絶対王者
「さぁ、いよいよ最後の発表となります! 今年、最も活躍した男性アイドルユニットに贈られる『ルミナス賞』。栄冠を手にしたのは…………」
一瞬の静寂。
そして――
「CROWN²の二人です!!!!」
会場が割れんばかりの歓声に包まれる。
名前を呼ばれ、CROWN²の二人が席を立った。
完璧な笑顔を浮かべ、客席に向かって手を振る皇。
その隣に立つのは――旺司。
かつて眼鏡をかけ、長い髪を一つに結び、カメラを手にしていた青年と同一人物とは思えない。
今の彼は、まさに王子様そのものだった。
「もはや説明不要でしょう! デビュー以来、数々の記録を塗り替え続ける絶対王者――CROWN²!」
「きゃあああああああ!!」
会場中から悲鳴にも似た歓声が上がる。
皇はその声に応えるように、余裕のある笑みを浮かべながら手を振った。
その隣で旺司は客席を見渡し、ふっと微笑む。
そして――投げキッス。
「きゃああああああああああ!!」
さらに大きな歓声が会場を揺らした。
そんな二人は、誰が見ても完璧なトップアイドルだった。
ところが――
CMに入った瞬間。
「旺司」
「ん?」
「お前、今日このあと何する?」
「帰る」
「知ってる。そのあと」
「推しの深夜ラジオ聞く」
「お前、ほんっと変わらねぇな」
皇は呆れたように笑いながら、隣に座る相棒を見る。
華やかな衣装。
完璧に整えられた髪。
少し微笑むだけで、客席から悲鳴が上がる顔。
今では誰もが知るトップアイドル。
――なのに。
旺司は衣装のポケットに手を入れると、何かを取り出そうとした。
その動きを見た皇は、すぐさま手首を掴む。
「待て」
「何?」
「今、眼鏡出そうとしただろ」
「CM中だからいいだろ」
「よくねぇよ。まだカメラ回ってる」
「見えにくい」
「コンタクト入ってんだろ!」
「目が疲れた」
「あとちょっと我慢しろ!」
旺司は不満そうに皇を見る。
皇はそんな相棒を見ながら、小さく笑った。
本当に、変わらない。
何年経っても。
どれだけ有名になっても。
こいつは、あの頃のままだ。
――こいつに会えたことが、俺の芸能界人生で一番大きかったのかもしれない。
もし、あの日。
俺があの場所に行かなかったら。
もし、こいつがカメラを持っていなかったら。
俺たちはきっと、ここにはいなかった。
皇はステージの向こうに広がる、眩しい光を見つめる。
あの日の俺は、まだ知らなかった。
眼鏡をかけ、長い髪を一つに結び、
俺ではなく、別の誰かを夢中で追いかけていたあいつが――
いつか俺の隣で、
同じ光を浴びることになるなんて。




