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「転生したら」と言ってみたいがために俺は異世界転生の方法を本気で探します  作者: 成乃 和幸


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第五話 異世界転生への道しるべ

何度か繰り返していると、壁、床を少しずつすり抜けるようになってきた。ここからは、更に早く繰り返す。すると、床がすり抜け、俺たちは完全に異空間に行った。画面はちかちかとしている。これも昨日ぶりだな!


「来た来た! これだよこれ!」


「このあと、どうすればいいんです?」


「VRゴーグルを外せば異世界に行ってるってわけ!」


 俺たちはそわそわしながら「せーの」の合図でVRゴーグルを外した。

 視界に入ってきたのは、夢で見たのと同じような、中世ヨーロッパ風の町。雲が少ししかない青い空。そう、俺たちは異世界に来ることができたんだ。


「キター!! エルメリアン、琴音! 俺はついにやり遂げた」


 俺は思いっきり空気を吸って、「転生したら」と言おうとしていた。だが、そんなときに俺は左肩あたりから違和感を感じた。ソフトタッチでどこかくすぐったい。左を向くと、そこには琴音がいた。同時に、向こうには見覚えのあるごみ屋敷――俺の部屋だ。


「言いにくいんだけどね、まだ現実だよ。天翔はこれを見てただけで」


 琴音が指をさしたところを向くと、俺の正面にある異世界ポスターがこんにちはしてきた。


「……」


 俺は、椅子に座ったまま机におでこを突っ伏した。


「トランスリアさん、今回は失敗でしたけど、次こそはきっと成功です」


「そ、そう?」


「そーだよ、天翔。まだまだ、私たちの物語は始まったばかりなのだよワトソンくん」


 ワトソンくん……? それって、俺が優秀ってこと? 天才ってこと? いや、待てよ。ホームズじゃなくて? ワトソンって助手だよな?


「俺は琴音の助手じゃねぇ!」


 琴音のおでこをコツン、とデコピンをした。


「だが、確かに! 俺は天才! まだまだ方法はあるっ!」


 今の時間は午後八時。そろそろ解散しないといけないな。いくら琴音とはいえ女子をこんな時間まで誰もいない部屋にいさせるわけにはいかない。


「そうそう、じゃあ私はそろそろ帰るね」


 玄関に行くと、琴音が靴を履き始める。


「エルメリアンも気を付けて帰れよ」


「僕、家ないんですよね」


 俺は「うんうん」とうなずいた。だが、耳に入ってきた言葉は俺の想像とは違うものだった。


「え、? 今なんて?」


「家、ないんです。なにせ、昨日転移してきたので」


 考えてもいなかった。そもそも、異世界モノの主人公って住む場所どうしてるんだ? 


「聞きたいことはたくさんあるけど、まあとりあえず俺んち泊ってく?」


 言ったあとに気づいたんだが、これって夜の街に現れる現代モンスターナンパ男じゃないか?


「ありがとうございます!」


 許可したのはいいけど、俺んちベッド一つしかねぇぞ……。


「ええー! いいなぁ。私も天翔と一緒に暮らしたい」


 玄関には、まだ琴音がいた。


「琴音には親がいるだろ。堪能しとけ」


 ほぼ無理やり琴音を外に押し出した。女性の体って案外ぷにっとしてんだな。太ってるとかじゃなくて。


こうして、俺と異世界人エルメリアンは一緒に住むことになった。こんなの日本中、いや、世界中を探しても俺だけだろう。


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