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魔神と呼ばれた元傭兵のトンデモ開拓スローライフ 〜裏切られて引退したおっさん。一人で生きると決めたのに、最強種族が集まってくる〜  作者: 犬斗
第三章

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第98話 賑やかなパーティー

 恐らくあの狭い空間の中で、地獄のような吹雪が吹き荒れていることだろう。


「ってか、話の規模がでかすぎるだろ。不眠症で一億年ってなんだよ……」

「壮絶な兄妹喧嘩ね……」


 隣にシルヴァが立っていた。

 急に寒さを感じなくなったと思ったが、シルヴァの魔法で外気温を遮断してくれたようだ。


「ニフスちゃん!」


 俺たちの間を通り抜けたテネヴァスが、叫びながら庭に向かって走り出した。


「あら、テネヴァスさん。あなたテラムさんを許したの?」

「許してないよ。だけど、それ以上にここの生活が快適なんだ。だから今は休戦中だよ」

「へえ、あなたがそんなことを言うなんて、どういう風の吹き回しかしら?」


 俺の隣で白い髪がふわっと流れた。

 そのまま俺を素通りして、グラキャスが外に出ていく。


「ニフス。大人っぽくなったのう」

「あっっ!! グラっっっっ!!!!」

「元気じゃったか?」

「会いたかったよー。グラってば、ずっと寝てるんだもん。寂しかったよー」


 ニフスがグラキャスに飛びついた。

 グラキャスの腰に手を回し、顔をうずめ抱きついている。


 ニフスの突然の変貌ぶりに、ただただ驚くばかりだ。

 アクアスが俺の隣で、二柱の様子を眺めている。


「うふふ、ニフスちゃんは一番甘えん坊でね。特に同じ系統のグラキャスちゃんには懐いていたのよ」

「そ、そうか……。しかし、変わりすぎだろ」

「いたずらっ子だもの。今の姿が本来のニフスちゃんよ。うふふ」


 俺は雪原となった敷地を見渡した。

 そして、テラムを包み込む球体の吹雪が一つ。


「これ……どうすんだよ……」

「そうねえ、困ったわね」


 七姉妹たちも含めて、今や全員外に出ている。

 さすがにこの雪景色に唖然としていた。


「早めに雪を何とかしないとな」

「大丈夫よ。うふふ」


 なぜかアクアスの表情には余裕があった。


「ほら、見て」


 アクアスが畑に積もった雪を指差すと、徐々に雪が溶けていく。


「ん? アクアスが何かやったのか?」

「違うわよ。私ではここまで綺麗に雪を溶かせないもの」

「じゃあ、誰が?」


 ニフスと手を繋ぎながら、グラキャスがこちらに向かってきた。


「イグアスじゃ」

「イグアスっていうと……」

「始原の十三竜(トレディキス)の次女で火竜じゃよ」

「火竜か……。そりゃ、雪も溶けるってもん――」


 突然、庭に回転する細い火柱が立った。


「うおっ!」


 不思議と芝生は焼けていない。

 火柱が消えると同時に、赤い髪の女が立っていた。

 燃えるような赤い髪は荒々しくも美しい。

 身長は俺と同じで、女としては大きいが、まあ人外の存在だ。

 深紅の瞳は、燃え盛る溶岩のようだった。


「イグアスちゃん!」


 珍しくアクアスが走り出し、イグアスに抱きついた。

 満面の笑みを浮かべているアクアス。

 そういえば、アクアスにとってイグアスは姉になる。

 数少ない甘えられる相手なのだろう。


「アクアスか」

「もう、久しぶりじゃない。元気だった?」

「無論だ」


 イグアスの赤い瞳がグラキャスを捉えた。


「グラキャス。貴様、強くなったな」

「お主も竜王になったようじゃな」

「無論だ」


 なんというか、イグアスは猛烈な美人だが、目つきは鋭く厳しそうだ。

 まるで軍人のような印象を受ける。


 イグアスは吹雪の球体に目を向けた。


