第2話
読んでくれているそこのあなた!
最近、猛暑が続いておりますので熱中症等には注意して下さい。
健康が一番ですからね。
幾つもの曲がり角を曲がって辿り着いた先は、野営地だった。
そこでは五十名程の兵士が整列し佇んでいた。ほとんどが十代後半から二十代前半なところを見ると、全員『ガンスリンガー』のようだ。
『ガンスリンガー』とは、科学と神秘の粋を集めて造られた銃器『適性銃器』を体に埋め込んだ兵士を差す言葉だ。一般的に『ガンスリンガー』となった兵士は、身体能力と反射神経の向上が見受けられるようになる。そして特筆すべきは、自身の『適性銃器』に合う銃弾ならマガジンごと生産する事が出来るという点だ。
優も『ガンスリンガー』であり、『適性銃器』は『6.8mmMASADA』突撃銃である。先程のアクロバティックな戦闘は、『ガンスリンガー』の恩恵があっての事である。
さて、優は五十名の『ガンスリンガー』の中から自分の上官を見付けなければならない。まさか一人一人に尋ねて回るわけにも行かないので、その場で敬礼し声を張り上げる事にした。
「本日付けで第43銃器化混成連隊『ワイルドバンチ』に配属となった、一ノ瀬優伍長であります! 的場薫少尉は居られますでしょうか?」
全員の視線が優に突き刺さる。
五十名の視線ともなると、思わず身動ぎしてしまう。
そんな中、列の一番端から姿を現した青年があった。日本人にしては彫りの深い顔立ちだが優男という印象を受け、紅い瞳が特徴的な青年だった。身長もそれほど高くは無く、肩から『適性銃器』とは思えない『MP7』をぶら下げていた。
「自分が、的場薫少尉だ」
「一ノ瀬優伍長であります」
優は改めて敬礼をする。
まさか、この優男が“死線のアウトロー”だとは。迫力は無いし、てっきり名前から女だとばかり思っていた。
「男だと思っていたが、まさか女の子だとはな」
その言い草に頭に来た優は、突撃銃の銃口を即座に持ち上げた。
「俺を女扱いするな」
しかし、的場少尉はたじろぐ様子一つ見せず、人差し指で銃口を退けると「それは無理な相談だが、善処はしよう」と言った。
「貴様ら何をしている!」
そんな二人の一触即発な雰囲気を打破するように怒声を上げたのは、ウェーブした黒髪に鷹のように鋭い目付きをした女性士官だった。階級章を見る限り、大尉のようだ。
「ただ親睦を深めていただけですよ、雨竜大尉」
「それは結構だが、時と場所をわきまえろ。今から連隊長より作戦の詳細が知らされる。貴様らは大人しく列に並んでいろ」
「了解」
的場少尉は雨竜大尉と呼ばれる女性士官に簡素な敬礼をすると、元居た場所に戻って行く。「君も来なさい」と優も少尉の後に続いた。
整列して待つこと三十分程。
士官が詰め寄る仮設テントの幕が開き、白髪なれどまだ若い将校が姿を現した。「あれが『ワイルドバンチ』の連隊長、咲浪霧也大佐だ」と的場少尉が小声で教えてくれた。
「さて諸君。知っての通りアメリカ大陸は奪還され、掃討戦に移行されたそうだ」
咲浪霧也大佐は、仰々しく言葉を述べる。
「それに比べて我々は、毎日毎日塹壕の中に隠れては、敵のゾンビを狩る事しかしていない。これではいつまで経ってもヨーロッパ解放には届くまい。これは由々しき事態である。諸君らもそろそろ塹壕での戦闘も飽きてきた頃合いだろう。そろそろ大規模攻勢に転じても良い頃合いと、私は思っている」
大佐の言葉に全員がざわめき始めた。
大規模攻勢を匂わせるどころか口にしたのだ。何かしらの勝算があっての発言だろう。
「先程、上層部から通達があり、戦力が整い次第、歩兵の機動力と戦車の火力を利用した電撃戦を敢行せよとの事だ。しかし、敵の守りは強固な上に隙が無く、とてもじゃ無いが歩兵の付け入る隙など無い。では、どうするか。そこで我々『ワイルドバンチ』の出番である」
咲浪大佐は不適な笑みを浮かべた。
あの笑い方は既視感がある。悪党が何か悪巧みをする時の笑みだ。
「我々『ワイルドバンチ』は敵の背後を取るべく海上を進み、ビーチから進軍する事となった。喜べ諸君、これで塹壕からおさらばだ」
成る程、真正面から塹壕を破れないならば、側面から攻撃を加え敵の背後を取るのは常套手段だ。
「作戦は既に立ててある。後は諸君らを船で輸送すれば済むだけの話だ。では諸君、移動の準備をしてくれたまえ。解散!」
最後に全員が敬礼して、作戦会議は終了となった。
この時点で優は疑念を持つべきであった。詳細な戦力がまるっきり伝えられなかった事や、それに対する質問を許さなかった事に対して疑問を呈すべきだった。
しかし、この時の優は、新たな戦場に向かえる事に喜びを感じ、そんな疑問など持つ事は無かった。
・的場薫
年齢:17歳
身長:175cm
体重:58Kg
出身国:日本
階級:少尉
所属:第43銃器化混成連隊『ワイルドバンチ』
適性銃器:M1894レバーアクションライフル




