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ぐーぱんカタパルト  作者: 焼きモンブラン
一章 ヒトになる
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17 青 威嚇するケモノ

 朝、目を覚ますと、隣に寝ているサクヤはまだハム王を抱えて熟睡中だった。寝相いいなぁ、この子。


 先にごはんの準備を済ませてから起こそうと思ってキッチンへ向かうと、パパはもう起きてたみたい。

 装備はもうしまい込んでるみたいだし、のんびりしてる所を見ると、オオカミの群れがすぐにどうこうというのはなさそうかな、ひと安心。


「おはよう」

「おはよう〜、スープあっためるからもう少し待ってね」


 挨拶して来るパパに挨拶を返してから、かまどに魔法で火を付けて、手早くスープを温め直していると、ツルさんがパンを持って来てくれた。

 いつも通り見計らったかのようなタイミングは流石です、受け取るのはもちろんパパ。


「いつもすまんなツル、ありがとう」

「やってる事は旅してた時と変わらないんだから気にしないで、こっちも食材はいつも貰ってて助かってるんだし」


 いつもの会話、この辺ほんと進展しないのよねぇ。もう少しお互い、会話を弾ませる努力とかあっても良さそうなのに。


「コノハちゃんとサクヤちゃんはどうだったの?リーダー1人で出掛けて、怖がってたんじゃない?」

「帰って来たら平和そうに寝てたよ、コノハ1人では辛かっただろうからサクヤが居てくれて助かった」


 わたくし達ダシとして使われております。


 でもどうやらツルさん達は外には出なかったのね、夜中はパパ1人だったみたいでちょっと安心。

 パパは無理はしないから、ツルさん達まで連れ出してたらパパ1人では対処できない問題だった、という事になるのです。


「あ、サクヤちゃんと言えば、買い出し組がさっき帰って来たわよ、サクヤちゃんに早く会わせろってみんな騒いでた」

「もう少しかかるかと思ったんだが、意外に早かったな

居辛くさせてしまっても可哀想だから、落ち着くまであまり刺激したくなかったのに」

「みんな楽しみにしてたんだから仕方ないわよ、歓迎のプレゼントを買いに行ってくれ〜、なんて煽ったりしたら、みんな張り切らない訳ないじゃない」


 わたし達が買い出しに置き去りだったのはパパの仕業だったらしい。

 あ、スープそろそろいいかな。


「スープできたよ、ツルさんも食べていかない?」

 社交辞令、社交辞令。ツルさんはあんまり人前で物を食べたがらないのです。


「美味しそうなスープだし残念なんだけど、もう朝は食べて来ちゃったからまた今度、ね」

 社交辞令を返して、わたしとパパに手を振って帰っていくツルさん、ここで無理して食べていかないとこがこの人の限界なのかな、イマイチ応援しきれないのよね。



 さぁ、食べずに帰ったツルさんはほっといて、サクヤを起こしてたのしい朝食です、今日のスープは自信作ですよ〜

 と思ったら、サクヤの寝起きの悪さが昨日よりパワーアップしてた……

 スープを口元に運べば食べるんだけど、ほとんど無反応ですよ無反応。

 パパも苦笑いですよ。

 まあ、ずっと本読んでて限界突破してたしねぇ。


 仕方ないから、昨日入れなかったお風呂に一緒に入ってサクヤ分補給。

 みんなにお披露目するみたいだから綺麗にしときましょう。

 パパには先に行ってもらうことにした。


 髪を梳いて、今日の服は目立つ赤のチュニックに、短めのパンツ。

 ひもで締めればおっけーです。うん、可愛い。

 わたしもお揃いの水色のチュニックで合わせる。


「ん〜、あかいのふく」

 どうやらようやく頭が起きたみたいで、お勉強を再開するサクヤ、いちおう伝えておこうかな。

「今日はみんな帰って来てるからサクヤのお披露目に行くの、だから今日はいい子にしててね?」

 きょとんとするサクヤ、これはわかってなさそう。

 まあ行けばわかるよね。


 手をつないで、村を反時計回りに回って集会所へ。ちなみに兵士の3人は集会所の2階に住んでます。

 村には宿屋がないので、お客さんが来た時もここを使うから、けっこうちょうどよかったり。


 イワさんの鍛治小屋を通り過ぎてすぐ曲がって、ナギさんのお店の次、馬小屋の前のそこに向かってると、馬が外に出してあった。


 じーっと見てるサクヤ、これは馬ですよ〜と教えてあげると、これ知ってる!って感じの明るい表情になった

 勝手に触るのもちょっとアレだし、今はみんな待ってるからあとでね〜。

 通り過ぎたあとも顔をぐるんと回してずっと馬を見てるんですけど。あ、あとで、ね?


 集会所に着くと、普段村に居ないケンセンさんを含めた村のみんなが居た。


「この子がサクヤだ、故あってうちの子になったけどみんなよろしく頼む」

 わたしの横に来て、サクヤを軽く紹介してくれるパパ

 そのサクヤはキョロキョロしながら、一生懸命何か指を折り数えている。


 し、とよん、って言った?

 指が足りなくなってグーパーグーパーってやって数えてるけど、それでわかるかな?

 とりあえず納得してるみたいだからまあいいや。


 みんながそれぞれ自己紹介しながら、サクヤにおみやげを渡して来る。

 商人のナギさん、剣術(走り込み)の先生のスズメさん、魔法の先生のモズさん、お医者さんのイジュさん、普段は隣町で暮らしてるケンセンさんとクモキリさん、あと兵士のセムさんアルソさんトラルさん、パパ達3人もなにか渡してるみたい。

 渡されるたびに、わたしにパスしてくるから、わたしから更にパパにパス。


 そして最後に知らない人。エゼンさんというらしいその人が、にこやかにサクヤに話し掛けながら、なにか箱を渡しに近付いた時、他の人にはニコニコしながら「サクヤ」という単語にだけ反応してたサクヤが、突然うなり声をあげた。

 明らかに威嚇してる、ドアの時より警戒してるねこれ

なににビックリしたんだろう?帽子?


「これはこれは、なにか怒らせてしまいましたかな、どうもすみません」


 サクヤに謝って、降参、のポーズで下がるエゼンさん

 サクヤは警戒を解かずに唸ってる。

 みんなもなんか、え〜って感じで微妙な空気に。


 これはわたしがどうにかするしかない、よねぇ……

 ぺちん、とサクヤの頭を叩いてみんなに謝る。わたしが謝れば

「ごめじゃじゃい」

 不思議そうな顔をした後、真似してくるサクヤ。よしよし、ちゃんとできました。


「まあ、いきなり多人数に挨拶されてビックリしたんだろう、すまないなエゼンさん」


 パパがフォローしてくれて、とりあえずお開きな感じになったので、みんなに手を振って挨拶してから、サクヤの手を引いて集会所を出た。


 抱き上げて顔を近くしてから諭す感じで話しかける。教育は大事なのです。


「ごめんね、叩いちゃって。でも何もしてない人に攻撃しちゃいけないの」

「ごめんねちゃいちゃいた、えももじゃいじゃいの」


 でっすよねー、わかんないよね〜。

 とりあえず、頬ずりで誤魔化した。

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