「アクアス、あの吹雪の牢獄(セラ・ニーリス)の中にいるのはテラムか?」

「そうよ。ニフスちゃんのお仕置き中よ」

「そうか」


 イグアスが手をかざすと、瞬時に吹雪が消滅した。

 ガチガチに凍ったテラムが姿を現す。


「何を寝ておるのだ、テラムよ」


 イグアスの声で、瞬間解凍されるテラム。


「すまぬのだ、ニフス……。すまぬ……すまぬ……」

「何を寝ぼけておる」

「むおっ! イグアス姉上か!」


 テラムもイグアスに駆け寄った。

 これで、ついに長女以外の十二柱が揃ったことになる。


 獣王たちは言葉が出ず、聖王たちも額から汗が止まらない。

 この星の根源がほぼ揃ったからだ。


「何かすげーことになったが……。みんな、歓迎するよ。部屋に入ってくれ」


 俺は全員を室内に招き入れた。

 テーブルに座る獣王、聖王、魔王、竜王。

 なんというか壮観だ。

 この星と別の星の最強種族たちが集まっている。


「アレファス、乾杯しようぞ」


 テラムがブドウジュースをグラスに注いだ。


 ニフスに何度も謝罪したテラムは、なんとかあの修羅場を凌いだようだ。

 まあこの土地の主だし、ニフスだって本気でテラムを消滅させるわけはないだろう。


「んじゃ、改めて。竜王たちの再会、聖王たちの歓迎、獣王たちの進化、魔王の誕生に乾杯!」

「「「乾杯!」」」


 全員でグラスを掲げた。


 テラム以外は全員酒を飲んでいる。

 テラムは相変わらず酒が弱い。


「やっべ! 料理足んねーぞ! ウェントス、テネ! 料理作っぞ!」

「「うん!」」


 エルメス、ウェントス、テネヴァスがキッチンへ向かう。

 竜王が率先して料理を作るとは、信じられない光景だ。


「僕もやるんだもん!」

「アタシもやるっしょ」


 七姉妹三女タルテと五女ケイもキッチンへ向かった。

 その姿がほほ笑ましい。


「まさかこんなに増えるとはな。ちょっと海で魚獲ってくるわ。捌いて刺身にする」


 そう言って立ち上がるマレム。

 海といっても庭の海だ。


「マレムさん、うちも手伝うよ」


 次女エクトラがマレムと外に出ていく。

 もはや完全にカップルだ。


 テーブルには次々と料理が追加され、ビールとワインの樽が空になっていく。

 俺がこの地に来て、最も盛大で最も楽しいパーティーだ。


 イグアス、アクアス、グラキャス、マイハ、シルヴァ、レーシェは、酒を飲みながら落ち着いて話をしている。

 だが、消費する酒の量は尋常ではない。

 在庫がなくなりそうだ。

 

 マレム、エクトラ、アルキューネ、ルーファスは狩りや釣りの話で盛り上がっているようだ。

 本物の海で釣りをするという声が聞こえた。


 アウム、アルジェム、フェルム、ケイ、エレトゥスは、金属加工や陶芸の話をしている。

 今度、大きな窯を作るそうだ。


 ウェントス、エルメス、タルテ、ファンシアはお互いの服装について話している。

 華やかな女子の集いという感じでほほ笑ましい。


 ニフス、テネヴァスは、テラムを激詰めしている。

 隣でアステロが庇い、メロペが必死に落ち着かせようとしていた。


 俺はレオールと酒を飲んでいた。

 獣王で最年長のレオールとは酒を飲む機会が多い。

 今の俺はこの町の町長と呼ばれているが、レオールの存在は副町長といったところだ。


 料理も食べ終わり、そろそろパーティーもお開きにしようと思ったところで、笑みを浮かべたエルメスが俺の元へ来た。

 少しだけ頬が赤い。

 ほろ酔いといったところだろう。


「アレっさん! 全員揃ったし限界値を見ようぜ!」

「限界値? 前に見ただろ?」

「おいおい、みんな竜王になったんだぞ! 見るっきゃねーだろ!」

「なるほどな。それもそうか。んじゃ、今後のためにも見ておくか」

「おっしゃー!」

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