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魔神と呼ばれた元傭兵のトンデモ開拓スローライフ 〜裏切られて引退したおっさん。一人で生きると決めたのに、最強種族が集まってくる〜  作者: 犬斗
第一章

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第33話 再建

 俺たちはセディルナ村に帰還した。

 すでに日が暮れていたため、唯一残った移動用の小屋で夜を明かす。


 翌日、俺は日の出前に目を覚ました。

 小屋を出て、改めて村を見渡す。

 一面焼け野原だ。


「そっか、素振りもできねーのか」


 俺は毎日素振りをしていたが、そのクレイモアも燃えてしまった。


「まあ武器よりも、まずは家を作らねーとな」


 溜め息をつくと、背後から人の気配を感じた。


「おはよう、アレファス」

「アレファスちゃん、おはよう。見事に燃え尽きちゃったわねえ」


 シルヴァとアクアスが小屋から姿を見せた。

 俺は二人と挨拶を交わし、焼け野原を指差す。

 そこは井戸があった場所だ。


「井戸もないんだよ」


 この地に来て、俺が最初に始めたことは井戸掘りだった。

 人間の生活には水が最も重要だ。

 水がない土地では生きていけない。


「あなたはもう人間じゃないでしょう?」

「心を読むなっつーの」


 シルヴァが笑みを浮かべていた。

 本人は心なんて読めないと言っているが、読んでいるとしか思えない。


「魔人でも水は必要だものね。でも安心して、私がいるもの。水に困ることはないわよ。うふふ」


 水竜たるアクアスの存在は、水そのものだという。

 存在が水だなんて、俺は未だに理解できない。

 ただ、アクアスがいると水源が確保できるし、温泉も掘ってくれる。

 正直ありがたいし、とても便利だ。


「遠慮せず、便利に使ってね。うふふ」

「だから、心を読むんじゃない!」


 アクアスもシルヴァの真似をしていた。


「心なんて読めるわけないのにね。うふふ」

「アレファスが分かりやすすぎるんですよ。ふふふ」


 村を焼かれて全てを失ったのに、今の二人に悲壮感はない。

 明るく努めているのか、それとももう吹っ切れたのか。

 まあ後者だろう。

 人生経験の長さが俺とは違うのだから。

 俺も見習うべきだ。


 俺の考えを見抜いたのか、シルヴァが微笑んでいる。


「ったく……。始めるぞ」

「何からやるの?」

「まずは片付けだ。残骸を仕分けする。大変な作業だがやるしかない」

「分かったわ。頑張りましょう」


 片付けの手間を考えると、村の場所を移したほうが効率的だ。

 だが、やはりこの場所で生活したい。

 たった一年暮らしただけだが、俺にとってはもう故郷とも言える。

 シルヴァも同じ想いだから、不満を言わず、一緒に片付けてくれるのだろう。


「アレファスちゃん、私は先に水関係をやるわね。川は残ってるから、また水路を引くわ。そして、井戸を掘って、温泉も出すわよ。うふふ」

「ああ、頼むよ」


 温泉は後回しでもいいのだが、アクアスにしてみれば井戸も温泉も労力は変わらない。

 そもそも、一瞬で湖を作るほどの力を持っている。

 水関係に関しては、すぐに復旧するはずだ。


「ところでテラムはどこへ行った?」

「テラムちゃんなら、朝早くから何処かへ出かけたわよ」

「まあ、あいつのことだから心配ないか。さあ、やるぞ」


 俺たちは作業を開始した。


 ***


「さて、休憩するか」


 空を見上げると、太陽が頭上に差し掛かっていた。

 そろそろ昼飯の時間だ。


「あ、飯を考えてなかったな……」

「一日くらい食べなくても平気でしょ?」

「まあそうだな」

「あとで考えましょう」


 シルヴァと話していると、アクアスが微笑みながら近づいてきた。


「とりあえず、お水はあるわよ。あと温泉も出るわ。穴を掘っただけの簡易的な温泉なら、もう入れるわよ。うふふ」

「仕事のあとに温泉か。手が煤だらけだし助かるよ。ありがとう」

「一緒に入りましょう」

「嫌だよ」

「別にいいじゃない」


 アクアスは俺をからかって遊んでいる。

 温泉は早急に作り直すべきだ。

 次は男女を分ける。


「ん? なんだ?」


 突然太陽が遮られた。

 周辺が影で覆われている。

 俺はすぐに上空へ視線を向けた。


「あら、テラム様ね」

「あの子、何やってるのかしら?」


 テラムが魔竜の姿で飛んでいた。


「なんか、すげーたくさん抱えてるぞ?」


