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血の継承【改訂版】  作者: Salhi smail
第三章 任務始動編

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形を成さないオーラ

訓練は、翌日には再開されなかった。


ラカンが最高司令部から戻ったのは、日が沈んで間もない頃だった。


一人で学院へ戻ってきた彼は、出ていったときよりもさらに口を閉ざしていた。


ヤザンは治療幕舎の近くで待っていた。


胸にはまだ包帯が巻かれている。背中の痛みを避けるため、立ち姿もわずかに傾いていた。


師の姿を見つけると、すぐに近づく。


「先生、何を聞かれたんですか?」


ラカンは歩みを止めなかった。


「街道で起きたことを、最初から最後までだ」


「ザランのことも話したんですか?」


その言葉で、ラカンの足が止まった。


ヤザンを見る。


次に、幕舎の入口から二人を見ていたマヤへ目を向けた。


奥の寝台では、シグランがこちらに背を向けて座っている。


「聞いたことは、すべて話した」


「じゃあ、ザランって何なんですか?」


「今はまだ話せない」


ヤザンが口を開きかける。


その前にラカンが続けた。


「答えを出せるだけの情報が揃えば話す。だが今、お前の頭を憶測で埋めても、身を守る役には立たない」


ヤザンは納得していなかった。


目を見れば分かる。


それでも、反論はしなかった。


ラカンは三人を見渡した。


「明日は訓練をしない」


マヤが顔を上げる。


シグランは動かなかった。


「その翌日もだ。治療師から指示を受けているはずだ。破った者は、俺が直接寝台へ戻す」


ヤザンが尋ねた。


「僕もですか?」


ラカンの目が、胸に巻かれた包帯へ落ちる。


「お前が最初だ」


そう言い残し、ラカンは立ち去った。


二日間。


与えられた休息は、それだけだった。


身体にとっては短く、記憶にとっては長い二日だった。


初日、ヤザンは自分が望んだ以上に治療師たちの監視下へ置かれた。


許可なく起き上がろうとするたび、治療師の手で寝台へ押し戻されるか、致命的な一撃の前に立ったからといって骨まで石になったわけではない、と叱られた。


そのたびに謝る。


しばらく大人しくする。


そして、また立とうとする。


マヤは自室へ戻ったが、両手首の包帯は外さなかった。


傷そのものは深くない。


だが、枷の感触が残るのに、傷口など必要なかった。


気づかないうちに指が手首へ伸びる。


一度擦り、それに気づくと慌てて手を引っ込めた。


シグランは、強制された分だけ治療を受けた。


座る。


首元を診せる。


薬と包帯を受け取る。


それだけ済ませると、すぐに出ていった。


調査についても、〈黒の帳〉の首領についても、何も尋ねなかった。


ヤザンやマヤへ近づくこともなかった。


ただ夜になると、訓練場に近い部屋の生徒たちは、木柱を殴る音を耳にした。


一度。


続けて、もう一度。


そして三度目。


叫び声はない。


炎も見えない。


ただ、そこにはいない何かを壊そうとする音だけが続いた。


三日目の朝。


ラカンは学院の裏手にある訓練場で、すでに三人を待っていた。


他の生徒の目が届きにくい場所だった。周囲には石柱が立ち、踏み固められた荒い地面が広がっている。


薄い雲が太陽の前を横切り、地面の影をゆっくりと動かしていた。


最初に訓練場の端へ着いたマヤが、ラカンを見て足を止める。


ヤザンも横から覗いた。


「先生が僕たちより先に来てる」


「見れば分かるわ」


「嫌な予感しかしない」


シグランは何も言わなかった。


二人の後ろに立ち、ラカンだけを見つめている。


ラカンが短く手を上げた。


三人が近づき、不揃いな一列に並ぶ。


ラカンは一人ずつ目を向けた。


それぞれが隠そうとしているものを、見落とさない。


ヤザンの服の下にある包帯。


マヤの両手首に残る痕。


シグランの首元に薄く残る赤み。


「今日行うのは、制限付きの訓練だ。治療師から許可されたのは軽い運動だけ。強い痛みが出たら、その時点で中止する」


ラカンは特にヤザンを見た。


「交渉は認めない」


ヤザンが頷く。


「分かりました」


「少ししたら交渉を始める本人の口から、もう一度聞きたい」


ヤザンは息を吐いた。


「交渉しません」


ラカンは続ける。


「今日は、攻撃の仕方を教えるつもりはない」


誰も口を挟まなかった。


「攻撃など簡単だ。怒りを力だと思い込み、前へ飛び出すだけなら、愚か者にもできる」


言葉が訓練場を横切った。


ラカンはシグランを見なかった。


だからこそ、その言葉はより深く彼へ届いた。


「街道で起きたことは、お前たちの弱点を一つ明らかにした。問題はケメンの量ではない。追い詰められたとき、お前たちは攻撃する方法は知っていたが、自分の身体を守る方法を知らなかった」


マヤが尋ねる。


「防御のオーラですか?」


「ああ」


ラカンは訓練場の中央へ移動した。


「オーラは、身体を飾るための光ではない。制御したケメンを、皮膚、筋肉、関節の上へ均等に巡らせる。安定していれば衝撃を弱められる。さらに高い段階へ進めば、攻撃が身体へ触れる前に止めることもできる」


視線が一瞬、ヤザンへ向いた。


「そして、オーラを作れない者は、別の方法で生き残るしかない」


ヤザンは顔を伏せなかった。


ラカンが説明を続ける。


「オーラの形成には四つの段階がある。呼吸。ケメンの源を捉えること。全身へ行き渡らせること。そして、形を保つことだ。力任せに引き出せば、オーラはお前たち自身の乱れを映す。どこか一か所へ集中させれば、他の部分が無防備になる」


