2食目
俺はスリープモードから起き上がりあくびを嚙み殺す
「サイボーグでもあくびは出るの不思議だねぇ」
大きく伸びをする。身体が軋み音を立てる。おお、今日も調子良さそうだ
俺は頭をポリポリとかく、腹の上で寝てた猫は何処か行った
「さーて、朝飯・・は無いからまたカプセルかぁ・・」
昨日の今日でもう冷蔵庫はすっからかんだ、買い物いかにゃ、俺はソファーから体を起こす。
拍子に昨日銀行からかっぱらってきたキャッシュがガラガラと音を立てて袋から零れる
「ああ、マネーロンダリングもしなきゃなぁ」
めんどくさい話だ、違法な金はロンダリングしなきゃ使えない。通称洗濯屋に手間賃渡さなきゃ使えねぇんだもん
俺は袋を乱雑に掴み、玄関の戸を開ける。なんか隣にボロ布を被ったものが置いてある。俺は乱雑にソレをはぎ取る。そこには体を丸めた少女が居た
「なんだ?浮浪者か?この辺りでは見かけねぇ面だな」
女は答えない。よくよく見れば目があるはずのところが機械だ、電脳の女?
俺は一瞬考えた。コイツ、どっかの組織から逃げてきたのか?
「ま・・関わらないことにこしたことねーわな」
俺は袋を手に洗濯屋に向かう、
「おう、マージ―いるか?」
俺は洗濯屋に入るといつものように声を掛ける。見張りが頷き奥に案内される。お目当てのやつがいた
「おうカイム、なんだ?仕事か?」
マージ―と呼ばれた男はいつもの事の様に言う
「おう、いっちょ頼むわ」
ガチャリと袋を置く、マージ―がこりゃまた多いな、強盗か?と聞く、俺はだったらなんだ?と返してやる。マージ―は偏屈だが腕は確かだ。俺は途中で買った牛乳を飲みながら出来上がるのを待つ
「おいカイム、お前どこの金庫から盗んできやがった?一個プロテクトが強くてロンダリング出来ねぇぞ」
マージ―が怒り気味に俺に言う
「じゃ、ソイツは良い、他のやってくれ」
「あいよ」
なんてことないやり取りが行われるが、全部違法だ。ほどなくして仕事を終えたマージ―がやってくる
「いやぁ、やっぱこれだけはどうにも解除出来ねぇ、済まねぇな」
申し訳なさそうにマージ―がその解除できなかったやつを持ってくる
「ああ、良いって良いって、ソイツ以外は大丈夫だったんだろ?」
ああ、と言いつつキャッシュが半分くらいになって帰ってくる手間賃分差し引きされているのだ
「全部でいくらになった?」
ざっと130万くらいだと言われた。まあまあの稼ぎか、俺は帰り道に食材を買いこみ帰路につく
愛しのアジトの前に来てみればさっきの女が朝と変わらない姿でドア前に居る
「おいおい?死んでねぇだろうな?」
俺は警戒しながらも女に近づく、生命反応アリと俺の電脳がはじき出した。生きてるらしい
呼吸が浅い、死ぬのか?
「み・・水・・」
女がか細い声で言う、水・・ね、このままアジト前で死なれても困るしなと思い、女を拾い上げる
「?」
女が固まる。ま、そうだわな、俺は女をソファーに下ろし水をコップに注ぎ目の前に出してやる
「っ!」
水を確認したとたん凄い勢いで飲み始める女、おお・・むせるなよ?
水を飲み終えた後、盛大に腹が鳴る。俺のじゃない女のだ
「ハハッ!!おい女!お前腹減ってんのか?運がいいな、俺は今食材買いだめしてきたとこだww」
「食材?」
女が不思議そうに言うそーだよ、食材だ、飯のタネだ
俺はマージ―が解除できなかったキャッシュをテーブルに放り投げ、料理の準備を始める。今日は肉が手に入ったからチンジャオロースでも作るか
3Dプリンター人工肉に野菜くず。栄養補助食物繊維カプセルを炒めれば・・完成だ
「えーと、皿、皿うお!?」
思わず声を上げてしまったのには理由がある。マージ―が解除できなかったキャッシュに女がプラグを伸ばしてなんかやってるからだ
「馬鹿!!ソレのプロテクト固いらしいぞ!?やめとk」
ピー
「は?」
軽い電子音と共にキャッシュは青く染まりフリー状態であることを示した
「うっそぉん・・」
俺は思わず言葉を漏らした。あのマージ―が解除できなかったプロテクトを解除しやがった??
