表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/37

ミーナの怒り?

――勝てない。


ミーナの心の中に、その言葉が浮かんでいた。


戦闘は、すでに接近戦へ移っている。


ミーナの剣と、男の拳が何度もぶつかり合う。


ガギィン!!


ギィィン!!


金属が砕けるような音が、森の中へ響き渡る。


砕けているのは、ミーナの剣だった。


だが――男に壊されているわけではない。


原因は、ミーナ自身にあった。


(……これでも、ダメなの)


ミーナが創造した剣。


それは、ミーナ自身が“纏”で込めた魔力の許容量を超えていた。


剣そのものが、ミーナの魔力に耐えきれず砕けているのだ。


だが、それも計算のうちだった。


剣を伸ばして放った、最初の一撃。


あの瞬間、ミーナは理解していた。


――まともな攻撃では、この男には届かない。


しかも相手は、回復魔法まで扱う白魔道士。


なら、戦い方を変えるしかない。


右手で剣を創造する。


そこへ、一撃で壊れるほどの魔力を纏わせる。


振り抜く。


砕ける。


同時に、左手で新しい剣を創造する。


また振る。


また砕ける。


その繰り返し。


ミーナの剣は、振るうたびに新たな剣へと変わっていた。


一撃の威力を極限まで高める。


合理的で、力任せな戦い方。


それこそが――黄魔道士の特権だった。


人には、それぞれ魔法の適性がある。


赤。


青。


黄。


白。


黒。


五系統に分かれた魔法体系。


その中で、創造魔法を得意とする者。


――黄魔道士。


ミーナがそうだった。


剣が何本壊れようと関係ない。


魔力が尽きない限り、何本でも創造できる。


だからこそ、一撃に全てを込められる。


だが――それでも。


ミーナの攻撃は、男に届かない。


理由は、単純だった。


(……“纏”が、負けてる)


男の纏う魔力が、ミーナより上だった。


目の前の男は、白魔道士。


どの国でも重宝される、希少な存在。


白魔法は、赤や黄のように世界や自然へ干渉する魔法ではない。


――人へ影響を与える魔法。


回復。


強化。


支援。


それが、白魔法。


普通なら後衛に立ち、仲間を支える役目を担う。


だが――


目の前の男は違った。


白魔道士でありながら。


前衛で接近戦特化。


そんな常識外れの存在だった。


ミーナは後ろへ跳び、距離を取る。


肩で息をする。


疲労で、視線が自然と地面へ落ちた。


当然だった。


全ての攻撃に、限界まで“纏”を込める。


その上で、連続創造魔法。


限界が来ない方がおかしい。


ミーナは息を整えながら、両手に折れた刀身を握っていた。


対して――


男は、まだ余裕そうだった。


むしろ、楽しそうですらある。


「白魔道士ってさ」


男が、楽しそうに話し始めた。


「支援職って思われてるよね」


「世界の常識だし」


「チームを組めば、後衛に下がる」


「それは、確かに正解だよな」


男が片手を前に出す。


「回復魔法」


「強化魔法」


「それがあれば、前衛は戦いやすくなる」


そこで、男はニヤリと笑った。


「でもさ――それって、陥りやすいミスなんだ」


ミーナの眉が、ぴくりと動く。


男は、興奮したように口早になる。


「なんで、自分に使わない?」


「強化魔法で身体を強化し、纏える魔力も増やせる」


「回復魔法で自己再生もできる」


男は、ゆっくり拳を握った。


「……最強の前衛だと思わないか?」


男の声が、さらに大きくなる。


「白魔道士ってのはね」


「最も希少で――最も強いんだ」


男は笑った。


「これが、君が俺に勝てない理由だ」


ミーナは、ゆっくり顔を上げる。


その視線が、男を捉えた。


「……関係ありません」


男の眉が、わずかに動く。


ミーナの瞳は、揺らがない。


「私が憧れた魔道士は……白魔道士じゃありません」


「何を考えてるのか分からないし」


「人に試練ばかり与えるし」


「意外と、できないことも多いのかもしれません」


男が、黙る。


ミーナの声に、熱が宿る。


「でも――」


「最後はいつも、誰かを守って立っている」


「そんな英雄です」


ミーナは、男を睨みつけた。


「バスタル様こそ――最強なんです」


その瞬間。


男の顔が、わずかに歪んだ。


「……バスタル?」


「あぁ、さっきの男か」


男は少し考え――


そして、吹き出した。


「ふははははは!!」


笑い声が、森に響く。


「英雄の中の英雄?」


「伝説級魔道士?」


男は肩を震わせながら笑う。


「……それ、本当なのか?」


「だって君たち、俺より圧倒的に弱いじゃん」


男の目が、細くなる。


「もしかして――」


「バスタルって、本当に噂ほどの男なのか?」


「本当は、臆病で」


「逃げたいだけの男だったりするかもな」


――プツン。


ミーナの中で、何かが切れた。


英雄を馬鹿にする言葉。

憧れた人を馬鹿にする言葉


その全部が、ミーナの怒りに火をつけた。


抑えられない。


――勝てない相手?


関係ない。


引いてはいけない時がある。


「……リオンさん」


小さく呟く。


その声に反応したのか。


後方で倒れていたリオンが、ゆっくり立ち上がった。


顔には痣。


足もふらついている。


ミーナは、できるだけ笑顔を作った。


だが。


怒りは、隠しきれていなかった。


「今から――」


「目の前の男を、

立てなくしてやろうと思うんですが」


ミーナは、首を傾げる。


「一緒にやりませんか?」


リオンの肩が、ぴくりと震えた。


ミーナが本気で怒っている。


それが、はっきり伝わったからだ。


だが。


次の瞬間。


リオンは、ニヤリと笑った。


「……いいよ」


「俺も、そうしようと思ってた」


ミーナは、再び剣を構える。


自分のせいで、バスタルが馬鹿にされた。


もう、魔力切れなんて考えない。


身体が壊れても構わない。


今、考えることは一つだけ。


――目の前の男を、倒すことだけだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