片手を上げた。


最初は何も起きない。


やがて、ラカンの周囲の空気が静まった。


炎も、眩しい光も現れない。


肩、腕、胸へ沿うように、ほとんど見えない透明な膜が全身を覆った。


ラカンは地面から木の棒を拾う。


片手で握り、反対側の腕へ振り下ろした。


鈍い音が響く。


棒は皮膚へ届く前に止まり、透明な何かへぶつかったように小さく跳ね返った。


「これが安定したオーラだ。俺が作れる中で最も強いものではない。だが、求められた役目は果たす」


棒を足元へ放る。


「誰から始める?」


マヤが前へ出た。


自信があったからではない。


待てば待つほど、両手が震え始めると分かっていたからだ。


ラカンの前に立ち、目を閉じる。


ゆっくり息を吸った。


呼吸。


ケメンの源。


全身へ巡らせる。


形を保つ。


ケメンが、ためらう水滴のように現れた。


最初に両手へ集まり、ゆっくりと腕を上っていく。


だが手首へ達した瞬間、止まった。


指が強張る。


ほんの一瞬、訓練場が消えた。


歪められた空間。


道ではなくなった道。


両手首へ巻きつく黒い拘束。


遠くに立つスカイが、彼女と水を繋いでいた距離を断ち切る。


呼吸が速くなる。


ケメンが消えた。


マヤは勢いよく目を開く。


ヤザンが一歩動いた。


「マヤ?」


マヤは片手を上げ、制した。


「大丈夫」


ヤザンはそれ以上近づかなかった。


だが、信じてはいなかった。


マヤ自身も信じていなかった。


ラカンが言う。


「自分の身体に嘘をつくな」


マヤが彼を見る。


「忘れろと命じたところで、身体は忘れない」


マヤは両手首へ目を落とした。


「もう一度だ」


ためらいが浮かぶ。


「また同じことが起きたら?」


「起きる」


マヤが顔を上げる。


「恐怖を追い出そうとするな。通り過ぎるのを待ち、それからケメンを元の場所へ戻せ。今、手首に何を残すか決めるのはお前だ」


マヤは唾を飲み込んだ。


もう一度、目を閉じる。


ケメンが手首へ届くと、震えが戻った。


今度は流れを断ち切らなかった。


枷の記憶を通り過ぎさせる。


そして水を思い浮かべた。


鞭でも、波でも、槍でもない。


ただ皮膚を包む、静かな一層の水。


ケメンが再び現れた。


両手を包む。


手首へ達する。


一瞬だけ後退し、それでも先へ進んだ。


腕から肩へ上り、身体全体を淡い水色の透明な膜で覆っていく。


硬くはない。


だが、形を失わずに留まった。


ラカンが棒を拾う。


「目を開けろ」


マヤが目を開く。


「構えろ」


頷いた。


ラカンは彼女の肩へ軽く棒を振るった。


水の膜が揺れ、衝撃を受けた場所から波紋が広がる。


それでも崩れなかった。


マヤは半歩下がった。


すぐに足を止める。


「よし」


短い言葉だった。


だが、ラカンの声にはわずかな温かさがあった。


「お前の制御は正確だ。恐怖に、その正確さまで奪わせるな」


マヤは自分の手首を見た。


街道から戻って初めて、そこを擦ろうとはしなかった。


ラカンに呼ばれる前に、シグランが動いた。


マヤと入れ替わり、両肩を強張らせて立つ。


ラカンが言う。


「オーラは防御だ。復讐ではない」


シグランは答えなかった。


目を閉じる。


ケメンが一気に噴き出した。


赤い炎が肩と両腕を包み、その先端に淡い青が混ざる。


熱が訓練場へ広がり、離れていたヤザンの肌にまで届いた。


膜にはならない。


炎はシグランの拳へ集まり、今にも攻撃へ転じようとしていた。


「力を落とせ」


