表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
のほほん英雄譚  作者: ビオレちゃん
英雄誕生編
92/92

エピローグ

「こうして、新たな英雄は生まれ、王国の危機は去り、平和が戻ったのでした。めでたしめでたし」


ここはとある王国にある、新たに生まれたばかりの小さな村。

そこにある一つの家の中で美しい女性が2人の子供におとぎ話をしていた。


「僕、僕はお母さんの話してくれた英雄みたいになる!」


男の子は言った。


「私は兵士さん達をやる気にさせた聖女様みたいになる!」


女の子は言った。


「ふふ、そうね。でも、英雄や聖女になりたいのなら、もっと勉強しないとダメよ?」


「うっ、嫌いだけど……頑張る!」


「私は勉強頑張る!」


「2人とも頑張りなさい」


母親は2人をやる気にさせるためにそう言った。

その2人の子供を誰かが迎えに来たようだ。


「お迎えに来ました」


「エレノアはいつも早いわね」


「レフィーの子供は可愛いですからね。あの男と全く違うのがまた……」


「……いつまで経ってもそこだけは変わらないわね」


「あの男は相容れぬ存在ですから。さぁ2人とも、そろそろ勉強の時間ですからね! 行きますよ」


「「はぁい!」」


エレノアは勉強を教えるために、レフィリアの2人の子供を連れて行った。


「よし、そろそろ打つ。ちゃんと抑えていてくれよ。そしてよく見ておくんだ。いいな?」


「「はい! 師匠!」」


そのレフィリアが住んでいる家には鍛冶場があり、その男には2人の弟子がいた。


「銅は、丁寧に的確に打つには持ってこいなんだ。鉄は、力強く打つ、そして力加減を学ぶには丁度いい。プラチナは……」


「他の金属より早く固まってしまうから、速く打てるようになればいいんですよね?」


「そうだ。今からそのプラチナを使う。ゆっくり打っていたら間に合わないと君達ならすぐにわかるだろうけどな」


「「はい!」」


師匠は片腕が無かった。弟子2人にはなぜ片腕なのかは知らない。けど、数々の名剣を、名刀を打ち、優秀な防具を作り上げるその人を尊敬していた。いつかは自分もそうなれるほどの鍛冶職人になりたいと、少しでもその師匠の技術を得ようと手伝っている。


その師匠はとある王国きっての名工と呼ばれていた。


師匠が大きくハンマーを振り上げ

そして振り下ろした。


カーン!!!

カーン!!!

カーン!!!


カーン!!!

カーン!!!

カーン!!!


その師匠は片腕だというのに、丁寧に、的確に、絶妙な力加減で、そしてあっという間にプラチナの形を変えていく。


「……凄い」


「やっぱり師匠はスゲェ」


弟子2人にはそれがどれだけ凄いことをやっているのかよくわかっているようだった。夢中になって見ている弟子2人を傍で、また一つの名剣が生まれていった。


「俺もまだまだだよ。俺の師匠には遠く及ばないんだ。でもいつかきっと追いついてみせるさ」


「師匠の師匠ですか。さぞ凄い方なんでしょうね、私も会ってみたいです」


「いつか会えるかもしれない。その時を楽しみに待っているといいよ。さて、後は2人で頑張って、技術は自分で打たないと身に付かない。俺の師匠も口を酸っぱくして言っていたからね。さぁやってごらん」


「「はい!」」


そうして弟子2人は必死にプラチナ鉱石を形あるものに変えていく。初めて打つプラチナに苦戦する2人を見て、師匠は昔を思い出し懐かしんでいた。


「今日はここまでだ。集中力がない時に打っても鉱石が無駄になるだけだからね。俺も良く怒られたよ」


「「お疲れ様でした!」」


「片付けは頼めるか?」


「「もちろんです!」」


「じゃあ頼む」


そう言って師匠は鍛冶場から出ていくとレフィリアが慣れた手つきで近づいてきた。


「あなた。はい、タオル。汗を拭いてください」


「いつもありがとう。レフィー」


「ふふ、妻として当然です!」


「俺にはもったいないな」


「そんなことないです。堂々としていてください。私は幸せなんですから」


「そっか。俺も……俺も幸せだ」


そう言う男の名はヴィータ。

かつて帝国との戦争で帝国将軍と戦い、そして勝ち、英雄と呼ばれた男。その後、レフィリアと結婚し、2人の子供に恵まれていた。


2人は静かにキスをする。2人は幸せそのものだ。


「相変わらず熱々ですね! 見てるこっちが恥ずかしくなりますよ!」


「あら、ティア。そうですよ? 熱々なんです! もしかしたら3人目も行けるかもしれません!」


「羨ましい限りですね! 私達も負けてませんよ!」


「ティア! そんな体で動き回っちゃダメだよ!」


「コン太くんは心配性ですね! まだまだ大丈夫ですとも!」


ティアのお腹は大きくなっていた。コン太と結婚したのだ。もうすぐコン太との子が生まれるかもしれない。コン太にとって、ティアの行動力の高さは今だけは困りものだそうだ。いつどこで痛み出すかわからないのだから。


