〈7-1〉戻ってきた日常
朝。
窓から差し込む光に照らされ、リゼットは静かに瞳を開く。
「…………………んんっ」
ゆっくりと身体を起こし、眠そうにその目を擦る。
彼女の隣には、いつものように小さな人形が横に置かれていた。
リゼットはしばらく何も言わずにぼんやりと部屋を見渡す。
長い旅を続けてきたせいだろうか、こうして自分の部屋で目を覚ますことに懐かしさを感じていた。
「……………………」
リゼットは静かにベッドから降りる。
旅を終えた六人は昨晩、アストルフォへと到着。
そしてそれぞれの家へと帰ってきた。
ゲラーテの一件をきっかけに休校となっていた学園も、最近になってようやく再開したらしい。
リゼットは制服へと着替え、人形を手に取る。
学園を出る前と変わらない、いつも通りの朝。
彼女はドアノブに手を当てると、そのまま静かに学園へと歩き出した。
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「リゼットぉぉぉおお!!!!!!おはよぉぉぉおおおおお!!!!!!」
後方から勢いよく飛びつくように発される声。
シキだ。
「………………………おはよ」
「今日からまた学園だね!!!久しぶりだね!!!!」
「うるさい」
バシッ
「いたっ!!」
デコピンの音と共に聞こえてきたのはスピカの声。
その後ろにはアルケーとヴェーターもいる。
「おはよ。みんな元気そうで良かったよ」
「元気すぎてうるせぇバカが一人いるけどな」
以前と何も変わらない光景。
リゼットはそんな五人を静かに見つめる。
「……………………なんか、懐かしい」
ほんの僅かに彼女の口元が緩んだ。
いつも通りの日常が再び戻ってくる。ただその事で胸がいっぱいだった。
そんな気持ちに浸る中
「………………………………?」
リゼットは校舎の隅へと視線を向ける。
そこには、隠れるように五人を見つめる少女が一人。
「……………………ラミア?」
「あっ……」
名前を呼ばれ、ラミアが小さく肩を揺らす。
「お、おはようございます」
「あ!!ラミアちゃん!!!!!」
「わっ!?」
シキが勢いよく飛びつく。
「今日からラミアちゃんも一緒だよぉおおおお!!」
「こら、朝から抱きつかないの」
スピカがシキの服を掴み、その身体をラミアから引き剥がす。
その光景を見ながら、リゼットは再び僅かに微笑んだ。
六人になった日常が、今日から始まろうとしていた。
しかし
「………………見られてる」
リゼットがぽつりと呟く。
「やっぱりそう思う?」
隣を歩いていたヴェーターも、居心地が悪そうに視線を落としていた。
周囲には、以前と変わらず多くの生徒達が歩いている。
だが、その視線の多くはリゼット達へと向けられていた。
「本当に戻ってきたんだ」
「あの六人ってたしか……」
「新しいセフィラの魔術師でしょ?」
そんな声が、所々から聞こえてくる。
「………………?」
不思議そうに首を傾げるリゼットに、スピカが苦笑する。
「まぁそうなるわよね。私達、今ではセフィラの魔術師なのよ?」
「そっか!うちら今有名人なんだ!!!みんなぁああ!!!セフィラの魔術師のシキだよぉおおおお!!!!!」
シキが勢いよく振り返り、手を振り回す。
「なぁ、こいつセフィラから除籍していいか?」
「賛成」
「なんで!?!?」
シキの一連の行動を見たアルケーがそう言うと、間髪入れずにスピカが即答。
そして、それに驚き口を挟むシキ。
「今日も元気そうですね」
三人のやり取りを見て、ラミアも小さく口を開いた。
だが
「………………」
リゼットはふと校舎を見上げた。
再び始まる学園生活に胸を膨らませ、六人はそれぞれ中へと入っていった。
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「そういえば、新しい学園長が来たらしいわね」
教室へ向かう途中、スピカが思い出したように口にする。
「新しい学園長!!!?」
その言葉にシキが食いつく。
リゼット達がセフィラの魔術師になった後、エウケー魔法学園に新しい学園長が就任していた。
新学園長の就任は大きな話題となったが、むしろ生徒達にとって重要だったのは、それをきっかけに休校していた学園が再開したことだった。
前学園長マグヌスの死後、その犯人についての詳しい真相が明かされることはなかった。
しかし、新たな学園長が就任したことをきっかけに事はおさまり、学園が再開したらしい。
「どんな人なんだろうね!!!!」
「知らないわ。けど、名前はたしか…………」
と、スピカが言いかけた時
『生徒のお呼び出しを申し上げます』
校内に声が響き渡り、六人が同時に足を止める。
『リゼット、シキ、スピカ、ヴェーター、アルケー。以上五名は、至急学園長室へお越しください』
「早速呼び出し!!?うちら何もしてないよ!!」
突然の呼び出しにシキが困惑する。
「お前はやらかしてばっかだろうが」
「アルケーと同意見ね。でも、私達も呼ばれてるということは、セフィラ関連かしら」
「そ、そうだといいんだけど……」
「それなら私も着いて行った方がいいですかね」
「………………………多分」
それぞれは不安を背に、学園長室へと向かう。
そして静かに扉を開いた。
「やぁ、来てくれたみたいだね」
部屋から聞こえてきたのは青年の声だ。彼の容姿はまだ若さを保っており、その瞳からは静かな優しさが伺える。
彼は席を立ち、リゼット達の前に出る。
「まずは初めまして。今日からエウケー魔法学園の学園長になったワクスだ。宜しく」
ワクスは軽く挨拶をすると、リゼット達を見て静かに微笑んだ。