シグランは従わない。


炎がさらに高くなる。


「シグラン」


目を開いた。


そこにあるのは怒り。


そして、その下に街道から消えずに残っているもの。


屈辱だった。


ラカンが棒を上げる。


「構えろ」


振り下ろした。


炎は衝撃を止めた。


だが、受け流しも吸収もしない。


接触した場所で激しく爆ぜ、火の粉が地面へ散った。棒はラカンの手の中で跳ね、先端に細い亀裂が走る。


シグランは亀裂を見た。


「止めた」


久しぶりに使われたその声は、低く掠れていた。


「違う」


シグランの目がラカンへ向く。


ラカンは亀裂の入った棒を投げ捨てた。


「オーラを作ったのではない。自分の怒りを、身体の周囲で燃やしただけだ」


シグランの顎に力が入る。


「それでも、攻撃は止まった」


「木の棒ならな。〈黒の帳〉の首領が相手なら、奴の手を止める前に、お前の炎が自分へ弾け返る」


シグランの周囲で炎が揺れた。


ラカンは退かなかった。


「今のお前は訓練をしていない。あの男へ言い返そうとしているだけだ」


シグランは黙り込んだ。


ヤザンは彼を見たが、名を呼ばなかった。


「炎を半分消せ」


シグランが目を上げる。


「半分……?」


「大きな炎はいらない。俺が欲しいのは、お前の命令に従うオーラだ」


シグランはその場に立ち尽くした。


失敗したことより、その要求そのものが屈辱に聞こえたのだろう。


これまで彼は、炎を高くする方法を学んできた。


もっと熱く。


もっと広く。


だが今、ラカンはそれを抑えろと言っている。


シグランは目を閉じた。


炎が揺らぐ。


片方の肩で燃え上がり、脇腹で消えた。ケメンが腕へ偏り、全身へ広がる前に散る。


目を開いた。


ラカンが言う。


「もう一度だ」


再び試す。


オーラは完成する前に崩れた。


「もう一度」


三度目。


粗い膜が、ようやく全身を包んだ。


赤が強く、縁に現れた青は不安定なままだ。


それでも、炎は外へ噴き出していない。


ラカンは別の棒を拾った。


振り下ろす。


オーラが震えた。


衝撃の一部が肩へ届いたが、シグランは立ったままだった。


炎も爆ぜない。


「今ので、ようやく始まった」


シグランに喜びはなかった。


だが腕の周囲に残る淡いオーラを見つめる目には、数分前までとは違うものがあった。


初めて、自分の炎に掴まれるのではなく、自分で掴もうとしていた。


次はヤザンだった。


シグランのいた場所へ立ち、両手をわずかに上げる。


ラカンが姿勢を確かめた。


「胸へ負担をかけるな。一度だけだ」


ヤザンが頷く。


目を閉じた。


他の二人と同じように、ゆっくり呼吸する。


ケメンの源を探した。


待つ。


何も応えない。


熱もない。


光もない。


皮膚の上に形を取るものもなかった。


慎重に、もう一度だけ試す。


身体へ力を入れすぎた。


胸の傷が締めつけられ、痛みが背中まで走る。


呼吸が止まった。


ヤザンは目を開き、包帯の上へ手を置く。


「やめろ」


ラカンの声が即座に飛んだ。


「もう一度できます」


「駄目だ」


「でも、何もできてません」


「だからやめるんだ」


ヤザンはゆっくり手を下ろした。


マヤが立っていた場所を見る。


それからシグランへ目を向ける。


いつものような嘲笑が返ってくると思っていた。


何もなかった。


シグランは無言で彼を見つめ、片手を首元へ近づけている。


「二人はできた」


ヤザンが呟く。


「二人には、応えるケメンがある」


「僕にはない」


