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試物語  作者: 鳳翼 神姫
弟前話 かなたバレー
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 コートチェンジが終わってからのタイムアウト。

 三セット目こっちが有利のまま折り返せはしたものの戦況は好ましくない。

「このままじゃダメだね。」

咄嗟(とっさ)に愛可が休んでいる僕達に言った。

「みんなが点を取れるようにしないといけないよ。一セット目だって二十五点のうち十八点は彼方君が取っているんだよ。」

そう。自慢みたいな感じになってしまうから自分から言わなかったがこのチームに足りないのは得点源だ。

だがセンターの米沢もレフトでエースの向日(むこう)(だに)も決して弱いわけではない。

例に相手が強すぎるんだ。

「そうです。そしてそれに気付かれて二セット目は瀬々良輝君が前にいる時はわざと点を取られて早く後ろまで回させる。そして瀬々良輝君が後ろの時を狙われて大量失点しています。」

正確に分析の解析をする真希菜。

まさにその通りだ。

自分で言うのもなんだが現状、御神楽中学と渡り合えているのは僕だけなのだ。

だが今更そんなことを言ったって仕方がないことだ。

そうこう言ってる最中にもタイムアウトも終わりみんなコートへ出ていく。

あっ、そうそう愛可の手造りのスポーツドリンクとはちみつレモンはおいしく頂きました。―ご馳走様です。

それから結果だけで言えば結局のところ僕が点数を取り、点数を取られ最終的にはデゥースを五回ほど繰り返し、

三十 対 二十九。

あと一点取れば勝利というところで僕の肩は限界だった。

練習の時から肩に痛みを感じ始めてこの試合だけでもう百本以上スパイクを打っている。

二セット目の十三点だって十点は僕がスパイクで取っているのだ。

そして最後の一球。

相手のスパイクをレシーブし、セッターがトスを上げて僕が全力のスパイクを打った。

結果三十一 対 二十九で勝利を収めた。

・・・どうして内容を詳しく書かなかったのと聞かれるとこれと言って面白い展開が無かったからだ。

激闘ではあったけどね。

そして、もうひとつの結果としては僕は右肩を完全に壊した。

みんなはとても嬉しがっていた。

泣いてる奴だっていた。―マネージャーなんか特に・・・。

それから興奮冷めやらぬまま帰り支度をするチームメイト。

そしてそれから僕は病院へ行った。

診察を終え、その結果を医師の口から伝えられた。

結果を伝えられてから僕は夜の道を歩いていた。

「もう・・・バレーは出来ないでしょう。」

その途中、何度も医師の言葉を思い出していた。

不思議なことに悲しい気持ちは出てこなかった。

というよりは言ってる意味がいまいち理解できなかった。

「明日みんなに何て言おう・・・。」

そう呟きながら僕は帰って行った。

・・・もちろん明日も試合だ。

次の日、僕は絶望することになる。

二回戦の相手は次法(じほう)(せん)中学。

強さで言えば僕達と同じくらいのところだ。=いや僕達の方が僅かながら上といってもいいだろう。

僕は会場に着き、すぐにみんなに言った。

みんなの驚きようが凄かった。

マネージャー二人には怒られた。

それでも仕方ないので僕は今回の試合はベンチで見学だ。

まぁ今回の相手は戦力的に下だから・・・。

大丈夫だろう。・・・そう思っていた。

僕は驚愕した。

僕が肩を壊したという事実を聞いた時のみんな以上に驚愕した。

「ストレート負け・・・。」

第一セット目、十五 対 二十五。

第二セット目、十二 対 二十五。

どうして?

戦力的には下のはずなのに。

練習試合でも負けた事がないのに。

練習試合の時と今の試合は何が違う?

・・・・・・!。

その時、初めて気付いた―否、改めて気付いたという方が正しいのだろう。

昔と今の違い。

それは僕が試合に出ていないという事実。

得点源がいないという事実。

キャプテンがいないという事実。

そうか相手の全力が下というのは僕が試合に出ていた時の結果から得たものだ。

僕がいないだけで、ここまで戦力が落ちるものなのだろうか。

僕がいないだけで、ここまでチームワークがとれなくなるのか。

そうだ、マネージャー二人は気付いていたんだ。

言っていたじゃないか、御神楽中学の試合のときだって。

僕は落胆した。

驚きの後に襲ってきたのが脱力感と無気力感だった。

「なんだよ。こんな終わり方ってあるかよ・・・。」

こうして僕の最後の青春(たいかい)が終わった。


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