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魔神と呼ばれた元傭兵のトンデモ開拓スローライフ 〜裏切られて引退したおっさん。一人で生きると決めたのに、最強種族が集まってくる〜  作者: 犬斗
第二章

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第34話 帰国

 ◇◇◇


 魔竜領侵略に失敗し、瀕死の重傷を負ったルジェール騎士団の将軍レーシェ。

 だが、アクアスの権能によって命を助けられた。

 それはただの慈悲ではない。


 テラム平原に二度と侵略させないため、将軍クラスの言葉で国王に進言させるためだ。

 アレファスの思惑通り、レーシェは王都ルジェールへ向かった。

 通信部隊の壊滅により王都に戦況は伝わっていない。


 ルジェール城の玉座にて、レーシェ帰還の報を受けたルジェール八世。


「レーシェ将軍の帰還!? すぐに通せ! 丁重に出迎えろ!」


 当然ながら吉報が届くと思っていたルジェール八世は、失意の底に叩き落とされた。


「か、壊滅だと……」


 通常、軍隊における壊滅は五割の損耗と言われる。

 しかし、今回は出撃した二万人のほぼ全てが死亡した。

 さらに、全幅の信頼を置いていた騎士団長バシュデル・ブライシオの戦死だ。

 歴史上、最も損害が出た戦いであることは間違いない。


 その内容に衝撃を受けたルジェール八世は、玉座から滑り落ちた。

 だが、レーシェは報告を続ける。


「相手は人間二人と、魔竜二柱でした」

「人間だと?」


 魔竜領にいた元傭兵は、たった一人で数千人の騎士を斬った。

 それよりも凶悪なのが、炎の竜巻を作り出した魔女だ。

 軍の半数近くが、命を焼き尽くす竜巻に吸い込まれていった。


「はい。その人間二人に、二万人のほとんどを殺されています」


 レーシェの表情からは、完全に生気が消えている。

 アクアスによって怪我は完治しているが、軍を壊滅させたことの責任が、その細い肩に重くのしかかっていた。


「さらに、自らを魔竜と名乗った女性は、彼の地に湖を作り、我らの拠点である城を沈めたのです」

「湖? な、何を言っておる」

「その……、それ以外に表現しようがなく……」


 レーシェは、アクアスが行った湖作り(きせき)が未だに信じられなかった。

 しかし、それは夢ではなく目の前で起こった事実だ。


「フェ、神の鉄杭(フェルディム)はどうしたのだ! 魔竜をも倒す最強兵器だぞ!」

「魔竜に神の鉄杭(フェルディム)は直撃しましたが……全くの無傷でした」

「バ、バカな……」


 力なく項垂れるルジェール八世に対し、レーシェは跪きながら、さらに深く頭を下げた。


「陛下、誠に恐れ入りますが、魔竜領の侵攻は不可能と言わざるを得ません。人間が手出しできる領域ではございませんでした」


 レーシェの進言は正しい。

 しかし、魔竜領の占領は王家の悲願でもあり、ルジェール王国の未来を左右する。


「それを可能にするのが、貴様たちの仕事だろうが! 二万もの兵を死なせた無能が!」


 レーシェの発言に、怒りをあらわにするルジェール八世。

 戦いに敗れたとはいえ、命からがら帰還した騎士にかける言葉でない。

 だが、ルジェール八世は怒りを抑えることができなかった。


 己のことしか考えられない自己中心的で傲慢なルジェール八世は、臣下からの評判がすこぶる悪い。

 英雄だったバシュデルの性格が変わった原因も、この国王の性格によるところが大きい。


「貴様の処遇は追って通達する! 下がれ!」

「かしこまりました」


 謁見室を退室したレーシェは、騎士団本部へ向かった。

 王に対する忠誠心も、国家に対する敬愛も、すでに薄れている。

 だが、責務は果たす。


「戦後処理をしなければ……」


 戦死した騎士には遺族補償がある。

 傭兵団に補償はないが、当初の報酬を遺族に支払う。


 辛うじて生き残った二百名ほどの者たちは、兵士として再起不能だ。

 恐怖で精神を破壊されていた。

 姿を消した者もいるという。


 ルジェール王国による魔竜領侵攻失敗は、当然ながら周辺国に知られていく。

 騎士団長バシュデルの戦死により、ルジェール騎士団の戦力が著しく低下したことは、隣国にとって僥倖と言えよう。


 ルジェール王国と戦争状態にあったスクロア帝国は、ルジェール王国へ侵攻準備を開始した。


 ***


 テラム平原から遠く離れた森林で、一人の男が焼いた肉を食らう。

 その男もまた、魔竜領侵攻を耳にしていた。


「あのクソバカ魔竜め。あの地の主だからって、これ以上調子に乗せるのはムカつくな」


 男は手に持つ肉を無造作に放り投げた。


「そろそろ長年の因縁に決着をつけてやるか、テラム」


 男を囲む十数頭の獣たちが、一斉に肉に食らいついた。


 ◇◇◇

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