〈2-1〉開幕
「そろそろ魔法大祭の時期ね」
何かを思い出したようにスピカが静かに呟くと、その言葉に興奮したシキが乗り出す。
「魔法大祭!!なにそれ!?楽しそう!!!」
「あなた知らなかったの?」
「うん!知らない!!!」
元気よく言い切るシキに、スピカが息を吐いた。
「魔法大祭。年に一度行われる学園行事よ。簡単に言うなら、魔法を使った競技大会みたいなものかしら」
「競技大会!?リゼット!ヴェーター!競技大会だって!!」
既に興味津々のシキは、その輝かしい眼差しのままリゼットとヴェーターに視線を向ける。
「個人戦とチーム戦に分かれていて、参加は自由。成績優秀者にはかなり豪華な褒賞も出るらしいわ」
スピカの言葉に、シキの目が更に輝く。
彼女の頭の中は、もはや魔法大祭の事でいっぱいになっていた。
その様子を見ていたリゼットは、小さく目を瞬かせた。
ふと天井を見上げ一息ほど間を置くと、スピカは三人に視線を戻す。
「ふふ、そうね。せっかくだし、私達も参加してみようかしら」
「うちもうちもうちもーー!!出る出る出る出る出るぅぅーーー!!!!」
スピカの参加に乗じ、シキが勢いよく立ち上がる。
そして次の瞬間には、当然のようにリゼットとヴェーターの肩を掴む。
「よし!!じゃあ四人で出場決定ね!!!」 「…………………………え」
「ぼ、僕も…?」
二人の小さな声は、もはやシキには届いていない。
「絶対楽しいって!うちらめっちゃ強いし!!いいなぁなんか青春って感じする!!!!」
そうはしゃぐシキに対し、スピカは落ち着いた声を出す。
「青春の定義、絶対間違ってるわよあなた」
「楽しいからいいの!!!」
教室中へ響くシキの声。
やかましいほどに明るく真っ直ぐな声は、今日もまた四人の間を賑やかせていた。
(早く教室に戻ってくれないかなぁ……)
一方、教卓ではウィンヴェルがかなり困った表情でシキを見ていた。
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魔法大祭受付会場。
大勢の生徒達で賑わうその場所には、既に多くの参加エントリーを待つ者たちで並んでいた。
「すご!なんか本当にお祭りって感じだね!!!」
シキが辺りを見回しながら声を上げる。
そしてあっという間に自分たちの番が回ってきた。
「次の方どうぞ」
目の前に現れる声の主は、鋭い目付きをした女性教師。
「一年担当教師、クロウディアよ」
「シキでーす!!よろしくお願いしまーーす!!!」
普段通りの元気な声。
クロウディアは軽く目を細めると、書類を取り出す。
「魔法大祭は、まず四から五名のチームで行われるチーム戦を行うわ。そしてそのチーム戦の上位四チームにいた生徒達が、トーナメント方式で行われる個人戦への挑戦権を得られる。これが大まかな内容よ」
「トーナメント戦!?!?」
「えぇ。ちなみに途中棄権は禁止よ。怪我や欠損しても、治癒魔法のスペシャリストであるフィール先生がいるからそこは安心してちょうだい」
「え、なんか思ったよりガチじゃない!?!?」
シキが今更気付き始める。
「当然でしょう。これは実力を見るための祭典でもあるのだから」
雰囲気と勢いだけに身を任せていたシキに、呆れた表情で言葉を返すスピカ。
そんな二人に、クロウディアは淡々と言葉を続ける。
「ではチーム名と参加者名を記入して」
「はい!!!」
シキが勢いよく紙を奪い取った。
「え、ちょ………」
ヴェーターの制止より先に、名前が書かれていく。
シキ
スピカ
リゼット
ヴェーター
「これでお願いします!!!」
ヴェーターが固まる。
「で、出るなんて言ってないんだけどなぁ……」
小さな声でリゼットと目を合わせる。
その隣で、リゼットが少し困ったように目を伏せた。
「……………………いつものことよ」
そう言って、小さく笑う
ヴェーターは少し唖然とした表情をしつつも、半ば諦めたのかそれ以上は何も言わなかった。
「よーーし!頑張ろうねみんなぁあ!!!!」
「あなた…本当に勢いだけで生きてるわね………」
スピカが呆れたように息を吐く。
でも、そんな彼女を見つめるスピカの表情は不思議と穏やかだった。
「…………………」
去り際、参加エントリーをしに来たアルケーとすれ違う。
「チッ」
彼は舌打ちをし、鋭い目でこちらを睨みつけると
そのまま何も言わず通り去っていくのだった。
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そして数日後。
待ちに待った魔法大祭が開幕される。
巨大な大演習場には、数え切れないほどの生徒達が集まっていた。
歓声、熱気、騒めき…。
まるで世界そのものが揺れているかのような空気が会場を支配する。
「すっごおおおおぉぉぉい!!!!」
そんな空気に、シキが目を輝かせる。
「人多い…帰りたい…………」
ヴェーターは既に半泣きだった。
「流石の私も緊張が隠せそうにないわ。あなたは大丈夫?」
「………………………うん」
スピカとリゼットは静かに周囲を見つめる。
入場口から、次々と選手達が姿を現していく。
実力に自信を持つ生徒達や有名な上級生達の姿が見える。
どれも学園の優秀な魔術士たちだ。
そして
「……………………」
少し離れた場所。
拳を震わせながら立つアルケーの姿。
その瞳には、既に闘志が宿っていた。
やがて、会場中央へ一人の女性教師が姿を現す。
長い髪を揺らしながら、生徒達を静かに見渡した。
入学式の日、生徒達の前に立っていたあの教師だ。
「全員集まったようね……」
その声だけで、会場の空気が静まっていく。
少しの沈黙の後、再び彼女が口を開いた。
「それではこれより、魔法大祭を開催する!!」
その瞬間、大演習場を揺らす大きな歓声が響き渡った。