問いではなかった。


「ああ」


ヤザンは自分の掌を見つめた。


「それなら、自分を守れない」


マヤが何か言おうと動く。


ラカンは片手を上げ、止めた。


「同じ方法では守れない。それだけだ」


ヤザンが顔を上げる。


ラカンが近づいた。


「オーラがあれば、いくらかの失敗を受け止められる。お前には、その余裕がない」


「一度でも間違えれば終わり、ということですか」


「だから、間違いを減らす方法を覚える」


ラカンは棒を投げ捨て、オーラを消した状態でヤザンの前に立った。


「お前の訓練は、足から始める」


ヤザンの立ち方を指す。


「膝を少し曲げろ。体重を分けろ。判決を待つ者のように立つな」


ヤザンが姿勢を直す。


「こうですか?」


「肩の力を抜け。痛みを隠すために胸を張るな」


言われたとおりにする。


「強さとは、負傷していないふりをすることではない。今の身体にできる動きと、敵が触れる前に自分を倒す動きを見分けることだ」


ラカンは一歩分の距離を取った。


「触れはしない。俺の肩だけを見ろ」


肩を動かし、ゆっくりとヤザンの胸へ手を伸ばす。


触れる直前で止めた。


ヤザンは動けなかった。


「死んだ」


ヤザンが眉を寄せる。


「まだ当たってません」


「当てれば治療師に俺が殴られる。だが、本物の敵はここでは止めない」


マヤが小さく吹き出した。


ヤザンが振り返る。


「楽しそうだね」


マヤは口元を手で隠した。


「ごめん」


ラカンが言う。


「もう一度」


肩が動く。


ヤザンは真っすぐ後ろへ下がった。


ラカンの手が再び胸の前で止まる。


「死んだ」


ヤザンが息を吐く。


「ゆっくりだったのに」


「ゆっくり死んだだけだ。結果は変わらない」


今度は、マヤの口元にはっきりと笑みが浮かんだ。


シグランさえ一度瞬きをし、すぐに顔を背ける。


「お前の身体は後ろへ逃げようとする。だが、後ろが常に安全とは限らない。相手がお前を追い込みたい場所かもしれない」


ラカンは同じ動作を繰り返した。


三度目。


ヤザンは片足を横へずらした。


遅い。


姿勢も不安定だ。


それでも、胸は手の軌道から外れた。


ラカンの掌が肩の近くで止まる。


「今のは生きた」


ヤザンは足を置き直した。


短い言葉だった。


だが、褒められるよりも重く胸に残った。


「肩を見る。目を見る。体重がどちらの足へ移るかを見る。攻撃は、手が動く前から始まっている。早く読めば、身体で受け止める必要はない」


ヤザンはマヤとシグランを見た。


「二人は?」


「二人は、身体の周囲に壁を作る」


ラカンはヤザンの足元を指した。


「お前は、攻撃が落ちる場所に立たない方法を覚える」


「それって、弱く見えます」


「そうかもしれない」


ラカンは正面からヤザンを見る。


「だが、それがお前に残された道だ。失敗する余裕のない者は、他の者より早く学ぶしかない」


訓練は、太陽が空の中央へ近づくまで続いた。


マヤは何度もオーラを作り直した。


回数を重ねるたびに形成は速くなったが、ケメンが手首へ届くと、まだわずかに遅くなる。


ラカンは急かさなかった。


自分の力でそこを越えさせる。


一度。


もう一度。


繰り返すうちに、震えは少しずつ弱くなった。


シグランは、炎を増やすのではなく、減らし続けた。


炎を減らすことのほうが、失敗そのものより彼を苛立たせていた。


炎が外へ噴き出すたび、ラカンはすべて消させ、最初からやり直させた。


シグランは反論しない。


怒鳴りもしない。


