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にくきゅう薬局  作者: 渋谷 春
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第7話 処方内容

患者はまだ来てないようなのでまずは何を話すか決める必要がある。そのためには、この薬がなぜ出ているのかの予想が必要だ。

ちなみに今出ているのは…

1.ゾルピデム塩酸塩OD錠5mg 1回1錠 就寝前 30日

2.ブロチゾラムOD錠0.25mg  1回1錠 就寝前 30日

3.ゾルピデム塩酸塩OD錠5mg 1回1錠 不眠時 30回分

4.ブロチゾラムOD錠0.25mg  1回1錠 不眠時 30回分


過去の服薬歴をパソコンで見てみると、今回からブロチゾラムが追加されている。ちなみに今出ている2種類の薬は全て睡眠薬だ。睡眠薬は寝付けない場合や途中で起きてしまうなど状況によって薬を変えていく。ゾルピデムは寝付けないときに、ブロチゾラムは途中で起きてしまう人が使うのだ。

“今回、ブロチゾラムが追加されたってことは、ゾルピデムだけじゃ途中で起きちゃうからってことだよね?”

だが葵には少し気になっていることがあった。なぜ、頓服で同じものがでているのかと言うことだ。

「すみません。 美夜先生、どうしてこの人って頓服で同じもの出してるんですか?」

美夜は机に置いてある黒猫の人形をいじりながらこちらを見た。

「睡眠薬って処方日数に制限あったの覚えてる? その2つの薬は両方とも30日が限度なの。 それ以上出すには頓服で出すしかないのよ。」

「でも、それって結局破ってることになるから危険じゃないですか?」

「まあ、そう思うよね。 さっきの処方日数はその薬の最大量を投与したときの日数制限なのよ。 2つとも1日に1錠と頓服の1錠を合わせても最大投与量以下でしょ? だからOKってわけ。 まあ実際は1回1錠づつしか飲まないから60日分になっちゃうけどね。」

美夜は少し意地悪な顔をしながら答えた。

「そういう方法もあるんですね…」

葵はこれが正しいのかどうか少し悩んでいた。ルールから外れることは彼女にとって嫌悪の対象だからだ。

「まあ、確かに真っ白な方法とは言いがたいかもしれないけど、どこの病院でも薬局でもやってるわよ。 単純に法律が追いついてないだけね。 ほらNHKの料金徴収が無理やり行われてるのと同じ理由よ。」

“それって関係あるのかな… 確かに理不尽なところだけども”


「にゃーん、にゃーん」

そのとき気の抜けるような鳴き声が聞こえた。

「あの猫が鳴いてるんですか?」

「いや、今のはインターホンよ。こっちの方が好みだから変えたわ」

美夜はなぜか自慢げに言った。

「ほんとに猫が好きなんですね。 え、でもインターホンってことはまさか…」

「ええ、患者さんがきたみたいね。 まあ、がんばって!」

“やるしかないよね… 大丈夫。簡単な処方だから、私ならできる。”

自分に言い聞かせながら葵は受付に向かった。


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