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にくきゅう薬局  作者: 渋谷 春
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第12話 研究室と同級生

八雲先生と実験が終わり、薬学棟に帰るころには19時になっていた。実験としては今日は試薬作成とマウスに投与しただけなので、結果は3日後にわかるのだが…。

八雲先生と今日の実験について話しながら8階の研究室に戻ると、講義が終わった後輩や先輩たちが何人かいた。「研究室」と言っているが、このスペースは学生や教授たちの机がひしめき合っており、

どちらかというと談話室といった方がイメージしやすいかもしれない。大阪医療創造大学では4年生から研究室に属することになっており、ここで進路はいろいろと変わってくる。研究なんてやりたくない!と考えている人は観察研究というデータ集計が主な研究室に属し、研究して企業に行きたい!という人はしっかり研究を行う研究室に属する。ちなみに私がいる研究室は一応後者になるが、薬剤師の実習や勉強も優先させてくれるため、私にとってはとっても都合がよい。研究室は全部で17あり、各研究室には同級生は7人まで所属できる。上限があるということは、当然希望通りに研究室に属せるわけではない。毎年、3年生の後期には人気がある研究室に行きたい人はどうやって研究室配属を決定するか、熾烈な争いが行われ、毎年薬学部の風物詩になっている。ちなみに私の場合は、この研究室は毎年7人まで志望していることはなかったので、争いには巻き込まれなかった。人気がある研究室は結局くじ引きになったらしいが… これではずれを引いた人は人気がない研究室に行くことになる。ちなみにそのせいでこの研究室に属した同級生もいる。その子とはほとんど話したことがないので、よく知らない。紫ちゃんとも同じ研究室で、あとは男の子2人が同級生だ。2人とも研究室に入る前から話したことはあり…

「桜庭さん! クレーマーに絡まれたって聞いたけど、大丈夫?」

研究室に入るや否や一人の男子学生… 私の同級生の七條しちじょう 文也ふみや君が話しかけてきた。

「う、うん。大丈夫だよ。ありがとう、七條君」彼のあまりの勢いに少したじろいでしまった。見た目はさわやかな上、おとなしく、優しい性格なので女子の間でも人気だ。紫ちゃんも彼氏だったらいいね!とは言ってたけど、私は八雲先生のような落ち着きのある大人がタイプなので幼さが残る彼にはそこまで興味はない。

「おいおい、文也、がっつきすぎるなよ!桜庭が困ってるだろう?」にやにやしながらもう一人の男の同級生、五道ごどう あきら君が言った。彼は見た目も中身も派手で有名だ。文也君とは正反対のタイプだが仲はいいらしい。

「!!ご、ごめん、桜庭さん。」文也君は小動物のような顔でしゅんとした。

「気にしないで、七條君。私は問題ないから… それに今から今日の実験についてまとめないといけないから、また後でね。」そう言いながら、葵は自分の席についてパソコンに向かって作業を始めた。

七條君が何か言いたそうだったが、やることもあるうえ、実験後に疲れていたので気づかないふりをした。


2人は研究室の端にある談話スペースで向かい合いながら小声で話していた。

「振られちまったな? 文也。」

「やっぱり、葵さん、僕のこと興味ないのかな?」

「ん~、桜庭は年上がタイプだって水無月さんも言ってたからなあ。でもあきらめることはないんじゃないか?」

「なんかいい方法ないかな? ただでさえ、桜庭さんが実習で会う機会少ないのに…」

「直接会いに行けばいいんじゃない?」

急に割り込まれてきた声に驚いた2人だが、声の主を見てやれやれとした顔になった。

「なんだ、紫か… 驚かさないでよ。」

「ごめんごめん! 葵の件でしょ? 薬局の場所わかってんだから会いに行けばいいじゃない?」

「ええ、でもそんなことしたら引かれるんじゃあ…」

「あんたさわやかだから多分大丈夫よ。不細工だったら通報ものだけど」

ふざけたような口調で言う紫に不安が募る文也。そんな親友の表情を見ながら明はぱっと表情を変えた。

「いや、水無月の言う通り、会いに行くのは良いことかもしれないぞ。俺も一緒についていったらただ同じ研究室の仲間を心配した体でいけるから大丈夫だ! 俺がお前と桜庭を2人きりにするからまかせとけ!」自信満々で言う親友に少しおかしいなと思いがあった。が、

「それなら… お願いします! 」2人きりになれ、そのうえ付き合えるかもしれないという想像に至ったため、余計なことを考えるのはやめた。

「よし、それなら明日の作戦会議だ! やるぞ! 親友!」

「ああ、頼むぞ!」

「明日どうなったかあとで教えてね。」そう言いながら紫はさっさと帰ってしまった。

後に残った2人はそんなことも気にせず、熱い会話をするのであった。

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