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砕け散った赤い宝玉を握りしめていたのは――他でもない、クロだった。




重苦しい空気が大広間を凍り付かせる。


すべての視線が一斉に彼に注がれた。




「お、俺が……やったのか?」


クロは血に滲む自分の手を呆然と見つめた。




――場面は数分前に遡る。




クロの身体は震え、足は地面に縫い付けられたように動かない。


逃げたい。ただ逃げてしまいたい。


しかし、その目に飛び込んできたのは――命を賭して人々を守ろうとする二人のS級ハンターの姿だった。




その瞬間、クロの胸に新たな炎が灯る。




「彼らにできるなら……俺だって、何かをやらなきゃ。


一度でいい、たった一度でいい……俺も挑まなくちゃ!」




その決意が、クロを突き動かした。


皆が躊躇する中、ただ一人――死を呼ぶ宝玉を砕いたのは、クロだった。




――現在。




溶岩の力を操るS級ハンターは、全身血だらけになりながらも大笑いし、クロの背中を力強く叩いた。


「よくやったな、小僧!」




痛みに膝をついたクロだったが、その言葉に胸が熱く震えた。




生き残った人々は、恐怖に縛られていたはずの心を解き放ち、次々に歓声を上げ始める。




歓声は涙や荒い息遣いと混ざり、大広間を揺るがした。


群衆の一人が叫ぶ。


「あれはクロだ! あの才能試験に出場していたクロだ!」




歓声は波のように広がっていく。




「クロ! クロ! クロ!」




クロは戸惑い、目を見開いた。


「俺が……認められている……?」


頬を赤らめ、ぎこちなく笑みを浮かべながら、両手を高く掲げて皆に落ち着くよう合図する。




その時――遠くに光の門が開いた。


そこから階段が現れ、上方へと続いている。


人々は一人、また一人とそこを通り抜け、外の世界へと送り出されていった。


だが出口はそれぞれ異なり、皆は違う場所へと飛ばされる。




クロが目を開くと、そこは荒れ果てた鉱山の入口だった。


彼が登録した任務は採掘調査にすぎなかった。


だが今、彼が体験したものは――まるで別次元の戦場だった。




ほどなくして、サイレンが鳴り響く。


警察、救急隊、治安部隊がなだれ込み、負傷者を救助し、死者には白布がかけられる。


そこには重苦しい悲しみが漂っていた。


今回の事件はあまりにも多くの犠牲を出した――未曾有の大惨事だった。




クロはまだ呆然としていたが、すぐに押し寄せたのは大量の記者たちだった。


カメラ、フラッシュ、突き出されるマイク。


矢継ぎ早に投げかけられる質問。




「あなたがあの怪物を倒したのですか?」


「宝玉を砕いた瞬間、どんな気持ちでしたか?」


「戦いの詳細を教えてください!」


「これは事前に計画していたことですか?」




クロは真っ赤な顔で半歩後ずさり、狼狽する。


心の中で呟いた。




「俺……ただ拳を一発叩き込んだだけなのに……なんでこんな大事に……?」




だが、人々の目は違っていた。


彼を見つめるその瞳には――尊敬と希望が宿っていた。

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