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にくきゅう薬局  作者: 渋谷 春
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番外編 美夜の休日その1

”朝か…”


美夜はカーテンの隙間からわずかに明かりが漏れているのを見て思った。

眠いのに勝手に目が覚めてしまった。

基本的に低血圧なので朝は弱い。白猫の形をした置き時計を見るとまだ6時30分。職業病かいつも通りの時間に起きてしまった。昨日は次の日休みだから…という理由で、0時まで友達と飲み、午前3時までだらだらと買ったまま読んでなかった小説を読みがら過ごしていた。正直寝足りない。このまま2度寝で…。

もう一度寝ようと壁の方を向き、目を閉じた。だんだんと自分の意識が沈み込んでいく感覚がある。眠りに入るこの感覚が一番気持ちいい。

そのとき、ポフッと何かふわふわしたものが顔に触れる。おかげで沈んでいく意識が少し上昇した。“何なのよ…。クッションか何か?”気を取り直してもう一度…。

ぽふっ!

さっきより強く叩かれた。おかげでさらに意識が地上に…。“ちょっ!お願いだから邪魔しないでよね…”

今は何も考えたくはない。


そのとき生温かく、ザラザラしたものが頬に当たった。しかも繰り返しこすりつけられるうえ、なんだかべたべたしたものが…。これってやっぱり。目を開けると愛猫のキサラ私のほうを見て、不満そうに低い声でにゃ~んと鳴いた。


➋❾〇


「まったく、普段から朝早い時間帯にご飯をあげてたからこんなことになっちゃうのかしらねえ」


暖かいシャワーを浴びながら独り言をつぶやく。いつもこれで無理やり目を覚ましている。まあ、今日は唾液で顔が汚れてたっていうのもあるけど…。ちなみに私の顔を唾液まみれにした張本人は朝ごはんを食べるとさっさと私のベッドに上って眠ってしまった。満足そうな顔を見ると怒る気も失せてしまう。まあ、今日は休みだしこのことは忘れてのんびり過ごそうっと。


➋❾〇


シャワーを浴びた後、朝食をとろうとして、テーブルの上に無造作に置かれた書類を見つけた。そういえば昨日置いたような気が…。なんだっけ?

そう思いながら書類を見ると、「学生実習 定期報告の概要」の文字が目に入った。そういえば昨日八雲から出せって言われてたような…。提出期限を見ると明日までだ。

「しょうがない、午前中で終わらせようっと」


この書類はそこまで書く内容はない。学生が持っている日誌には達成事項があるが、教える側もどんな改善点があるか、どうすればもっとよくなりそうかなどの意見を集めている。ちなみにこれらを集めて論文として発表する場合もある。まあ、今回はそれようだろうけど。普段なら大学時代の経験のせいでこんなものは出さないが、葵ちゃんにばれると面倒だ。おそらく私が出していないとあの教授や八雲が葵ちゃんに何か言うだろう。真面目なあの子なら、私に対する不信感を…。それはさすがに教える側としてはまずいだろう。信用を失ったらいくら言っても聞かなくなっちゃうし。


「ま、すぐに終わるでしょう。」


➋❾〇


今は朝の10時。あれから3時間ほど経つが終わっていない。原因は…。


「みゃん!」

キサラが私のパソコンに乗っていることだ。さっき、無理やり膝の上に移動させたがすぐにまた戻ってきた。この繰り返しが続いているおかげで、書類作成の進みは遅い。

というか、寝てたのに私が作業を始めたら起きてくるって…。


「ねえ~キサラ? もうちょっとで終わるから~、おとなしくしててくれない?」


両手でキサラの顔を挟みながら言ってみた。顔の形が昔見たアニメみたいに変な顔になりちょっと面白い。


「み?」


分かってるのかわかってないのかよくわからない鳴き声をあげた。表情を見てもよくわかってないような顔をしている。…まあ、あと少しだし速く入力しよ。


➋❾〇


「あ~あ、お腹減った~」


今はもう昼ご飯の時間帯だ。あれから書類の入力を終わらせた後、キサラと遊んだのでいい時間になってしまった。ちなみに、キサラは3度寝をしている。

とりあえず休みの日の昼は外食することに決めているので外に出た。というか私はもともと家に1日中閉じこもっていられるタイプではない。とりあえず外に出るタイプなのだ。大学時代も休日は予定がなくても家ではなく外で過ごしていた。


そして私が外食するときにこだわりが1つある。それは1度入った店には入らないということだ。理由は何となく…というかつまらないのだ。周りからはあきっぽいからじゃないのと言われるが…。まあとりあえず私は今まで入ったことのない店に入るタイプなので、今も今の気分にあう店を探している。


「ん??」


目の前に『つなよし』と書かれた居酒屋がある。見た目は和風の入り口でランチメニューは500円と安い。ま、ここでいっか。


店に入るとお客さんが2人カウンターでご飯を食べている。老夫婦のようだ。さて、店員さんは…。


「いらっしゃい!お嬢さん1人かい?」


さきほどご飯を食べていた初老の男性が話しかけきた。この2人が店やってたんだ…。


「はい、すみません、お食事中だったのに。」


「いや、こちらこそすまんね。見ての通り暇だったからさ!で、何にする?」


メニューを見ると、定食メニューがある。ありふれたものはつまらないのでこの店独自のやつでいいか。


「この『つなよしセット』で。あと、ご飯大盛りで。」


「お嬢さん…。そんなに食べれるのかい?」

「はい。私結構食べるので大丈夫ですよ。」


➋❾〇


「はい。つなよしセットです。」

おばあさんが元気よく持ってきた。

つなよしセットは、串カツ5本になめこ汁、漬物の上、ご飯は炊き込みご飯というぜいたくなものだ。

結構おいしそう。じゃ、食べますか。


私が食べていると、他の客が来たようだ。若い男3人だ。


「おい、なんか美人が一人で食べてるぞ。この店にあんなきれいな人来てたっけ?」

「たまたまじゃね?おい、お前声かけてみろよ。」


聞こえるように言ってるのだろうか。ま、興味ないけどね。そう思って食べ続ける。うん、この味噌汁、インスタントじゃなくちゃんとダシとってるわね。


さらに客が来る。どうやら若い女性2人組のようだ。

「ねえ、女の人が一人で飲食店って…」

「あんまり見ちゃだめよ。かわいそうでしょう」

こっちも聞こえるように言ってるんだろうか?

まあ、休みの日に気持ちを荒げたくないから、聞こえないふりしましょう。

私は目の前のご飯に再び集中した。

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