 テラムは着地と同時に大量の荷物を地面に置き、魔人の姿に変化した。


「作業は捗っておるか?」

「お前、それなんだ?」


 テラムが運んだものは、大木二本、大角水牛三頭、森豚四頭、野鳥数羽だ。


「建築素材と飯の材料だ。腹が減っては作業ができんだろう。わははは」

「お前……食わなくても平気だろ?」

「何を言うか! 旨い飯を食ってこそ、質の高い仕事ができるというものだ!」


 妙に人間臭いことを言うテラム。

 理由をつけているが、ただ旨い飯が食いたいだけだろう。


「アレファス。私は素材を採りに行くから、必要なものがあったら教えろ」

「んじゃ、木材と温泉用の岩も頼むぜ。アクアスがもう温泉を出してくれたんだ」

「うむ、了解した」

「森豚と鳥は解体しておけばいいんだろ?」

「そういうことだ! 分かっておるな、アレファス! わははは!」


 テラムはすぐに魔竜の姿に戻り、羽ばたいていった。

 大角水牛もいるということは、アクアスが好きなチーズのことも考えているのだろう。

 意外と気遣いができる魔竜だ。


「テラムちゃんは優しい子なのよ。うふふ」


 アクアスが嬉しそうに、大角水牛を新しい池に連れて行った。

 チーズ作りはアクアスが最も得意だ。

 落ち着いたらチーズ作りを再開するだろう。


「それじゃあ、森豚を解体しちまうか」


 道具類は全て焼けてしまったので、俺はクレイモアで解体していく。


「意外となんとかなるもんだな」

「あなた、器用ね」


 隣でシルヴァが岩を積み上げ、簡易的なバーベキューコンロを作っていた。

 炎の魔石も焼けてしまったが、シルヴァが魔法で木の枝に直接火をつける。


「さあ、いつでも焼けるわよ。ふふふ」


 俺は焼け落ちたレストランで、岩塩を発見していた。

 表面は焦げていたが、削れば使える。

 まだ大量に残っている。

 それこそ数百年分はあるだろう。


 塩さえあれば、当面の味付けは十分だ。


 ***


 テラムが帰ってきたので、解体した肉に塩をまぶし焼いていく。

俺がこの地に来て初めて作った料理も、ただ肉を焼いただけのシンプルなものだった。


 焼けた肉を頬張りながら、俺はこの地へ来た時のことを思い出す。


「懐かしいな……」

「たった一年で何を言ってるのよ。ふふふ」


 三百五十歳のシルヴァにしてみれば、一年なんて昨日のことに感じるかもしれない。


「うむ、一年なんてついさっきのことだ」

「そうよ。寝て起きたら数万年だもの。うふふ」


 魔竜の二人にしてみれば、一年なんて瞬きの時間にも満たないだろう。


「あ、あのなあ。お前らと比べんなって。俺はまだ四十三歳の若者だ!」


 俺は立ち上がり、人間の寿命を遥かに超えた魔女と、数十億年という生物の常識が通用しない化け物を睨んだ。


「はあ? あなたが若者? どう見ても、おじさんじゃない」

「そうだ。この中では最も見た目が老けておる」

「アレファスちゃんは、もっとお肌に気を使わないとダメよお?」


 三人が呆れている。

 なんで俺が一番年寄り扱いされなきゃいけないのか。


「ふ、ふざけんじゃねーぞ!」


 俺が怒鳴ると、三人は声を出して笑っていた。


 焼け野原と化したセディルナ村だが、この常識が通用しない仲間たちがいれば、すぐに復旧するだろう。

 それどころか、以前よりも快適になるかもしれない。


 飯を食い終わった俺たちは、作業に取りかかった。


「おい、アレファス! 早く畑を耕すぞ!」

「まだだっつーの! 片付けが終わってねーだろ!」

「じゃあ、とっとと片付けるぞ!」


 二十八億年も生きているのに、野菜のために必死に働くテラム。


「ははは、変なやつ」

「一番最初にトウモロコシを植えるぞ!」

「はいはい、分かってるよ」


 そういえば、テラムとの出会いはトウモロコシから始まった。

 あれ以来、俺はトウモロコシ作りの勉強を続けている。


「テラム、もっと旨いトウモロコシを食わせてやるからな」

「本当か! 早く食わせろ! 明日だ!」

「無理に決まってるだろ!」


 シルヴァとアクアスが声を出して笑っていた。


「ったく、この食い意地の張った魔竜は……」


 俺は何気なく、以前トウモロコシを作っていた場所に視線を向けた。


「ん? あれは……。ははは、さすがはテラム平原だ。大地も主と同じ性格だぜ」


 真っ黒く焼け焦げた地面に、小さな芽が一つ顔を出していた。

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