創造者
緑はエリオットの発言に心底驚いた。
どこからどう見ても横に座っている老人が神様なんて到底信じられるはずがなかった。
「本当に久しいね。また君とこうして会うことになるなんてね。」
「ふっ、分かっていたでしょうに。」
「ハハハ。そうだね。」
二人の会話はまるで旧友にでも再会したような雰囲気だった。
もしかしたら、これで全てが丸く収まるのではないだろうか、と緑は内心考えていた。
「ところで、私の天使たちをまた随分酷い目にあわせてくれたようだね。」
「ええ、当然です。降りかかる火の粉は払わないと。」
「しかも今回はまた昔とは違う仲間を連れているじゃないか――彼かな?私の邪魔をしているのは。」
その瞬間、緑を凄まじい寒気が全身を包むように覆っていった。
それは極寒の地に突然、放り出されたような絶対的な恐怖だった。
「……貴方に一つお訊きしたいことがある。」
その絶対的なオーラにもエリオットは表情一つ変えずに神に問いかけた。
「なぜ、こんなことを続けているのか。私は貴方が戯れでこんなことをしているようには思えない。その真意を聞かせてもらいたい。」
「それは――私が創造者だからだよ。」
神は穏やかな表情を保ったまま、そう答えた。
「創造者……ですか。」
「そうだ。人間を創りだしたのは私だ。だからそれをどうしようと私の勝手だ――という理由では満足頂けないかな?」
少し悪戯っ子のような顔をして答える神ネメシスに対してエリオットは険しい表情のまま更に訊ねた。
「なぜご自分で生み出しておきながら滅ぼそうとするのか、私には理解できません。明確な理由をお聞きせねば私は神への反逆者となるしかありません。」
エリオットの意思は固い。
もしも納得出来ない回答ならば迷わず神にも拳を上げるだろう。
「そうですね、一言で言うならば人間の放漫なところが私は我慢ならないのです。」
「確かにそうかもしれない。だけど、それが人間でもある。貴方は何故人間を創り出したのですか?」
その問いかけに神、ネメシスは少し考える素振りを見せた。
「私はね素晴らしき人間の世界を望んでいたんだ。だが人間たちは己の欲望に身を委ね、争いを繰り返した。君たち黄金の世代には私たちと近しい力を与えた。だが、君たちは過信に溺れ神をも敵に回した。」
その答えにエリオットは何も言い返すことが出来ない。
「そして銀の世代や現在の銅の世代の人間たちは、更に醜くなった。今となっては君ら黄金の世代の人間の方がよっぽど私が描く人間像に近かったのかもしれない。」
神ネメシスは、一つ大きくため息を吐いた。
それから、エリオットの顔を眺めるように見つめながら言った。
「この世にいる人間の中には地獄のような環境に身を置く者も多数存在する。産まれてこなければ良かったと思う者さえいる状況だ。そんな世界を一旦リセットし、新たな世界を創り続けること、それこそが私の真意だ。」




