神の本意
緑は神ネメシスの発言に衝撃を受けた。
確かにネメシスが言っていることは事実だろう。
自分のように幸せな生活を送っている者とは正反対に苦しんでいる人間がこの世にたくさんいるという事実も知っている。
「だからといって、ゲームみたいにリセットなんて間違っている。」
緑は憤りを隠すことが出来なかった。
「そうかね?確かに君ら人間にとっては過酷な事態かもしれない。だが、生き残りさえすれば君たち人間が欲して止まない不老不死という肉体を手に入れることが出来るのだよ、彼みたいに。」
緑はエリオットを見た。
不老不死、そう言われて納得がいった。
そもそも、そうでなければエリオットが遥か昔から生きていられるはずもない。
「神よ。全ての人間がそんなことを望んでいるのではない。中にはそれを望む人間がいただろうが、人間の生き方なんて人それぞれなんだ。我々を創った貴方が分からないはずはない。」
「まあ、そうだろうね。だが私は決めたんだよ。生き残った者に不死を与え、今後の人間たちの行く末を見てもらおうとね。君の率直な意見を聞きたいね。どうなんだい、人間に未来はあるのかね?」
そう問われたエリオットは、口元に薄く笑みを浮かべた。
「当然、ありますよ。貴方が仰ったように、どうしようもないところも人間にはあります。だが、それ以上に希望に満ち溢れています。」
「そうか……だが私の決定が覆らないということを君は分かっているんだろ。」
エリオットは神との会話をどこか楽しんでいるように感じる節があった。
この絶望的な状況にも関わらずだ。
「ええ。理解しています。だから私は貴方を倒すつもりです。」
「ふっ、君はなかなか芝居が上手だな。役者にでもなれば良かったのではないかな。」
二人の間の空気がガラッと変わったことに緑は気づいていた。
それは息を吸うのも苦しくなるような緊迫した空気だった。
「実は少々役者稼業もやったことがありまして。」
こんな状況でもエリオットにはどこか余裕を感じた。
「ところで一つお訊ねしておきたいことがありまして。」
「何かね?」
「もし私が神である貴方を葬った場合、この世界は一体どうなってしまうのでしょうか?やはり消えてしまうのですかな?」
神ネメシスもエリオット同様、愉しげに彼の話を聞いている様子であった。
「そんなことは私にも分からんよ。だが、心配しなくてもいい。君に私は――倒せない。」
その言葉を発した瞬間だった。
二人を取り巻く空気が先ほどよりも、物凄い勢いで激しく渦を巻いた様に流れた。
その圧倒的空気感に緑は完全に固まってしまった。
「その命、神殺しとなって私が戴く!!」




