第四十三話
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変異した蛇ドラが毒液を無造作に撒き散らす。体を捩ったり、這うだけで触れる箇所はドロドロに溶けていく。
「これって、物理攻撃無効とか持ってんのかな」
「さぁ、試してみないとなんとも言えないですが……」
「あん中に武器突っ込みたくねぇよなぁ」
「それは同感です」
明らかにドロドロとした毒液に武器を突っ込んで溶かされたりでもしたらたまったもんじゃない。いくら普段使いしているとは言え、この武器もそれなりに時間と素材をかけているのだ。完全に破壊でもしたらまた作り直すのは面倒くさい。
「とは言え、弱い武器だとそもそもダメージが入ったかどうかわからんしなぁ」
「高威力かつ、壊れても問題ないものなんて……あ」
「ん? なんか思いついた?」
「トゥルーがいてよかったですよ」
「なんだよ、急に」
「血液操作で武器作ればいいじゃないですか」
「……確かに」
血液操作で対象にダメージを与える際、攻撃力の値は俺自身の攻撃力に、貫通力などは速度に依存する。今の俺のレベルはDTIO内でもトップクラスの1840だ。それに加えて戦闘スタイルは高速高火力である。
さらには壊れても、失うのは俺自身のMPであり、実際に素材を失うわけでもない。まさにこの状況において、ドンピシャである。
「天才か?」
「いいから早くしてください」
そうこうしている間にも変異蛇ドラは俺らに向かって毒液を飛ばしてきたり、突撃を繰り返している。俺たちは飛行して回避しているが、攻撃はまだできていない。
「じゃ、やりますか」
俺は右手を血液に変化させる。どろりとした赤黒い液体がだんだんと空に昇るように集まっていく。MPを消費して血液を追加で生成し、数秒後には俺の手には赤黒い大太刀が現れる。刃渡は優に数メートルは超えているだろう。俺も大きさとか気にしてないのでよく分からん。
「よっ……こいっしょ!」
気の抜けた声と共に大太刀が振り下ろされる。振り下ろされた衝撃で地面や木々や激しく揺れ、砂煙を上げる。あ、ルナさんとリラの二人は揺れたけど平気かな?
俺が二人の方を見ると、尻餅をついているのが見えた。ごめん。
「?! トゥルー! 回避!」
「うわっと?!」
焦った声色でラールが俺に声をかける。俺が半分反射的にその場を離れると、俺がいた位置を砂煙の中から放たれた毒液が通過した。
そして数秒後に砂煙が晴れて、変異蛇ドラの姿が顕になる。
「おいおい、まじかよ……」
そこには俺の血の大太刀で胴体が半分に分断されながらも、毒液で大太刀を溶かしながら体がくっつき出している蛇ドラの姿があった。
ダメージは多少入っているが、それも徐々に回復している。つまりは物理無効ではなく、再生持ちということだ。それもそれで面倒くさいけど。
「物理攻撃は無効化されてはいないようですが、あまり得策ではなさそうですね」
「それもそうなんだけど……なんか俺のこと、見てね?」
「まぁ、自身の体を半分にされたらそれは敵意を向けるでしょうね。 少なくとも私はそうします」
「グゥワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァア!」
「ですよねぇ?!」
変異蛇ドラが体を伸ばして突進をしてくる。本来ではギリギリで回避して、すれ違いざまに切りつけたりするのだが、全身毒液だと大きく回避せざるを得ない。
「めんどくさいなぁ!」
「弱点だった巨体が、全身が毒になったことで大きな武器になっていますね」
「うわっ!」
「体の構築はスライムと同じと仮定すれば……」
「ちょ?! あぶね!」
「だとしたらどこかに核があるはず……」
「あのっ?!」
「スライムのように核の位置をずらせると仮定するなら、体積を減らすのが優先事項ですかね」
「おい!」
「なんですか急に大声をあげて」
「わざとやってんの?! ねぇ!」
俺は肩で息をしながらラールに噛み付く。こいつ、人が狙われて逃げてる間、ずっと上空で顎に手を当てて考え事をしていた。妙に様になるのが余計に腹立つ。
「……倒し方を考えてたんですよ」
「それ、俺のことを囮にしなくてもできるよね?」
「……さて、やりますよ」
「お前、後で覚えとけよ」
「はて、なんのことでしょうか」
「はぁ……一旦いいや。 そんで、どうするつもり?」
「吹き飛ばします」
「ん?」
「変異蛇ドラの体を構築している毒液の大半を吹き飛ばします」
何言ってんだこいつ?
おまけ話になりますが、ボスラッシュイベントで出てきたグラトニースライムにもコアは存在しています。ですが本体が濁っており、目視で探すのが大変なので、上位のプレイヤーは凍らせて粉々に砕くことで核もろとも粉砕しています。




