10錬金目、Cランク冒険者
「さてと、世間話は此くらいにして、それでは本題に入ろうか」
ゴクリとカイトのノドが鳴る。いよいよかと手の平に冷や汗が滲む。
目の前に《低級ポーション+イチゴ味》の小瓶を置かれたからには、何かこれを作ってはいけない理由でもあるのだろうか?
「いやぁ、これは素晴らしい逸品だね。これを我が冒険者ギルドへ定期的に卸させてくれないか?」
「えっ?」
「不躾な事だと重々承知してるが、この通りだ」
ドランがソファーから立ち上がると、地面に擦り付けるように土下座をした。
「頭を上げてください。少し驚いただけですから」
「済まない。冒険者ギルドに不快だと思ってると聞いたものでね。君は、あの勇者パーティーにいたのだろう?」
「えぇ、まぁもう抜けましたけど」
もう未練なんてない。風の噂だが、俺の抜けた後に新メンバーが加わったらしい。
噂によると盗賊系の派生職である追跡者だとか。トラップ解除や宝発見、斥候として優秀らしい。
「パーティー内で、酷い仕打ちを受け続けていたとか」
「はぁまぁ慣れてしまっていたというか。何時かは抜けようと思ってましたので、もう気になってませんね」
感謝してる部分もある。登録したばかりで、右も左も分からない俺を拾って貰った恩はある。
勇者シャイン達の戦い方を側で観察出来たし、俺の黄昏の糧になってくれた。
だから、もう未練はない。あれ以上いても何も得るものはなかったはずだ。
「冒険者ギルドは、パーティー内のイザコザには関与しないようにしている。だから、勇者パーティーメンバーに罰を与える事は出来ない。まぁ犯罪や窃盗等の犯罪を犯してる場合は違うがな」
「えぇ分かってます。それでこれを定期的に卸す事ですが、受けても構いません」
断る理由がない。これで定期的に金が入って来る訳だ。これで食い扶持には困らない。
「済まない。これがポーション買い取り書類だ。サインをしてもらえば、正式な指名クエストになる」
書類を見ると、普通の《低級ポーション》が銅貨3枚に対して《低級ポーション+》が銅貨5枚、《低級ポーション+イチゴ味》が銅貨7枚となっている。
妥当の額だろう。新人でも払えるような値段設定だ。
「分かった。これで良いか?」
「確かに。それとまだ冒険者は辞めてないんだよな?」
「あぁまだ冒険者もやってる事になってる」
冒険者ギルドのギルドカードを破棄しない限り冒険者のままだ。
「もしよろしかったら、ランクEからランクCに上げる事が出来るが、どうする?」
願ってもない提案だが、ランク二段階アップは中々ない。よっぽどギルドに貢献しないと二段階はないだろう。
「なーに、三年間も虐げられてきたんだ。お詫びとギルドマスター権限で上げさせもらう」
「なら、お願いします」
「任せとけ。俺は人を見る目は確かだと自負している。成る程、今日会って確信した。ルーが気に入る訳だ。お前さん、実は勇者よりも強いんじゃねぇか?」
ギクッと僅かに肩を揺らして動揺してしまうが、数秒しない内に冷静になった。
「何の事ですか?俺は錬金術師ですよ?強い訳ないですよ」
「何を言ってる。黄昏は錬金術師の最上職じゃねぇか」
バレてらっしゃる。もしかして、ルーシィがバラしたのか?
「悪いと思ったが【鑑定】してもらったぜ」
「なっ!」
まるで気付かなかった。【鑑定】は、生産職の十八番と呼ぶべき技能だ。
その逆も然別、【鑑定】の妨害も得意としている。それなのに気付かれずに【鑑定】をするとは、一体ドランは何者なんだ?
「驚いているな?ネタ張らしをすると、俺も生産職なんだわ。だから、他の生産職ギルドを裏で仲良くしてもらってる訳だ」
「よく冒険者ギルドのギルマスマスターになれましたね」
「そこは色々あるんだよ」
詮索するとヤバそうだ。
「他にも売りたい物あるか?」
「そうだな。これなんかどうだ?」
カイトは【収納魔法】から違う小瓶を取り出した。《低級ポーション》が緑色ならこちらは青色だ。
「これは《低級マナポーション+ブドウ味》だ。【鑑定】しても構わない」
《低級マナポーション+ブドウ味》
低級マナポーションより魔力を1.5倍回復する。ブドウというフルーツの味が付与されており、飲み易く調合されている。
「ほぉ、これは素晴らしい。流石は黄昏殿ですな」
「黄昏と呼ばれるのはあんまり慣れてなくて、出来れば名前でお願いします」
「謙遜も上手いようですな。カイト殿」
黄昏と呼ばれてもあんまり実感がわかない。それにそう呼ばれると目立ちそうだ。




