第17話 まさかの展開
「レイヴェル様をお呼びしましょうか」
ひとりが、柔らかく微笑んだ。
「きっと……驚かれますわよ」
甘やかな声。けれど、その奥に何か企みのようなものが滲む。
「え〜でもお、私、面白いこと思いついちゃいました!」
別のひとりが、口元に人差し指を当てて、にやりと笑う。
その笑みは、どこか妖しくて。
「なになに〜?」
残りのふたりが、ぱっと目を輝かせる。
三人で顔を寄せ合い、ひそひそと囁き合う。
次の瞬間――ぱっと弾けるような歓声。
「なにそれ、めっちゃ楽しそうじゃんっ」
「あんた天才…!」
ついさっきまで、宴の席でしとやかに振る舞っていた人たちとは思えない。
無邪気で、騒がしくて。
まるで年相応の少女みたいに、はしゃいでいる。
「イレーネ様、これから楽しいことがはじまりますわよ〜」
不意に名前を呼ばれた。
「え……?」
どうやら、私も巻き込まれるらしい。
――遊女って、みんなこんなものなの?
きゃっきゃと笑い合う三人を前に、戸惑いが先に立つ。
私は、女友達がほとんどいなかった。
いつも男の方が気楽で、こういう空気には慣れていない。
けれど――
(……悪くはないわね)
胸の奥に、ほんの少しだけ、くすぐったい感情が生まれる。
敵国の王子に捕らえられて。
遊女たちに囲まれて。
こんな状況、少し前の私なら想像もしなかった。
――それなのに。
ふ、と、笑いがこぼれた。
自分でも意外なくらい、自然に。
その瞬間。
三人の動きが、ぴたりと止まった。
「……て、天女?」
「美しすぎる……」
一斉に、こちらを見る。
頬を赤らめて、目を見開いて。
「え……?」
戸惑う。
鏡がないから、自分の顔は見えない。
どんな表情をしているのかも、わからない。
「……ありがとう」
小さく返すと、少しだけ頬が熱くなる。
照れる、なんて感覚。
いつぶりだろう。
再び、三人はきゃいきゃいと騒ぎ始める。
その輪の中に、半ば強引に引き込まれて。
私は、まだ少し戸惑いながら――けれど、確かにその空気の中に立っていた。




