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のほほん英雄譚  作者: ビオレちゃん
英雄誕生編
84/92

のほほん83

戦争は終わらなかった。

帝国が動き出したのだ。


元中立国の兵たちの中に帝国兵が紛れ込んでいた。その帝国兵が帝国に王国の将軍の死を、新たな将軍となったオランドの負傷を報告した。


帝国が最も警戒していた男が元中立国の将の手によって討たれた。


その報告は帝国にとってこれほど嬉しいことはなかった。元々準備が整い次第仕掛ける手はずだったが、将軍の死を知った帝国は準備が整う前に軍を動かした。


元中立国をあっという間に制圧し、大波が小波を呑みこむように大軍が流れ込んできた。帝国と王国の板挟みになってしまった元中立国の兵たちはどうする事も出来ずに滅んでいった。


オランドは帝国が動き出したことを知り、すぐに砦に戻っていった。オランド自身も負傷しているためだ。何とかするために将を集めて会議をするが、これと言っていい案が浮かばなかった。


「ヴィータ、お前は王都へ送る伝令兵たちと共に王都へ戻れ」


「オランド将軍! なぜでありますか!?」


「戦い続けでお前の武器が折れちまってるからだよ。その武器以外じゃ戦えないんだろう?」


「……それは……」


砦へ引く際に帝国軍とひと悶着あった。その戦いの中、ヴィータは酷使しすぎた二刀のうち一刀を折ってしまっていた。もう一刀もボロボロだ。


砦にある武器でもヴィータは一応戦うことが出来る。

だが、やはりヴィータの愛刀にはかなり劣ってしまう。


「お前が人一倍頑張ってくれたおかげで、被害が大きくならなかったんだ。お前がいなくなっても問題ねぇ」


「俺はまだ戦えるであります!」


「馬鹿言ってんじゃねぇ。お前が使っていたあの二刀だったなら俺も苦戦するかもしれねぇが、砦にある武器使うんだったら俺は負ける気がしない。はっきり言って役立たずだ」


「っ!」


「悔しいか? だが事実だ。それはお前もよくわかっているだろ? それにお前が守りたいもんはどこにいる? 前に帝国と戦った時みたいに守れるとは限らねぇぞ」


「…………」


「さっさと行け! 今はお前と話している時間すら惜しい」


「……はいであります」


ヴィータは拳を握りしめていた。

オランドに言われたことはすべて事実だ。


ヴィータが戦えたのは自分で打った武器があったから。それが折れてしまった今、どうする事も出来ない。武器を直す術はこの砦には無かった。


「あんな言い方しなくてもよかったんじゃないですか?」


「あのくらい言わねぇとあいつは引かねぇよ。十分すぎるほど助けてもらった。が、あいつはもう兵士じゃない。俺達と一緒に死ねとは言えねぇ」


「そうですね。でも私には言わないんですね」


「もうアリアには言わねぇよ。最後まで俺と一緒に戦ってもらう。支えてくれるんだろ?」


「ふふ、もちろんです。ようやくそう言ってもらえるようになったんですね。本当に長かったですよ」


「悪かったな。さぁ、将達を呼んでくれ」


「わかりました」


……………………………………


ヴィータは王都に戻ってきていた。

どこか落ち込んでいるようにも見える。


「へっぽこ店主。ボーっとしてないでちゃんとご飯食べてください」


「店主さん、ご飯が冷めちゃいますよ」


「……うん、そうだね」


王都に戻ってきてから1か月、ヴィータは王都に戻ってきた兵士から砦を放棄したと聞いたのだ。オランドは負傷して戦えず、砦に常備してある装備や資材程度では帝国の猛攻に耐えきれなかったそうだ。


ある程度準備はしてあったものの、帝国と戦う前準備が全くされていなかった王国軍は砦を放棄せざるを得ない状態にまで追い詰められた。


その後の情報は全く入って来ていない。


それがヴィータを落ち込ませ、不安にさせていた。こんなことになるなら残っていればよかったと。助けに行こうにも、オランド達が今どこにいるのか、それがわからない今どうする事も出来ない。


そんなヴィータは鍛冶にも影響を与えていた。


「こらへっぽこ店主! こんなもの売れる訳ないじゃないですか!」


「ご、ごめん」


「まったく! しばらく鉱石が勿体ないので打たないでください!」


「いや、打つよ。ちゃんと打つ」


「心配なのはわかります。でもしっかりしてください! そんなんだとレフィーを守れませんよ!」


「っ……厳しいこと言うなぁ」


「厳しくして気を取り戻してくれるならいくらでも厳しくしてやりますとも!」


「……ありがとうティア。そうだよな、今の俺は皆の装備を作ってサポートしないと」


「わかればいいんです。次はちゃんとしてくださいね! また同じ事したらハンマー取り上げて隠しますからね!」


「肝に銘じておくよ」


「よろしい! では頑張ってくださいね」


ヴィータはティアのおかげで元気を取り戻した。

そして鍛冶に戻る。

皆を守れる装備を作るために。


カーン!

カーン!

カーン!


カーン!

カーン!

カーン!


もう俺はレフィーだけじゃない。

ティアも、コン太もいる。

それにオランド将軍やアリア先輩。

ルーシュにバラン、全ての兵士達。

守りたい人達のためにもっと、もっといい武器を……。


ヴィータはオランド達の無事を祈り、そしてもう一度仲間たちと一緒に戦うために、レフィリア達を守れるようになるために、ひたすら鍛冶に集中した。

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