ上げれば、いじめなんてなくなるはずだ。なんせこの学校ではランクが高いほうが偉いのだからね。」
ふむ。なんと返答しようか。
正直いじめなんて痛くもかゆくもないから無視してるだけなんだが。
もしもそのことがバレてしまったら、怪しまれるだろう。
俺は思考を巡らせる。
「諦めっすよ。この現状はもう変えられない。どうせ上のランクに行っても、実力は変わんないんですから。結局上でいじめられるだけってね。そもそも、学園最弱が人探しで上のクラスに行って、どうなるってんですか。」
それらしい返答をしておいた。
「なるほどなるほど。君の言いたいことはよーくわかった。今はそれで納得しておいてあげるよ。」
「納得いただけたなら何よりっす。」
多少不満げではあるが、納得した様子で帰ろうとしている。
「っと、そういや名前なんでしたっけ?」
「えぇ、名前覚えてないのかい?割とこのクラスながいでしょ?──まぁ、名前覚える暇もなかったか。」
そうして彼は足を止め、
「しょうがないなぁ。僕の名を教えてやろう。僕の名はフェイ・ネムーク。もう忘れるなよ!」
そう言い残して教室から出て行った。
「……あなた、いじめられてるの?」
どうして、といった様子で、ハルカが話しかけてくる。
「(まぁ、俺は弱いからナァ)」
「そんなわけがないでしょ。」
即答しないでいただきたいものなんだが。
「(さて、こんなところにいても何にもならない。俺も帰るかな。)」
そうして俺は教室を後にする。
「そういえば、面白いことになったわね。」
帰宅中、突然話しかけられる。
「というと?」
「だってあの子たち、見つかりもしない人間を探し続けるんでしょ?」
「(そういえばそうだったな。)」
ハルカ・シノゾムはすでに死んでいる。
だからこそもう世界中どこを探しても見つかるわけがないのだ。
「(死体だって完璧に処理したしな。)」
「悔しいけどそうね。死体現場を見てもきれいさっぱり何もないもの。しかも犯人は学園のEクラス。そんなの誰にだってわからない、そういうことでしょ?」
「(あぁそうだ。だれ一人だって気づきやしない。そういわれると滑稽だな。ランクアップを目指して皆が死に物狂いで探す。それでも見つからない。哀れでたまらない。)」
「一体誰のせいでこうなってるとおもってるんだか。」
そんな話をしながら、俺たちは真昼間から下校した。
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「結局、あなたはこれからどうするのよ?」
家についてすぐ、私は彼に問いかけた。
「んー正直何にも考えてねぇな。」
──は?
「計画は練ってあるとか恰好つけてたのに、何するか考えてないの?」
何を言ってるのかしら。と頭を抱える。
「いやまぁ、計画自体あるのは間違いない。だけど、な。正直今はかなり余裕があるんだよ。計画のきっかけとなるお前の死、そして計画のゴール。この2つはもうすでにあるのだが、今はまだ早い。計画を実行するにはな。」
……ふむ?
わかったようで、わからないような……?
「結局あなたの計画とやらを知らなきゃ、私にはなーんにもわからないってことがわかったわ。」
そしてジトーっと彼を見つめる。
「──わざわざ計画を話すつもりなんてないぞ。あきらめろ。」
む。
「(やっぱり頭が固いわね)」
「わざわざ念話で言うな。」
「仕返しよ。」
そういえば、そんなこともあったなといった顔をしている。
まさか忘れてたのかしら。
そんな会話をしていると、一つ思うことがあった。
「……あなたの目的がわかることがない、ということはわかったけれど、今の私の目的って何なのかしら?」
人間は生きるために、働き続ける。けれど、私みたいな幽霊は何を目的に生きれば良いのだろう?
「────お前の目的はまだ終わっちゃあいないだろ?」
そういえばそうだったわね。私は死ぬことが目的、それは今でも変わらないのかもね。
「んーと、あれ?幽霊に死ってあるの?いわゆる成仏、ってやつをすれば良いのかな?でも成仏といったら未練を果たすことで、私に未練はなくて……ん?」
わからないことだらけね。




