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嵐の前の静けさ

「まだ頭がクラクラする」



「本当にすいません」



翌日、フリッツが目覚めたのは正午を少し過ぎたところだった。


寝ている間に誰かがソファーに運んでくれたらしい。


昨日の記憶があやふやだったが、目が覚めて、起き上がった瞬間に何度も何度もスイに謝られたことで昨日の出来事を思い出した。



…フリッツにとってできれば思い出したくなかったが。



「二人はどこに、って授業だったな」



「はい。夕方あたりまで帰ってこないそうです」



「そうか。ここにいてもすることが無いし、街にでも出てみるか」



そう言って立ち上がるが、少し視界が揺らぐ。


もちろん二日酔いのせいだ。



「主人、大丈夫ですか?ふらついてますよ」



「大丈夫だ、たぶん。外に出たら気にもならなくなるだろ」



用意してくるから待ってろ、と言って、フリッツは自分の荷物を置いた二階の部屋へと歩いて行った。


スイは精霊なので、ほとんど用意をする必要がない。


なので、キッチンにあったパンや卵、ベーコンを使い簡単な軽食を作ることにした。


30分ほど経ったあとに、顔を洗い、身支度を整えたフリッツが戻ってきた。


スイも作った料理をかばんに詰め、何時でも出発できるようだ。


二人は、今この小屋にいないアヤメとシェリオットに夜の8時ごろには帰ってくる、と書置きを残し、にぎやかな街へと出発した。








ミルファーの街は港町だ。


そのため、海を越えた地との交易が盛んであるため、国外の珍しいものがたくさん見られる。


フリッツは学生時代に夜に学校を抜け出し(ちなみにアヤメとシェリオットも一緒のことが多かった)夜の9時くらいまで遊びに出ていたことよくがあった。


なので、この街の人たちの多くはフリッツのことを知っており、いたるところで騒ぎが起こった。



「フリッツ、久しぶりだな。なんか買っていくか?」



「よう大将。元気してたか」



「旦那! お久しぶりです。アヤメの姐さんにもよろしくと伝えておいて下せえ」



「ふりっつ、私11歳になったんだよ。」



「少しは成長したんかえ? 見た目はなんも変わっとらんぞや」



「フリッツだ遊ぼ、遊ぼ!」



「おい、あの時貸した金のこと忘れてないだろうな」



商人のおばちゃんや小さな子供、スーツを着た見るからにヤバめのオッサン、老若男女を問わずフリッツに色々なことを話かけてきた。


まともな発言から馬鹿げたことまでたくさんあったが、皆フリッツとの再会を喜んでいるようだ。


しかし、その人たちが話す内容にはほとんどアヤメの名前が入っていたので、本当に有名なのはおそらくアヤメの方だろう。


以前からあの性格は変わっていないらしいので、半ば確信を持てた。



「なにやらあちらが騒がしいですね」



スイが街の広場の方を向きながら言った。


スイの言った通り、ぞろぞろと人が集まっていくのがわかる。


そして、その中心では遠目からなので詳しくはわからないが、何かが行われていた。



「うーん、時間もあるし行ってみるか」



とりあえず何が行われているかを見てみることにしたフリッツ。


そのあとをスイが離れずについて行く。



「ちょっと通してくださいね、っと。なんだ? このデカい張り紙は」



「えっと… 盗賊団現る。ミルファー北区域のギルドが襲われた。被害は甚大であり、秘密裏に作られていた何らかの重要な装置を強奪した後に逃走。この装置についてはよくわかっていないがどの区域の人々も注意せよ、ですか。怖い話ですね」



「俺は重要な装置っていうのに興味があるな」



「主人、もっと危機感を持ってくださいよ。北の区域ってここからそう離れてないんですよ」



スイはジト目でフリッツを見る。



「ま、このあたりで何かあったら師匠が黙ってないからなあ。むしろ盗賊の方に同情するね」



「そんなにアヤメさんは強いんですか」



「その辺の盗賊の100人くらいなら一人で殲滅できると思うぞ」



あまりの返答に絶句するスイ。


改めて、アヤメの強さを知ったスイであった。



「でも、何が目的かは知らないけど、盗賊団なんてすぐに捕まるだろ。これだけ大きな騒ぎを起こしてるんだしさ」



「それもそうですね。どこかのギルドで緊急依頼も出されるでしょうから。次は向こうの方を見に行きませんか」



「そうだな、時間ももったいないし行くか」



二人は人で賑わっている通りへと歩き始めた。


その背中には既に騒乱の足跡が迫っていることを二人はまだ知る由もなかった。

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