繰り返すたびに、身体を覆う膜から荒々しさが消え、少しずつ安定していった。


そしてヤザンは、ラカンの訓練で十七回死んだ。


少なくとも、ラカンはそう呼んだ。


「死んだ」


ヤザンは足を置き直す。


「死んだ」


反対側へ動く。


「今のは二回死んだ」


ヤザンが動きを止め、ラカンを見つめた。


「一つの動きで、どうやって二回も死ぬんですか?」


「最初の失敗で守りを開け、二つ目で次の攻撃の前へ自分から出た」


「一回だけにできませんか?」


「一回で正しく動けるようになればな」


時間が過ぎるにつれ、ヤザンの身体は動きを止めなくなった。


攻撃を読むのは遅い。


足運びも未完成だ。


それでも、逃げるとは後ろへ下がることだけではないと理解し始めていた。


肩は手の方向を告げる。


体重の移動は踏み込みより早い。


そして、正しい半歩は、力だけではできないことを可能にする。


訓練が終わると、マヤは地面へ座り、両手を膝の上に置いた。


自分の手首を見る。


枷の記憶は残っている。


だが、手首を見たときに思い出すものは、もう枷だけではなかった。


シグランは少し長く立ち続けた。


疲れていると認めたくないようだった。


やがて無言で腰を下ろし、額の汗を拭う。


ヤザンは背中から地面へ横になろうとした。


両肩が地面へ触れた瞬間、痛みに身体を跳ねさせ、慌てて起き上がる。


ラカンが呆れたように見下ろした。


「傷へ負担をかけるなと言わなかったか」


ヤザンは脇腹を押さえた。


「頭より先に身体が決めました」


「なら、お前の身体も馬鹿だ」


マヤが笑った。


大きな笑いではない。


それでも、本物の笑顔だった。


シグランが二人を見る。


一瞬だけ、口元が動いた。


だが、すぐに目を逸らした。


ヤザンを嘲笑わなかった。


回避は弱者の訓練だとも言わなかった。


オーラを持たない者に居場所はないとも言わなかった。


ただ黙っていた。


だが、その沈黙は侮蔑ではなかった。


ケメンもオーラもないまま、〈黒の帳〉の首領の前に立ったヤザンを思い出していたのかもしれない。


そして、思い出した自分自身を嫌っていたのかもしれない。


ラカンは棒を集め、石柱のそばへ置いた。


「明日も同じ訓練をする」


ヤザンが顔を上げる。


「これ全部、少し上手に死ぬためですか?」


ラカンは彼を見た。


「違う」


少し間を置く。


「次に襲われたとき、簡単には倒されないためだ」


ヤザンの顔から軽さが消えた。


マヤが手を差し出す。


ヤザンは一瞬ためらい、その手を取って慎重に立ち上がった。


シグランは一人で立つ。


三人が再びラカンの前へ並んだ。


朝より格段に強くなったわけではない。


それでも、何かが変わり始めていた。


マヤは、枷の記憶が残っていても、今の手首まで支配される必要はないと知った。


シグランは、従わない炎は完成された力ではないと知った。


そしてヤザンは、オーラを纏えないからといって、選べる道まで失ったわけではないと知った。


ラカンは学院の城壁へ目を向けた。


その向こうでは、調査局が、〈黒の帳〉へ道を開いた者が内側に潜んでいる可能性を、音もなく探っている。


そして彼の目の前では、生徒たちが、その道が再び自分たちへ繋がったときにも立っていられるよう学び始めていた。


その日、二人は自分の身体をオーラで包む方法を学んだ。


そして、もう一人は、さらに厳しいことを学んだ。


オーラを持たずに、立ち続ける方法を。

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