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最終話:癒しの花、風に舞う─そして、村へ還る

王都を去る日、アメリアは静かな朝焼けの中で、神殿を見上げていた。


 この場所で多くを失い、そしてまた、多くを得た。

 “癒し”というたった一つの想いが、国を動かし、人の心を繋いだ。

 だが――アメリアの中に芽生えたのは、ただひとつの答えだった。


 「私は、あの村に帰ります。癒しの始まりは、あの畑からだったから」



 村へ戻ると、懐かしい土の香りと、薬草の青い匂いが鼻をくすぐった。


 「アメリアお姉ちゃん、帰ってきた!」

 「新しい花が咲いたよ! 変な色だけど、なんかいい匂い!」


 子どもたちが笑いながら駆け寄ってくる。

 薬草畑の中には、小さな芽が顔を出し、その中にひときわ美しい花が咲いていた。


 それは、王都から持ち帰った“癒しの結晶”を土に還し、育てたもの。

 ――“祈りの花”と呼ばれる新種の薬草。


 どんな毒にも屈せず、そっと傍に咲くだけで心を落ち着かせる。

 その花の中心には、まるで結晶のような光が宿っていた。


 「本当に戻ってきたんだな」


 レヴァルトが鍬を肩に担ぎ、泥だらけの格好で現れた。

 いつの間にか村人たちとも打ち解け、今ではすっかり“頼れる兄貴分”のような存在になっている。


 「あなたはどうするの? 王都に戻るのかと思ってた」


 「馬鹿を言うな。ここが俺の居場所だ。お前がいる限りな」


 レヴァルトはそう言って、照れくさそうにそっぽを向いた。

 その横顔に、アメリアは思わず笑ってしまう。



 ある晩、村の小さな祭りの日。

 祈りの花を囲みながら、アメリアは語った。


 「癒しって、何か特別な力じゃない。

 誰かを想う気持ち、立ち止まって寄り添う心、それこそが“癒し”なんだと思う」


 火の粉が空へ舞い、星がひとつ流れていく。


 その日、村の広場にはかつて王都で“聖女”と呼ばれた少女の姿はなかった。

 代わりにいたのは、一人の“薬草師”として、土にまみれながら笑うアメリアの姿だった。



 季節が巡る。

 アメリアの畑には今日も、様々な薬草が芽吹いている。

 どこか遠くから、また新たな旅人が「癒しを求めて」訪れるかもしれない。


 でもそれはもう、特別なことではない。

 癒しは、“ここ”にあるのだから。


✧ Epilogue ✧

後日談:

王都では現在、“アメリア式癒し療法”が正式に医術として認められ、

ノエリアの治める《セレファの谷》は巡礼と学びの地として繁栄している。


そして、王子リオネルはというと──

現在、王都郊外の診療所で薬草の栽培を手伝っているとか、いないとか。


「……もう、アメリア様の足を引っ張らないよう、私も努力しますので……」


ざまぁ? いいえ、これは小さな“癒し”の続きなんです。

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。


『役立たずと蔑まれた聖女、田舎で薬草を育ててたら、王子と竜が頭を下げに来ました』は、

「ざまぁ系だけど優しい話が書きたいな」という気持ちから生まれた物語です。


物語の主人公・アメリアは、追放されてもなお人を癒すことをやめず、

自分の“癒し”を自分の手で育てていった人物です。


最近のなろう界では、「無双」「追放」「ざまぁ」などがキーワードになることが多いですが、

その中でもこの作品は、

「静かに、自分らしく、でも確かにざまぁ!」

を目指しました。

追放されたヒロインが、恨み言を言わず、それでもしっかり“人生を取り戻す”。

読者の皆さまの心が、ちょっとだけ軽くなったり、

「こういう癒しもいいな」と思ってもらえたら、とても嬉しいです。


✦ 小ネタ:執筆中に考えていたこと ✦

1,王子は最後まで悪役にはしませんでした。

 ……後悔して、頑張ってる男も嫌いじゃないです(笑)

2.竜のレヴァルトは“癒しに不器用なツンデレ”枠。

 無骨な男が土を耕してる絵面が好きで、勝手に幸せになってほしいと願ってます。

3,ノエリアは、実は第2部構想あり。

 “継承と次世代”をテーマにした、彼女自身の物語もいつか書く機会があれば描きたいです。


ここまで支えてくださった読者の皆さまに、心からの感謝を込めて。


物語は完結しましたが、

アメリアたちは今日もどこかの畑で、薬草を育てながら笑っているかもしれません。


また別の物語で、お会いできる日を楽しみにしています。


ありがとうございました。


露草 ひより


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