のほほん80
連合との戦争から、この話までの流れというものが作れませんでした。なので違和感があると思います。プロローグから読んで楽しみにしていると言ってくれた皆さん。申し訳ありません。
強引ですが、話を続けさせてもらいます。
前回の連合軍との戦争から3年の月日が流れた王国には再び緊張が走っていた。
その王国の中でも最も忙しなく動き回っている都市が一つ。
王都だ。
王都の活気は再び失われていた。
戦争がまた始まろうとしているのだ。
王都の兵舎が王都内で最も活発に動き回っている。
出陣の準備をしているからだ。
また、王国を狙う帝国が動き出した。
その情報がもたらされた王国はすぐに兵を動かそうとしているのだ。
ただし、兵が向かう先は帝国に面した領土ではない。
王国と帝国、その両方に面した中立国の一つが帝国の脅しに屈したのだ。
王国を攻めるか
帝国に滅ぼされるか。
そのどちらかを選べ。
そう脅された中立国は悩みに悩み、その結論を出した。
帝国と戦うより王国と戦った方が生き残れるだろうと。
中立国は度々流れてくる風の噂や、自国で調べた情報で王国にかつての強さはもうない。そう判断した。ただ、それも苦渋の決断だ。少なくとも中立国より強いのは確かなのだから。
慌しく王都から出ていく兵士たちを見送り、とある場所へと向かい歩き出す兵士が2人。
「ったく。脅されたんなら頼って来いっての。敵には容赦ねぇけど味方になればちゃんと守ってやるってのに」
「気持ちはわかります。でも帝国軍に囲まれた中で脅されたのでしょう。仕方ないのでは?」
「そうなんだけどよ。はぁ……最近愚痴ばっかだな俺は」
「それで、本当に頼るのですか? ヴィータを」
「あぁ。今回の相手の裏に帝国がいる。戦争が終わる終わらない関係無しに準備が整えば攻めてくるって話だからな。少しでも早く終わらせて対帝国の準備に時間を使いたい。そのためにはヴィータの力も必要だ。あいつはもう足手まといでも何でもない、立派な戦力だ。伊達に4度戦争を生き抜いているだけはあるってな。兵士としても鍛冶職人としてもな」
「そうですね。最近では兵士たちの武器や防具を大量に作り続けているとか、将軍の計らいで魔獣討伐の際には必ず呼ばれているほどですからね」
「あのティアの嬢ちゃんは大喜びしていたな。嬢ちゃんの作る弓やアクセサリーも、小さな薬師の作るポーションも相当な品だ。もうほとんど王国のお抱えって言ってもいいくらい懇意にしてるらしいからな」
「えぇ、しかし私はヴィータを頼るのは少し気が引けます。もう兵士ではないのですから」
「そうだが、あいつの性格を考えてみろ。今の状況を知ったらどうなると思う?」
「……間違いなく参戦するでしょうね……」
「だろう? 間違いなくどんな劣勢になっていてもヴィータは来る。昔も今もレフィリア様に一途なあいつならな。それに俺が行かなくても、ルーシュの奴が呼びに行くだろうよ」
「確かに。ルーシュはなぜか城内で起こった最近の出来事も知り尽くしていますからね」
「王国に仕える文官より知ってるっぽいからな。レフィリア様がヴィータの家に遊びに行っていることも知ってるだろう」
「レフィリア様がヴィータの家にいた時は驚きました」
「……だな」
相変わらず人気のないヴィータの家に着いた2人は迷わず家に入っていく。
ガチャ
チリチリーン
「いらっしゃいませー!」
家に入ると2人を出迎えるようにカウンター前でアクセサリーを作るティアの顔があった。
「おや、オランドさんにアリアさん。そういえば挨拶がまだでしたね。ご結婚おめでとうございます!」
「お、おう。よく知ってるな」
「ふふ、ありがとうございます」
「ついさっき知ったばかりなんですけどね。ところでやはり今日はお二人もへっぽこ店主に用があるのですか?」
「その言い方じゃ、もう別の奴が来てるのか。ルーシュか?」
「えぇ、戦争に連れていく気なのでしょう。行ってほしくないですが、私が止めても無駄でしょう。レフィーの名前を出せばすぐにでも支度して行ってしまうでしょうから」
「……悪いな。嬢ちゃん」
「構いませんよ。私にはコン太くんがいますからね! 結局のところ、へっぽこ店主が鍛冶を始めたのもすべてレフィーを守るためですからね。あそこまで一途だと妬きますよ」
「そうですね。難しいと思いますが、オランドさんにも一途であってほしいものです」
「おいおい、俺は一途だぜ?」
「……確かに……一途すぎてヘタレてましたね」
「あ、あのなぁ」
「仲睦まじいですね! そうそう、へっぽこ店主なら2階でルーシュさんと話してますよ」
「あぁ、もう話がついてるかもしれねぇが、あがらせてもらうぜ」
「ごゆっくりー」
話し終わったティアは、またカウンターに置いている手元に目を向けてアクセサリー作りを再開した。2人はそんなティアの後ろを通り2階へ上がっていく。
2階のリビングには椅子に腰かけているヴィータとルーシュの姿があった。
「おっと、オランド隊長にアリアさん」
「ヴィータ、ルーシュ、座ってていい。面倒だろう?」
オランドを見て立ち上がろうとしたヴィータとルーシュを止める。
「まぁそうなんですけど、やらないとうるさい奴らがそこら中にいるんで」
「オランド隊長にそんな風に接する人はルーシュだけだと思うよ。オランド隊長も今回の戦争の話でありますか?」
「ルーシュから一通り聞いていると思うがその通りだ。今回の戦争の裏には帝国がいる。その帝国の都合のいいような展開にさせないためにも、ヴィータ。お前の力がいる。頼めるか?」
「もちろんであります! ただ、オランド隊長の言う力になれるかどうか……」
「ヴィータ、お前はいつまで経ってもその低すぎる姿勢は治らねぇな」
「も、申し訳ないであります」
「仕方ないですよオランド隊長。こいつはぁ兵士の頃ずぅっと使えないって言われてきたんですからねぇ」
「……まぁそうだな」
「ま、そういうことだヴィータ。愛しのレフィリア様守るために力貸してくれや」
「愛しってわけじゃ……」
「それをレフィリア様が聞いたらどうなることやらってなぁ」
「レフィー……レフィリア様が聞いたら怒ると思うよ」
「ま、そういうことにしておいてやらぁ。次の出発は2日後だ。それまでに支度を整えておいてくれい!」
レフィーと親しい名で呼ぶ者はこの家に住む者くらいだが、それをヴィータは知らない。レフィリアが今の会話を聞いたら確かに怒るかもしれない。いや、悲しくて泣いてしまうかもしれない。
ヴィータにとってレフィリアは守るべき象徴、王族なのだ。そこにヴィータの中にも恋愛感情があるとはヴィータ自身も気付いていない。
オランド達が帰って行った後、ヴィータはすぐに支度を整えた。
自ら鍛え上げた二刀を腰に差し、自分が動きやすいよう調整した軽い防具をつけ、心配そうに見送るティア達と別れを告げてオランド達と共に王都から離れていった。