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WitchDoll〜傀儡人形は夢を見る〜  作者: うつろ
Chapter-9【シャルルマーニュ編】

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95/128

〈9-5〉それぞれの違和感

翌朝。



「それじゃあ、私は行ってくるわね」

身支度を整えたスピカが、宿の扉へと手をかける。

「いってらっしゃーい!!」

ベッドの上からシキが大きく手を振る。

「夕方には戻るわ」

「わかりました。私達も夕方には着くようにしておきます」

「ありがとね」


そう言って扉を開こうとしたところで、その手を止める。

「シキ?」

「はーい!!」

シキが大きく右手を上げる。

「昨日言ったことは覚えているわね?」

スピカが鋭い視線をシキへと向ける。


「もちろん!!」

シキの返事にスピカが満足そうに頷く。

そして扉を開け、一人外へと向かった。



「………………私も」

スピカが出た後、ふとリゼットが小さく手を上げる。

「…………私も、気になるとこ、ある」


「お前も一人行動か?揃いも揃って珍しいことあるもんだな」

「ドールショップとかじゃないでしょうか。リゼットさん人形好きですし」

「まぁそうだろうな。わかった、気を付けていけよ」


ラミアとアルケーがそう言うと、彼女は静かに部屋を後にする。

リゼットを見送り、そして部屋に残された四人は静かにこれからについて考える。


「……………………」

ラミアは少し下を向き、何考えた後

「あの、少しいいでしょうか」

と、手を挙げる。


「この街は今のところ、アーカーシャ教団の手に落ちてないように見えませんか?」


ラミアの言葉に、ハっと三人が目を見開く。

「た、たしかに……名前も聞いてないよね」

「行く先々でその言葉を聞いていたけどよ、俺もまだアーカーシャ教団の名前を聞いてねぇな」

「うちも!!」


確かに、六人が大きな街へ赴く度にアーカーシャ教団の名前を聞いていた。

街の人々の中に教団を信仰する者は必ずといっていいほど居たはずだ。


それなのに、シャルルマーニュには一人もその名を口に出す人が居ない。

マルクシオのような小さな町ならまだしも、ここはロドモンテに匹敵する程の大きな街だ。

来て早々その名を口に出す人がいてもおかしくない。


この街にはアーカーシャ教団が訪れていないだけなのか、それとも何らかの事情があってその名を口にしていないだけなのか。


「じゃあ!うちらの方から聞いてみようよ!!!」

突然、シキが大きく手を上げる。


「は?」


「うちらがアーカーシャ教団の名前を口にすればいいんだよ!!そしたらさ、知ってる人は反応するんじゃないかな!!!!」


シキの考えは単純ではあるが、一番手っ取り早い方法でもあった。

「私は賛成です。向こうから来ないのなら、こちらから行動した方が早い気がします」

「僕も、シキとラミアに賛成するよ」


ラミアとヴェーターはその考えに賛成する。

アルケーは少し考えた下を向き、考えた後

「そうだな」

と、シキの意見に納得した。


リゼット、スピカ、そして四人がそれぞれ行動を起こす。




───────────────────────




スピカが路地裏にやって来ると、そこには既にデリタスも来ていた。

その姿を見た彼女が目を細める。

「そこで何をしてるのかしら?」

スピカは鋭く冷たい声をデリタスへと向ける。


しかし

「あ?誰だテメコラオイ」

それは、スピカも予想していなかった返しだった。

怯えて引くか、もしくは反抗してくるか。スピカはそのどちらかだと予想していた。


だが、デリタスはまるで初めて出会った人へと向けるような視線をスピカへと向けていた。

「私のこと、忘れたのかしら?」

「忘れたも何も初対面だろ、気持ちわりぃなコラオイ」


スピカはデリタスを観察する。声色、表情、視線。その全てを鋭く見つめるが、嘘をついている様子は見られない。


「ただ忘れてるだけなのかしら……。まぁいいわ、氷魔法《グラキエース》」

「んなっ!」

スピカはデリタスを氷漬けにすると、ルーナの元へと歩く。


「大丈夫だった?」

「ひっ!」

ルーナに手を差し伸べるスピカ。しかしその顔は初めて出会った時と同様に怯えていた。

「私よ、スピカよ」

「だ、誰ですか……」

「えっ……」


おかしい。

デリタスはともかく、ルーナが自分のことを忘れるのは不自然すぎる。


「どういうこと………」

あまりに突然の状況に、スピカも動揺を隠せなかった。




───────────────────────




「アーカーシャ教団って知ってますか!!」

「うるさっ…あ、アーカーシャ?聞いたことないね」


「あ、あの……あ、アーカーシャ教団って分かりますか………」

「いいえ知らないわ?なんかの宗教かなんかかしら?」


「おい、アーカーシャ教団について教えろ」

「なんだそりゃ。初めて聞くな、知るわけがねぇ」


「すみません。アーカーシャ教団という組織をご存知でしょうか」

「ごめんねお嬢ちゃん、そんな名前聞いたこともないんだ」


シキ達は街の人々にアーカーシャ教団についての情報を聞きまわるが、誰一人としてその名を知る者はいなかった。

最初こそ嘘をついているのではないか、その名を隠しているのでは無いかと疑ったが、どうやら本当に知らないらしい。


「誰も知らねぇなんてあるのか?」

「有り得ない。と言いたいところですが、現に一人も知ってる人がいませんでした。これは認めざるを得ないと思います」


アーカーシャ教団の手が届いていないのか、それとも大きな力がその介入を阻止しているのか。

今のシキ達にはその何もかもがわからないままだった。




───────────────────────




「………………あった」

街の中央に建つ巨大な時計塔を、リゼットは静かに見上げていた。

行き交う人々にとって、それはただ街を象徴する建造物でしかない。


けれど、リゼットにはそれが違って見えていた。


「………………やっぱり、不思議な魔力」


リゼットは昨日から時計塔の頂上から放たれる魔力の存在に気付いていた。

今まで見たことも解析したことも無い魔法。

おそらくこの街には”大きな何か”が眠っている。


「………………………」

彼女は一人、足を踏み入れた。


時計塔の中に隠された魔力の正体を知るために。

そして、この街に隠された真相を暴くために。

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