「人間と獣人のハーフになりますが、きっとコン太くんに似てモフモフな耳と尻尾があるでしょうね! 楽しみですよ!」


「僕も楽しみだけど、今はティアが心配で心配で仕方がないんだ! 大人しくしてほしいよ……」


「やはりうれしいですね。心配されるというのは! ところでへっぽこ店主。頼んだものは出来ていますか?」


「あぁ、出来てるよ。弟子に言ってくれれば持ってきてくれるよ」


「あのへっぽこ店主が弟子を持つとは思わなかったですけど……わかりました。弟子さんに聞くとしましょう! 私も弟子を取りましょうかね。お腹の子にはコン太くんの後付ぎをやってもらいたいですし。細工職人の弟子を取れば……ふむ……村を大きく出来ますね!」


今のティアは商人として、細工職人として活動しつつ、その片手間で村長となったエレノアの手伝いをしている。今は小さな村。それを大きな街へと発展させるために日々頑張っている。そしてそれは成功するだろう。それだけの力がティアには、この村にはあるのだから。


この小さな村には王国に名を轟かせた、鍛冶職人、細工職人、薬師がいる。その者達を頼るために多くの人が足を運ぶ。


ヴィータは帝国との戦争で活躍し英雄と呼ばれるようになる。王国に仕えてほしいと頼まれるが、それを断る。ティアの提案に乗り、王都から離れ、新たにみんなで作った村で自分の目に映る更なる理想の剣を手に入れるために日々鍛冶を続けている。その傍らで村の周りに出る魔獣を一掃している。レフィリアのことを好きだと、愛していると気付いてから、結婚するまではあっという間だったという。何せ両想いだったのだから。


レフィリアは救国の聖女と呼ばれるようになる。ヴィータと付き合うようになり、結婚することになったその過程で王族を辞め、平民となった。今は自分の夢を叶え、ヴィータを支える立派な妻となった。2人の子を持ち幸せそうにしている。3人目が欲しいと思っているようだ。


ティアはコン太と付き合うようになり結婚した。差別意識は王都には無かったが、生まれてくる子が不幸にならないようにと村を作ることにした。大商人、細工職人として王国ではとても有名だ。その名声を利用して今度は村を発展させようという野望を得た。


コン太はティアと結婚した。母親と共に村へ来て、3人で日々幸せに暮らしている。薬師としても有名になっており、コン太の作るポーションは高値で取引されるほど効果が高い。そして回復魔法が使え、医学にも精通していることから、村のお医者さんとして活躍している。


エレノアはレフィリアといるために親衛隊を辞めた。今は村長という役職を得つつ、子供たちに勉強を教える教師をしている。ヴィータのことに複雑な思いを持ちつつも、レフィリアの子を溺愛している。


オランドは王国の将軍として他国にも名を知らしめている。王国を強国として知らしめるためにも、自らを鍛え、兵士たちに厳しい鍛錬を課している。新たにやってくる兵士に志願する者達に新人いびりをして楽しんでいるそうだ。


アリアはオランドとの子を産み、オランドの隣でいつでも戦えるように自らを鍛えつつ、子を育て幸せに暮らしているそうだ。


ルーシュはオランドの右腕として活躍している。どこからか仕入れてくる情報を上手く使い、王国がいつ戦争になってもいいように備えているそうだ。メンドクセェとは言いつつも切れ者として活躍しているルーシュを尊敬する兵士は多い。


バランはオランドの左腕として活躍している。親衛隊に戻ったものの、レフィリアがヴィータと結婚してしまったことで意気消沈し、自らの意思で兵舎に戻っていった。ルーシュにいつもからかわれて怒ったり悔しがったりしているが、なんだかんだ言いつついい友人関係を築いている。


そして王国の歴史に新たな英雄の名が刻まれた。


その名は


救国の英雄ヴィータ


それはヴィータが生まれる前に生まれた救国の英雄と同等の存在として、王国の皆に親しまれる存在となる。おとぎ話として語り継がれていくほどに。


自ら理想の剣を打ち、自らの手で守りたい者を守り抜いた男として。

のほほん英雄譚はこれで完結です。

プロローグから読んでくれた読者さん、応援ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