24.大団円
最終話です。
ここまでお付き合いくださいまして、ありがとうございました。
あれから数日が経った。
白遠の病院のニュースもだいぶ落ち着いてきて、今は千田の家が買収に取り掛かっている最中だそうだ。
やるときは徹底的にやるアイツ等らしいが・・・まぁ、何も言うまい。
相変らず、俺と文音さんは放課後デートをしている。でも今は特別に使わせてもらっていた暗黒同好会の通路はもう使っていない。もう危険はないだろうし。
というわけで、俺が毎日放課後にヘルシー女学園に行くようになっている。
「あら、最首先生」
「・・・あぁ、学園長」
「今日も宗島先生とデートかしら。ふふ、今日はクラブハウスの屋上にのぼってみると良いかもしれませんよ?」
にっこりと笑ってそうデートの場所を薦めてくれた学園長に、俺は素直に頷いた。
「じゃあ、ぜひ、行かせていただきます」
「あらまぁ、まぁまぁ。じゃあ、このマスターキーを使って良いですからね。これは最首先生がお持ちくださいな。
元々ヘルシー女学園にも英語の補助教員として来ていただいていますし、ずっと渡そうと思っていたんですよ」
マスターか。ということは、俺ってカロリー学院とヘルシー女学園の両方を所持してることになるのか・・・良いのか?
「あの、良いんでしょうか?」
「他の兼任の先生にもお渡ししてあるので、気になさらないで?」
なるほど。まぁ、そういうことなら。
「では、ありがたく・・・」
「うふふ・・・仲良くね?」
「・・・・・・は、はい・・・」
う。その暖かい視線がいたたまれないです・・・。
学園長に暖かいまなざしで見送られ――だから、いたたまれないんですってば!――日本文化部が活動している和室まで文音さんを迎えに行く。
***
「弓弦さん」
「文音さん、お待たせしました」
日本文化部はすでに活動は終わっていて、生徒達は帰った後だった。ヘルシー暗黒同好会の生徒も今は傍についていない。
純粋に護衛が数人ついているだけの状態、つまり、文音さんにとっての日常が戻ってきたわけだ。
「今日は、どちらに?」
「たまには外で、と思ったんですけどね。・・・学園長がここの屋上に行ってみると良いとおっしゃっていたので、行ってみませんか?」
一応、外のプランもあることを告げつつ、学園長のことを話せば、文音さんはそちらに興味を持ったようだった。
「じゃあ、屋上に、行ってみましょうか。学園長がそのようなことをおっしゃるのは珍しいですし」
だよなー・・・こういうことに口出しするような人には見えないし。俺達に見せたいものでもあるんだろうか?
とりあえず、最近ようやく慣れてきた護衛がいる状態のまま文音さんの手を取り、そのまま屋上に通じているエレベーターに乗る。――黒服集団が乗り込むと圧力半端ないけど、まぁ、気にしない・・・。
そして、屋上についてドアを開けた瞬間にその疑問は氷解した。
「ああ・・・きれいですねぇ」
そうとしか言えなかった。
「ええ、とても・・・」
文音さんも同じ気持ちなのだろう。その景色から視線を逸らすことなく頷いた。
屋上に立つ俺達の前には、富士山とスカイツリーと月が絶妙なバランスで配置されて見えた。
たぶん、教室棟や教職員の寮の屋上からでは見られない。当然、カロリー学院から見てもずれているハズだ。
学園長、ナイス絶景ポイントです。・・・月だっていつも同じ場所に出るわけじゃないし、この奇跡のような景色を文音さんと2人で見ることができたのは、一生の思い出になるだろう。
「・・・文音さん」
「はい」
「・・・婚姻届、いつ貰いに行きます?」
「ふえぇっ?!」
声ひっくり返ってますが、そんなに驚くことですか?
最初、文音さんはこれくらい強引でしたよ?まぁ、やるとやられるとでは大違いか。
「あ、でも、うちの両親は今海外なんで、文音さんを紹介できないんですよ。そのうち呼び寄せますから、それまでは入籍は待ってくださいね?」
「え、え?・・・ええ!?」
あ、戸惑ってる文音さんも可愛らしいですね。今、俺、プロポーズしてるんですよー?こんなきれいな景色を見ながらって、いかにもじゃないですか。
学園長が仲良くね、と言ったのは間違いなくここでプロポーズしろってことですよね。ええ、そうとらえましたよ、俺は。
「文音さん、ダメですか?」
「―――っ、い、いいえ!ダメではありませんわ!その・・・ゆ、弓弦さんが良いのでしたら、私は、いつでも!」
「だとしたら入り婿ですよねー、文音さん一人っ子ですし。俺もですけど、継ぐ家もなにもないので、気にしないでください」
「あ、え・・・あ、は、はい」
「―――それとも、しばらくは2人きりの時間でも作ります?」
「―――っっ!!!!」
おー、瞬間湯沸かし器のごとく湯気でそうなくらい真っ赤だ。でも、結構本気なんだけど、俺。
最初からあの家暮らしたくない。だって、俺ド庶民だし。いきなりあの生活は嫌だ。
これ、少し押せば意見通りそうじゃないか?家事は全く問題ないし、職員寮出たら住宅手当出るし、ある程度良い物件に住めると思うんだよなー。
あー、やっぱ先手必勝、初っ端に主導権握っといて良かった。これからも文音さんに振り回されないように努力しなければ!
学園長に感謝だ。後で、お礼を言っておこう。
「文音さん」
「ひゃぃっ!」
あ、噛みましたね?
「・・・ひゃいって可愛い・・・」
あ、つい本音が漏れた。
「ゆ、弓弦さんっ!!」
「ふふ、すみません、つい本音が。・・・で、ですね。お返事は?」
向かい合って、文音さんの両手を握って訊ねる。
じっと文音さんを見つめて、返事を促す。答えはイエスかはいでどうぞって感じだ。
「―――わ、私、家事は全く・・・」
「俺が出来ますから、問題ないですね」
「そ、その・・・ふ、2人きりって、護衛は・・・」
「護衛は近くに住んでもらったらどうです?宗島家ならできるでしょう?」
お義父さんにはそれで納得してもらおう。まぁ、有無を言わさず断行するけど。
「文音さんは嫌ですか?・・・それなら、やめますが・・・」
とっても残念そうに、悲しげに、ここポイントだ。
「わ、私、嫌なわけありませんわ!!!」
よし!言質とった!
「じゃあ、良いですよね?もちろん、今すぐじゃないですし、お義父さんにも許可を取りますから」
文音さんが気にしてるのはそこだろうし。まぁ、お義母さんに後方射撃をお願いすれば、お義父さんもきっと快諾してくれるはずだ。つか、させる。
「・・・その、あの・・・よろしくお願いします・・・」
いつ見てもきれいなお辞儀で、文音さんは俺の申し出を受けてくれた。
色々とあったが、これでハッピーエンドだ。
完
―鉄子とガラスのハートを持つ三十路男―
―姫と女子力MAXの男―
に続きまして、このシリーズの中で一番まともなカップルになるだろう、
―婚活女子と影の薄い男―
を連載開始する予定です。
次作も読んでやるぜ!という心広い方がいらっしゃいましたら、どうぞよろしくお願いいたします。




