1 食いたいものと食われたくないもの
書き物初心者の作品にて、ヘタクソな部分も多々あるかと思いますが
気長にお付き合い頂ければ幸いです。
とある地方のとある森、神樹の森と呼ばれる深い森の中、その小さい者は在った。
手入れされていない、腰まで伸びた黒い髪
ぼんやりと前に向けた黒い瞳、白過ぎる程に白い、その割には薄汚れた肌。
同じく薄汚れた白い衣を身に纏ったその小さい者は、何をするでもなくただぼんやりと座っていた。
何を考えれば良いのか、それすらも分からないまま、無為の時を過ごしていたのはどれくらいの時間だったのか、正面の方向から何かが近付いて来るのを認識する。
ぼーっとそちらに目を向けていると、草がガサガサと左右に割れ、目の前に現れたのは、青い毛を頭から生やした、2本脚で動く生き物。
恐怖と焦り、何かに救いを求める感情を撒き散らしているその生き物は、こちらを見て一瞬、後悔のような感情を抱きーー
「ニゲテ!」
何か音を発して、そのまま走り抜けようとして……転ぶ。
直後に同じ方向の草が再度、今度は大きく割れ、現れたのは大きな黒っぽい4足獣。
それを見て、更に大きな恐怖の感情と、大きな音を発する青毛の生き物。
つまりは捕食者と被捕食者らしいが。
黒い獣は、こちらを見て一瞬停止した後、こちらに向けて口を大きく開いて、大きな音を発しながら2本脚で立ち上がる。
どうやら、餌が増えたという認識らしい。
座ったままという訳にもいかないのだろうと思い、とりあえず自分も立ち上が
ゴッ
自分が動こうとした事に反応して、覆い被さるように襲いかかって来た獣が、振り下ろして来た前脚を適当に手で払った所で、獣のアゴに立ち上がった自分の頭が直撃した。
綺麗に180度程回転して仰向けに倒れる獣
……?何がどうなっているのか、小首を傾げて考える。
○こうげきされた
○たおした ←now
○とどめさす。
5秒程考えた後自分の考えに納得して、とどめさす を実行するため、倒れた獣の上によじ登った。
side:コノハ
コノハは混乱していた。
神樹の森南部の、いつもの場所に野草とキノコを採りに入ったら、この辺には居ない筈の猛獣に襲われたのだ。
「クマなんて北の方にしか居ないはずなのにー!」
叫んだところでクマが居なくなる訳でもなく、威嚇して来るクマから慌てて逃げ出す。
半泣きで走りながら、この場に居ない、というか外出を知らせてすらいない父の、都合の良い助けなどを祈りつつ、ひたすら走る。
どこをどう走ったか、もはや覚えて居ないが、どうやら神樹に近い場所、つまり神樹の森の中央付近に来た所で
黒い髪の少女が、樹にもたれてぼーっと座っていた。
恐らく自分より年下だろう、幼い としか言えない背丈の、ぼんやりした感じの子。
知らない子まで巻き込んでしまった!
湧き起こる後悔、でも後悔しても始まらないというか、自分もまだ死にたくない。
「逃げて!」
その少女へ叫びながら走って、そう、その事故の名は前方不注意。
樹の根につまづいて、転んでしまった。
追い付かれた!
追い詰めたぞ、とでも言ってるような、ドヤ顔をしているようにすら見えるクマを見ながら、もう自分でも何を言ってるのかわからない悲鳴を上げ、それでも
無造作に立ち上がってしまい、先に狙われてしまった黒髪の少女の末路から目を逸らせない。
……自分もああなるのだ。
ゴッ
クマの振り下ろした前脚を、ペチンと音がしそうな位軽く払いながらそのまま立ち上がり、クマのアゴに頭突きを入れる黒髪の少女。
「…へ?」
思わず変な声が漏れる。
逆回転して倒れ込んだクマを見ながら、不思議そうに首を傾げていた少女が、クマの上によじ登り、なんと言うか……クマの顔面にマウントパンチを始めた時点で
なんとなく、自分は助かったんだな〜と息を吐き、次に直面している問題、これからどうやって帰ろうか、というソレに思考を向けた。