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にくきゅう薬局  作者: 渋谷 春
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第8話 初めての説明

「…」唖然とした。目の前にいたのは美人な女性だった。美夜先生も美人だったけど、この人はなんていうか大人の色気を醸し出しているような女性だった。背はすらりと高く、スタイルもモデルのようだ。

一瞬その女性に見とれてしまい、固まってしまった。

「あの…」

その女性に話かけられ、急いで我に返った。そうだ、お薬の説明しないと…まずは処方箋の名前を読んで…

「えーと、荒田波留あらたはるさん!お薬の準備ができました。」

「はい」少しハスキーな声で答えてくれた。

荒田さんはじっと私を見たと思ったら少し笑った。

「今日は美夜さんじゃないのね。」

「は、はい!私は今日からここで実習することになった桜庭葵です。よろしくお願いします。」

「ふふっつそんなにかしこまらなくていいわよ。私は荒田 波留よ。よろしくね。葵ちゃん」

優しい笑顔に同性でありながら少しうっとりしちゃった。とりあえず、薬の説明しないとね。

「今回は新しい睡眠薬が追加されてますね。最初にもらったお薬だけじゃあよく眠れませんでしたか?」

「ん~、そうねえ、実は前にほかの病院でもらってたんだけど、あんまりあの病院好きじゃなかったから、こっちでまとめることにしたのよ。」

「え、そうなんですか。じゃあ前と別に変ってないってことですね?」

「そうなるわね。まあ、正直毎日飲まなくても問題ないから日数分ちゃんと飲んでるわけじゃないからね」

そのあとはつつがなく会計を終え、美夜先生が荒田さんに挨拶していた。

「今日はありがとう!実習生の練習に付き合ってもらっちゃって。」

「いいのよ。美夜ちゃんのためならこのぐらい軽いわ。それに、葵ちゃんもう少しおしゃれすれば絶対化けると思うんだけどねえ」

「やっぱり? 私もそう思うのよね。良かったらこの娘をもっとかわいくしてもらえない?」

「ちょっ先生たち何を言ってるんですか?私が可愛くなるわけないじゃないですか?」

正直なはなし、この22年間浮いた話一つないし…

「いや、波留ちゃんは見る目はあるから、一回試してみれば? 好きな人が振り向いてくれるかもよ?」

「え、なんで知ってるんですか?」その言葉を言ってすぐにしまったと思った。美夜先生はにやにやと、荒田さんは微笑ましい顔で見ている。少し顔が熱くなるのを感じていた。

「ちょっと、先生ずるいですよ。だましましたね。」

「だましたなんて、葵ちゃんがあまりにもかわいいから…まあいいか。」

それからさんざん荒田さんに誘われたので断り切れず、今週末に会うことになった。今週末は薬局実習の復習したかったけど。

「じゃあ、カルテ書いてみようか?」美夜先生はまだにやにやした顔から戻っていなかった。

「実はさっき波留ちゃんが言ってたことってカルテからわかっちゃうんだよね~」

美夜先生は少し意地悪な顔をしながら言った。

「え、でもほかの病院ですよね?」

「今は医療包括ネットワークのおかげで、マイナンバーに登録している国民なら全医療機関で情報が共有することができるのよ。まあ、それが嫌な人は共有できないけど…。波留ちゃんはお薬手帳とか問診票とかいちいち書くの面倒だから登録してるってわけ。」

医療包括ネットワーク、抗議でもやってたけど、昔じゃ考えられないことだ。ほんの数年前まではある市の中での情報共有が限界だったが、今では全国レベルである。それを可能にしたのが、NIKYUと呼ばれるOSの開発だ。これのおかげで、今までそれぞれの医療機関でバラバラだったシステムをつなげることが可能となったのだ。これにより、日本全国の医療機関で患者の情報共有が可能となった。といっても、まだ患者への普及率は40%で、先は長いのだが…

「とりあえず、波留ちゃんのカルテ入力しよっか?」

「は、はい、お願いします。」考え込んでいたため、美夜先生の言葉に少し驚くも、気を取り直してカルテを入力することにした。基本的にカルテに入力することは4つ。SOAPである。Sは患者の意見、Oは患者の客観的情報、AはS,Oを基にした評価、Pは今後の計画だ。これはどの医療機関でも、どの職種でも共通で、ほかの病院や薬局で入力された情報から総合して判断することになる。薬局では検査値がみれないので病院より当然入力する内容は少なくなってくるというのは昔の話で、今は先ほどの情報共有のおかげで、ほかの病院や薬局の情報も見放題である。まあ今回の患者さんはそんなに入力することはないけど…


入力した後、美夜先生のほうを見ると、右手で自分の髪を少しいじりながら、猫の人形を左手でいじっていた。猫の人形は真っ黒で有名なアニメ映画のキャラクターに似ておる、先生はなぜかおなかを集中的に押していた。

「美夜先生、あの…入力終わりました。」

「ああ、ごめんね。ええと…うん、よく書けてるわね。えらいえらい!」

そう言いながら美夜先生の手が私の頭に触れた。一瞬何が起こったか理解できなかったが、どうやらなでなでされているようだ。

「あの…何してるんですか?」

「え、なでなでしてるのよ。葵ちゃんかわいいからつい!」

「やめてください!」だが、美夜先生は気に入ったのか、その後も数分ほどなでなでは続いた。

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