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第1話

 後書きに登場人物の詳細を書きます。

 肩からぶら下げた『6.8mmMASADA』突撃銃が、歩を進める度にカチャカチャと鳴る。胴回りの装備と擦れ合うからだ。

 一ノ瀬優は自分の背丈以上はある塹壕を歩いていた。

 目的は自分の新たな上官を探す為である。

 遠路遥々アメリカからヨーロッパに渡って来たと言うのに、上官は新たな部下を出迎えもせずに最前線で戦っているそうだ。

 上官の名前は的場薫と言って、狙撃の名手と聞いている。特にカウンタースナイピングが得意で、今までの確認戦果三百の内、三十は敵狙撃手らしい。敵からは“死線のアウトロー”と恐れられているとか。“視線”と“死線”を掛けているのだろう。“視られたら死ぬぞ”的な意味で。何にせよ、中二病臭い。

 本来なら勲章を授与しても構わない程の戦果を上げているにも関わらず、いまだに前線を離れないのは本人立っての希望と、本人の素性から名前を公に出来ないと上層部が判断してのことだろう。

 的場薫の所属する部隊、『ワイルドバンチ』は所謂“懲罰部隊”と言われている。

 簡単に説明すれば、軍規や法律を犯した犯罪者で組織された部隊で、戦後の特赦を掛けて戦っている兵士がほとんどだ。かくいう優も、無能な上官を叩きのめしたという前歴を持っている。故に懲罰部隊に配備されるのだろう。

 話は逸れたが、的場薫は懲罰部隊に配備される程の何らかの犯罪を犯した軍人という事だ。

 さて、曲がり角の折り重なった塹壕も、徐々に血生臭くなってきた。

 辺りで鮮血や汚物、時には誰かが落とした内臓が見受けられるようになってきた。

 そしてこの音と声。

 懐かしの銃声と化け物の鳴き声だ。


「ゾンビ、グール、リビングデッド…………」


 優は舌舐めずりをすると、『6.8mmMASADA』のセレクターをセーフティからフルオートへ変更する。

 ここまで来れば、いや、こんな所まで来なくてもずっと臭っている。

 血と臓物と、硝煙の臭い。

 優は狭い塹壕を駆け出した。

 そして一息に飛び上がり驚異的な跳躍力で塹壕を飛び出すと、最初に目が合った敵に『6.8mm対不死人(アンデッド)弾』を数発お見舞いした。敵はゾンビだったらしく、弾丸の効果で全身を毛細血管のように走る『不死人(アンデッド)因子』が切断されて事切れた。


「ひとつ!」


 先程までの作業が空中での事。

 着地した優は、こちらに気付いて襲ってくるゾンビに向け横一文字に『対不死人弾』を発射した。面白いように倒れてくれる。


「ふたつ、みっつ、よっつ、いつつ」


 これで周囲の脅威は排除した。今までのはスコープを覗かず、腰だめで行った近接戦闘用の射撃だ。

 この『6.8mmMASADA』は、中距離戦闘にも対応出来る。

 優は直ぐ様敵の位置を把握し、バレル上部に乗せた四倍率のACOGスコープを覗き込み、約五十メートル離れた場所でさ迷っているゾンビを狙撃さながらに銃撃した。と、そこで残弾が無くなり、優はライフルから空のマガジンを排出しながら、新品のマガジンを左手に召喚して再びライフルに叩き込んだ。


「良いねぇ。アメリカもさながらだったが、こっちも良い感じに地獄だぜ!」


 優は不適な笑みを浮かべ、銃撃を再開する。

 目に見える化け物を片っ端から撃破し、注意をこちらへ集めて行く。

 注意は集められるほど良い。こちらから探さなくても、敵が勝手に的になりに出て来てくれるからだ。

 ここまでは順調に敵勢力を蹴散らしていた。赴任早々、華々しい戦果を飾っている事だろう。

 しかし、敵も馬鹿では無い。

 意思を持たない“死体”は兎も角、冷静な判断力を持つ“ゴブリン”や“オーク”といった化け物が、自軍の塹壕から軽機関銃や重機関銃で反撃してくる。

 優は一度大きく跳躍し、塹壕の中へ逃げ込んだ。軽装備で機関銃と張り合う程の馬鹿では無い。と、そこで友軍の日本人と鉢合わせした。


「何だお前は!?」


 友軍は心底驚いたであろう。

 塹壕で身を隠し、敵の攻撃に備えていた所に優が降ってきたのだ。その反応は間違いでは無い。

 優は華麗に着地すると、背筋を伸ばし軍人らしく敬礼した。


「本日付けで第43銃器化混成連隊『ワイルドバンチ』に配属となりました、一ノ瀬優伍長であります。つかぬことをお伺いしますが、的場薫少尉はどちらへおいででしょうか?」


 兵士は顔を見合わせると、何やら得心したようにニヤリと笑った。


「あんたがあいつの下に配属になる新人か」


「運の無い奴だな」


 兵士は口々に侮蔑の言葉を口にする。

 優は別段、怒りを覚えたりはしなかったが、疑問が一つあった。


「的場少尉は狙撃のプロフェッショナルと聞きますが?」


 すると兵士の一人が、物々しい雰囲気でこう言った。


「奴は“死神”に愛されている…………」


「は?」


 意味の分からない発言に小首を傾げると、また違う兵士が西の方角を指差した。


「さっき緊急呼集が掛かった。『ガンスリンガー』なら、全員あっちに集まってるよ」


 疑問は残るが必要な情報は得た。

 優は礼を言うと、目的地を目指して塹壕の中を駆け出した。

・一ノ瀬優(イチノセ・スグル)

年齢:17歳

身長:168cm

体重:52Kg

出身国:日本

階級:伍長

配属:第43銃器化混成連隊『ワイルドバンチ』

適性銃器:6.8mmMASADA(Magpul MASADA)

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