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12.初めての2人きり

今回は甘めに。

これで堂々と恋愛小説だと言い張れる・・・?


――side 弓弦


「そうですか、岸が動いてくれたんですか」


 さっそく奴等は暗黒同好会の餌食(えじき)になったらしい。・・・ふふん、イイ気味だ。なんて思う俺は嫌な奴かもな。


「ええ。ですが、一緒に護衛も置いてきてしまったので・・・連絡しなくてはいけませんわ」


「あー・・・じゃあ、カロリー学院の校門前で待っていてもらってはどうですか?」


「え?」


「それまでは、頼りにならないかもしれませんが、俺が護りますよ」


 せっかくの2人っきりだしな。この時間が少しでも長くなれば良い。・・・いつも護衛が張り付いてるからなぁ・・・壁と思えって言われても俺は無理だし。


「―――っ、ゆ、弓弦さんが、ま、護ってくださいますの!?」


「ええ、責任を持って」


 まぁ、実際は文音さんの方が強い気もするけど。力だけなら男の俺が勝っていると思いたい。切実(せつじつ)に。


 文音さんはいそいそと携帯電話を取り出すと、護衛に確認の連絡を入れる。


「あ、私です。・・・ええ、今はカロリー学院に来てますの。そう、秘密の通路を使わせて頂いて・・・今は弓弦さんと一緒ですから大丈夫ですわ。カロリー学院の校門前で待っていてくださる?そこまでは弓弦さんと離れないようにしますから、ね?

 ・・・え?ええ。ええ!?・・・では、学園の外に出て頂いて。私は用事があってご一緒できませんとお伝えしてちょうだい」


 ん?何か問題でもあったのか?・・・たぶん、奴等だとは思うけど。


 通話を終えた文音さんが振り返るのと同時に俺は訊ねる。


「どうかしました?」


「ええ。あのお3方が・・・岸さんに言われたことにショックを受けて今の今まで呆然としていらしたようなんですけれど、先程の私がかけた電話の着信音で正気にかえられて、私はどこだと大騒ぎしているようなので、追い出すように言っておきましたわ」


 なるほどなー・・・うまく()かれたことに気付いたのか。


「それはそれは・・・もうこの手は使えませんね」


「そうですわね。でも、暗黒同好会もその辺りはわかっていると思いますわ」


 確かに。・・・っていうか、このまま奴等のことは暗黒同好会に任せておけば良いような気がしてきた。


 ヘタに干渉せず放置しておけば勝手に暗黒が潰してくれそうなんだけどなー・・・飽きなければ。暗黒同好会だってコレは敵にすらならないと判断したら手を引くだろうし・・・。


「うーん・・・いつまで暗黒同好会が妨害してくれるかが問題ですよね。さすがに3ヶ月間まるまる彼等がターゲットとして暗黒同好会に興味をもたれるかっていうと・・・」


「無理な気がしますわ・・・」


 底が知れてるもんなー・・・奴等は。ただの甘やかされたお坊ちゃんとエリート意識の高い頭でっかちだろ?早々に飽きられるんじゃないだろうか。


「まぁ、それまでに奴等が疲れて諦めてくれれば良いんですけどね」


「それは私も思いましたわ・・・でも・・・」


 そうそう。執念だけは人一倍、とかありそうなんだよな・・・特に東横院(とうよこいん)とか?


「文音さん、それは今考えても仕方ないですよ。とりあえず・・・」


 俺は話題を変えるようにそう言って、文音さんの手を取って指を(から)める。うん。いわゆる恋人つなぎってヤツだな。


「ゆ、ゆゆゆ、弓弦、さん!?」


 おー・・・文音さんの顔が真っ赤になった。


 ま、こういうことに関しては男の方が主導権を握りたいよなー・・・じゃないと、この人何やらかすかわからんし。


 今はまだあの御曹司共の対応で手一杯のようだから突拍子もないことはしそうにないけど、余裕ができたら暴走しそうだもんなー。・・・その前に主導権は握っておこうと思うわけだ。


