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モンペな神様のお陰で悪役フラグが消滅しました  作者: 深沢心
はじまり

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2話.バナナと聞いて喪失感に襲われる人はきっと同志

月明かりが道を照らす時間帯に一人の女が歩道を歩いた。

その足取りは軽やかで鼻唄でも歌いそうなほどその女が機嫌がいいことがわかる。目の前にあらわれた信号が赤に変わりその軽やかなステップを強制的に止められることとなったがそれでも機嫌を損ねることなく笑顔だった。


さてなぜこんなにご機嫌なのだろう?

それには理由があった。



いえーーーい!!やっと明日から待ちに待った連休だあ!今日は夜更かしして、明日はお昼までねてやる!最近忙しかったから連休中はぐーたら過ごしてやる!!決めた、絶対一歩も家から出ないし誰とも会わない!!



そう、何の因果か不幸が重なり休みが潰れ女は今日まで働き詰めであった。ある時は別店舗の職員が病気になりヘルプにはいり休みがつぶれ、ある時は講習の日時が変更になりなんとその日が休日と重なっていたせいで休みがつぶれ……。もしや今月の自分は呪われてるのでは?と思うほどツイていなかった。明日から連休だが、もしかしたら今日の夜にでも「明日急遽◯◯店のヘルプをお願いします」と連絡がくるかもしれない、それか明日の朝にでも「◯◯さんが急病で他に人がいない、代わりに今から出勤できますか?」と連絡がくるかもしれない、さすがにもう連絡はこないだろうと油断した隙に電話が鳴るかもしれない……と疑心暗鬼に陥り女は軽度の“かもしれない連絡恐怖症”を発症し更には危うく休日イップスを患うところであったが、そんな女を気の毒に思った先輩が「明日からの休みは何があっても連絡しない、だからゆっくり休んで」と約束してくれた。その優しさ(処方箋)に女は泣き、恐怖症は完治した。


そんな事情があったため明日からの連休は確約されたも同然なのだ。それはもうウッキウキにもなる。きっと今なら空も飛べる勢いだ。顔も緩み一人で笑っている女は側からみれば立派な不審者。もし誰かが目撃してしまったら不気味すぎて避けられること間違いなし。しかし幸いなことに周りには誰もおらず通報される心配もないようだ。明日からの楽しい休日を妄想していた女は目の前の信号が青に変わったことを確認するとスキップで横断歩道を渡りはじめる。このままスーパーにでも寄って帰ろうかと考えていると不意に視線を感じ振り返った。そこにはいたのは横断歩道をゆっくりと歩く一匹の仔犬。



え、いやいや待って。こんな夜に?一匹で?近くに飼い主さんも見当たらないし首輪してないしやっぱ野良?あーー早く渡らないと信号変わっちゃうかも!でもここの信号長いから間に合うか?ここの信号わりと長いし大丈夫だよね?それに今一台も車止まってないし……。



しかし女はやはり心配になり、危ないから早く渡ってもらおうと子犬に近付こうとしたその時、先程までは一台も車がなかったはずの道路の奥からヘッドライトが見え猛スピードでこちらに向かっているようだ。なんとそれは大型のトラック。信号はまだ青だがトラックはスピードを緩める様子がない。女はそれを確認すると反射的に勢いよく走りだし慌てて仔犬を抱える。既にトラックは目の前まで近付いてきていた。



ぎゃーー!!死ぬ死ぬ!!

……いや諦めるな私!!

Don’t never give up !!

こんなところで死ねない!!

なぜなら……!!

明日から連休だから!!



割としょうもないことを考えながら女は走りその勢いのまま足に力を込めると高く飛んだ。そして無意味に空中で回転し"スタ!"と効果音を付けながら綺麗に着地する。そして着地姿勢をゆっくり正すと、


「120点!!今の回転めっちゃ綺麗にきまった!」


___死にそうになってたヤツのセリフではない。もしここに芸人がいれば「なんでやねん!」とツッコんでくれただろうがここには(バカ)仔犬(癒し)しかいない。急募ツッコミの方。



いやー奇跡。まじ今のは死んだかと思った。まあ昔から運動神経よかったけど死にそうになりながらあんな完璧な回転ができるなんて……もしや、天才では?……いやいや自惚れるのはやめよう、私が天才だったら今頃スーパースターになってないとおかしいはず。ということは、今の奇跡的救出劇は天が私に味方してくれたのでは?絶対そうだ!きっと私前世で囚われの姫を助けたり世界を救ったりなんやかんやしたのよ!それで神様が「キミはまだここで死ぬべき人間ではない」的な感じで手助けしてくたんだよきっと!!