あんなんだがマージ―の腕は確かだ。賭けたっていい、それをこんな小娘が解除??悪い冗談だろ
「ワタシ、この手の事、やらされてきたから、出来る」
女がぽつりと言う、そう言う事やらされてきたって・・ああ、どっかの組織の飼い犬だったのか
「ワタシ、嫌で逃げてきた。走って、走って、気づいたらあそこにいた」
なるほどね?
「で?その組織の名前わかる?」
「わからない、逃げるのに必死だったから」
あ、そ、わかんないんじゃしょーがない
「ま、こまけぇことはいいや、ほら、食えよ」
目の前にチンジャオロースモドキを出してやる。無論フォークもだ
「・・・」
フォークを片手に固まる女、どした?せっかくの飯なのに
「ワタシ、肉食べない」
な・・なぁんだってぇぇぇぇ!?こんなにおいしい肉を!?噛み応えのある肉を!?食わない!?
「野菜とカプセルだけ・・もらう」
そういうと奇麗に肉を避けて食物繊維カプセルと野菜だけ食べ始める
あーもー!!困った女だ!!
「5分待て!!」
俺は急いで台所に戻りあるものを茹でる
「おらぁ!!これなら食えるだろ!!」
ドン!と置いたのはどんぶりに浮かぶ麺、うどんだ、半分くらい合成小麦のやつだが文句言うなよ
「なに・・これ?」
うっそぉん!?うどん見たことないの!?この子!?どんな扱いされてたんだよ!
「うどんと言う、植物しか使ってない喰いもんだ!これなら食えるだろ?」
出汁カプセルを溶かしてうどん乗せただけのシンプルな奴だが・・大丈夫だよな?
「・・・ずずっ」
女がうどんのつゆを啜る
「・・・おいしい」
よっしゃあああああああ!!!!勝った!!!!完!!いや終わんないけど
「そーかそーか!良かったぜ~!それにしてもありがとうな!このキャッシュいくら入ってんだ?」
「200万」
は?
俺は箸を思わず落とす
「にひゃくまん???」
20万とかじゃなくて???
「足りなかった?」
うどんを食べる手を止め不安そうに言う女
「充分だ!?好きなだけここにいてくれ!ハハッ!!お前すごいな!?」
「・・そう」
ホッとしたようにうどんを啜る
「お前名前は?」
俺はチンジャオロースモドキを喰いながら聞く
「003番」
それ識別番号じゃねーか
「え、お前名前ないの?」
「だから・・003番」
だーかーらーぁ
「それ識別番号じゃねぇか、もっとこう・・女らしい名前をだなぁ」
喰いながら女、003番を指さす
「・・・無い」
無い・・かぁ
銀髪に白い肌、瞳・・は電脳化してるから無いか、うーーーーーん
なんとなく女だから花の名前がいいよな・・うーん
名前を考えているとテーブルにアシダカ軍曹がよじ登ってきた
「お、軍曹!今日もお疲れ様です!」
俺は席を立ち、カフェインカプセルを割り、水に溶かして皿に置く
何気に長い付き合いの軍曹だ、俺はゴキ・・が嫌いだから助かっている。たまにこうやってカフェインを報酬として与えるようにしたら学習したらしい
「蜘蛛」
女がうどんを食べ終えてそっと手を伸ばす。軍曹は大人しいので逃げたりしない
「・・・可愛い」
ほぅ・・軍曹の可愛さが理解できるのか・・これは見込みがありそうだ
そこで俺は思いつく、蜘蛛・・アラクネ
「アラクネ!!」
俺は立ち上がり高らかに宣言する
「お前の名前はこれからアラクネだ!!なんでも神話の言葉で蜘蛛って名前らしいぞ?どうだ?」
「アラクネ・・」
いつのまにか軍曹を膝の上に乗せ、撫でているアラクネ
「うん、ワタシ、アラクネ」
どうやら気に入ったようだ、俺は床にゴロンと横になる
「アナタの名前は?」
「カイム、カイムだ」
アラクネはその名前を確かめるように繰り返してる。なんだよ、笑えんじゃねーか
そう思いながらスリープモードに移行する。明日は何を喰おうか
アラクネ 女のコ 年齢16~18ぐらい、電脳化しており目の部分が電子機器に入れ替えられている。
実は凄腕ハッカー、好きなものはアシダカグモの軍曹と猫とカイムがくれたうどん
銀髪色白で細い、体もほぼサイボーグ化している。服は黒い布