「この件が片付いた後の楽しいことでも考えませんか?」


「~~~っっ!!」


 更に真っ赤になった顔をうつむけ、文音さんはきゅ、と俺の手を握り返してくれた。それは、同意と取って良いのかなー・・・なんて聞いたら意地悪だな。


「というわけで、左手の薬指のサイズを教えてもらえませんか?」


「ふえ!?」


 サプライズなんて意味ないだろう。だってもう婚約してるってことになってるし。本当なら指輪が先なんだろうが。・・・というわけで、単刀直入に聞いてみた。


「婚約指輪ですよ。デザインはどのようなものが良いですか?どうせなら文音さんが好きなデザインの方が良いでしょう?石は?ダイヤモンドで良いですか?誕生石でもありますよね」


「え、あ、は、はぃっ!・・・あの、その・・・細いリングが、好きです。い、石は、ダイヤモンドが良いです・・・」


 矢継ぎ早に聞けば、文音さんは素直に答えてくれる。よし、この人には押せ押せが効果ありだな。


「サイズは?」


「きゅっ・・・9号です」


「じゃあ、この件が終わったら一緒に宝石店に見に行きましょう。予約して、9号の細いリングのダイヤモンドの指輪を用意してもらっておきますから」


「・・・ほ、本当に・・・プレゼントしていただけますの?」


 始めてのプレゼントが婚約指輪って・・・どんだけ急いでるんだろうなー、俺達。でもまぁ・・・。


「ええ、文音さんの持っている物と比べたら安物かもしれませんが」


「く、比べたりしませんわ!それに、私・・・だ、ダイヤモンドの指輪は持っていませんの・・・」


「は!?」


 誕生石だからてっきり持ってるものだと思ってたんだが・・・だって、ネックレスとかブレスレットをしているのは見たことがあるぞ?


「お、お母様が・・・いくら誕生石でも、ダイヤモンドの指輪は特別な意味を持つから買ってはいけませんって・・・」


 グッジョブです。文音さんのお母さん。


「なるほど、贈り手としては嬉しい情報ですね。・・・じゃあ、長く使えそうなものを選びましょうね」


「は、はい・・・そ、それにしても、私の誕生日、ご存知だったのですね?」


「あー・・・実は、理事長に聞きました。ほら、あの人全教職員のプロフィール頭に入っているでしょう?」


 そうなんだよ。まったく、どんな頭してるんだか。


「あぁ、そうでしたわね・・・あの方は本当に底が見えませんわ・・・普段は、その・・・理事長って感じはあまりしませんのに」


 文音さん、それは言ったらおしまいのような・・・。いや、さすが姫といったところか?あ、それも言ったらおしまいか・・・。


「あの人の才能って人を使うためって部分に特化してますよね・・・他人の才能を見出したり、プロフィール全把握したり」


 そう思ってみれば、あの御曹司共はカロリー学院にはそもそも入学出来なかったかもしれないな。あのレベルだったら世間では注目されても、この学院では普通の領域だ。


「ええ、本当に・・・見習うべきなのでしょうか」


「いや、文音さんはそこまで特化しなくても良いと思います・・・っていうか、これ以上特化しないでください」


 じゃないと、この人の暴走止められなくなりそうだし。責任もって面倒みると決めた以上は―――って、冬芽が手が掛からなくなったと思ったら文音さんの面倒みてるとか・・・どんだけ世話好きなんだ、俺は・・・。


「弓弦さんがそう仰るなら・・・今のままで頑張りますわ!」


 ・・・いや、姫のままで頑張らないでください。・・・と言っても意味ないか、自覚ないし。


「そうですね・・・今のままで頑張ってください・・・俺も出来る限りフォローしますから」


「わかりましたわ」


 途中甘い空気になったものの、結局こんな終わり方で初めての2人っきりの逢瀬は終わってしまった。


 とはいえ、カロリー学院の校門前で待っていた護衛に文音さんを引き渡すときに、恋人つなぎを外すのを渋っていた彼女を見る限り、少しは進展したと思っても良いんだろうか?


 文音さんは恋人という関係がよくわかっていないようだから、これからも少しずつ教えていかないといけないだろう。・・・あんな脅迫めいた告白をされるのはもうごめんだからな・・・。


意外と策士?な弓弦さんでした。

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