___現在彼女は死にかけた恐怖によりアドレナリン大放出中でバカになっております。



自画自賛しながら助けた仔犬を見ようと顔をむけた女は絶句した。そこには白色かと思っていた毛並みは近くで見ると白銀でキラキラ輝き瞳は美しいアメジスト、けっして野良にはみえない仔犬がおとなしくこちらを見ていたのだ。



え、めっちゃ可愛いんですけど!!

うそ……私心臓がドキドキしてる。

もしやこれが噂の………《恋》!?


___現在彼女は正常な判断ができなくなっています。



いやいや、確かに小さくて可愛いものが大好きだけど!そこに性愛はないわけで!!もちろんロリショタが大好物だけどそれも二次元だからであって実際のロリショタにhsprしようなんて思ったことない!!本当です!!私の性癖はドノーマルです!!そうよ、ないない。それはない!そうだ!!もしやこれがあの有名な、お化け屋敷やジェットコースターを体験した時に近くにいる異性にトキメクとかいう、そう《吊橋効果》なんじゃない!?


___おかえりなさい正常な思考回路。そもそも犬に恋するなんて可能性なんていくら混乱していても普通思わないし、吊橋効果が犬に適用されるはずもない。

……この女、実は元から少しおバカであった。



「わんちゃん怖かったね〜。もう大丈夫だよ!でも危ないから今度からは早めに渡ろうね!」


「きゃんっ!」


「きゃわわわ♡はあ〜癒される〜♡……って和んでる場合じゃない!この子どーしよう、首輪してないしやっぱり野良?いやでも野良にしちゃ毛艶が綺麗なんだよね。……ねえ、キミはどこからきたのかなあ?」


もちろん、仔犬が返事をしてくれるわけもない。仔犬に猫なで声で話かける女はさすがに知っていた、犬が喋れないことを。しかし女は犬だろうが猫だろうが赤ちゃんだろうが何だったらテレビだろうが一方的に会話するタイプであった。


___この犬に話かけている寂しい女を是非優しく見守って欲しい。


「迷子の迷子の仔犬ちゃん〜あなたのおウチはどこですか〜♪」


___……ついに歌いだした。周りに人がいたら間違いなく通報案件だが……もうしばらく優しく見守って下さい。



「キャンッ!」


「そっか~成る程ねぇ~迷子なんだね。でも大丈夫!私が絶対ご主人様を見つけてあげるから心配しないで!!」


「キュ〜〜ン」


「そっか、わんちゃんも不安だよね。でも大丈夫!今日から私、イヌのおまわりさんになるから!!転職するよ!!」


___無理である。どんなに大手の転職サイトにもイヌのおまわりさんなんて職業は載ってないし募集もされてない。……薄々心配されている方がいるかもしれませんが安心してください。

彼女はアルコールを飲んでませんし、薬物に手を出したこともありません。もう一度言います、彼女はアルコールを一滴も摂取していませんし、薬物に手を出したことも一切ありません。




ああーそれにしてもせっかくわんちゃんが返事してくれてるのに何言ってるか全然分かんないよ……めっちゃ悔しい……くっそ、なんで私犬じゃないんだ。いや、そもそも人間のまま犬語を理解できない私が悪いんだ。わんちゃん勉強不足でごめんね。学校で犬語は習ってなかったんだよ。

せ、せめて色んな言葉が分かるコンニャク(夢の道具)さえあれば……。


そんなおバカな葛藤をしつつ、今日はもう遅いのでこのまま連れて帰り飼い主がいないかSNSで呼び掛けてみようかと考える。幸いな事に明日から連休だし暫く預かれる、と。


「わんちゃんもう暗いから今日は一旦家に一緒に帰ろうねぇ!大丈夫!ご主人様がいたら絶対見つけるからね!」


「キャンキャン!」


「そうか~帰りにわんちゃんのご飯も買おうねぇ~」


ニヤけた顔で仔犬に話しかけながら家に帰るため歩き始める。

可愛いわんちゃんと夜のお散歩デート♡などと考える女は現在幸福に満ちていた。

そして仔犬しか見てなかった為ここに一つの悲劇が起こる。


そう、女は足元にバナナの皮が落ちていることに気付かなかったのだ。


"ズルッ!"


「え?」ゴツンっ!!



そして死んだ。



死因:バナナ



(バナナってギャグ漫画かい!!)

誤字脱字があった場合親切な読者様報告をお願い致します!

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