表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
のほほん英雄譚  作者: ビオレちゃん
鍛冶職人編
73/92

のほほん72

「将軍、奴らはちゃんと育ってくれるでしょうか?」


「育ってくれなければ困る。俺らはもう歳だ。いつまでも戦場に立てるわけではない。あの程度の傷で動けなくなってしまうのだからな」


「十分深手でしたが?」


「昔はあれくらいなら平気で動き回れた。もう待っていられるだけの力が俺にはない」


「そうですな」


「オランドとルーシュにはもう立ち上がってもらわなければ困る。バランは頭が固いが出来る男だ。ヴィータも少しずつ歩き始めていた。もうすぐあいつらの時代になる。そうなるまでは踏ん張らないとな」


「私が一番驚いたのはヴィータの成長だ。ヒョロヒョロだったあの餓鬼が立派になったものだ。今戦えば将軍と言えど危ういのでは?」


「歳をとったとはいえ、まだまだ負ける気はしないがな!」


「「ハッハッハ!」」


将軍と歴戦の将たちがそんな話をしている中、着々と兵糧攻めの準備が進められていた。


「編成は終わったな。いつ兵糧を攻める?」


「ヴィータとバラン達の準備が終わり次第すぐにでも行きてぇなぁ。動き出すのは夜。森を制圧するついでに拠点の位置を聞き出して一気に攻める。気付かれる前に終わらせる」


「時間との勝負だな。今回兵を率いるのはルーシュ、お前だ。しっかりやれよ」


「はぁ……なんで俺が……」


「隠れてたってわかる奴にはわかるんだよ」


「わかりましたよ。オランド隊長」


「隊長はお前だルーシュ」


「……はぁ……」


……………………………


「ヴィータ。お前は本当に鍛冶職人になったのだな。ちゃんと直っている」


「あるものでしか直せてないから、防御力に期待しないでよ」


「ルーシュが言うにはバレなきゃいいそうだからな……気に入らんが仕方ない」


「気に入らねぇなら参加しなくていいぜぇ? 士気に関わっちまうからなぁ」


「将軍も認められた作戦だ。命令はちゃんと従う」


「ならいいけどよ~」


「ルーシュ。言われた通りにやってみた。どう?」


「十分だな。これだけ揃えれば後は現地調達でいい。よし、作戦は明日の夜決行だ」


ルーシュは将軍に報告し、編成した兵士たちを休ませた。

夜、密かに砦から100人の兵たちが出ていった。

その兵たちの半分は連合軍が使う装備を着けている。


ルーシュが指揮し、先導し、森へ入っていく。

偵察兵の報告通り、連合軍の兵たちが森を巡回している。

その兵たちを一人、また一人と闇に乗じて仕留めていく。


「さぁ、こんなもんだろう。拠点の位置は把握した。取りこぼしはねーな?」


「問題ない」


「おーし、後は燃やしに行くだけだ。一気に行くから遅れるなよ」


「「「おう!!」」」


連合の兵に偽装したルーシュ率いる兵たちは、時にはうまくやり過ごし、時には力ずくで拠点まで駆け抜けていった。見張りを騙し、拠点内に侵入したヴィータ達はルーシュの指示に従い、夜、敵兵たちが寝静まった頃を見計らい、すぐに鎮火されないように油をバラまき一斉に火を放つ。


炎に包まれた拠点が騒がしくなり始めた頃にはもうヴィータ達は拠点の外にいた。


「こうもうまくいくとは……」


「言ったろバラン。連携も取れてない連合なんてこんなもんだ。さぁ次の拠点へ急ぐぜ。今日起こったことが他の拠点に伝わる前に同じことやらなきゃなんねーんだ」


「伝わっていたらどうするつもりだ?」


「そんときゃ強引に燃やすしかねぇなぁ」


次の拠点まで迅速に移動したヴィータ達は同じように見張りをうまく騙し拠点内に侵入することが出来た。が、うまくいったのはここまでだった。嘘をつくことが苦手な正直者のバランがやらかしたのだ。


「あの馬鹿野郎、馬鹿正直に王国兵ですなんて言いやがって!」


「どうすんだルーシュ!?」


「ここまで来て逃げ帰るなんて出来ねぇ! 各自でバランを囮に使って、敵兵に紛れて火を放て!」


「わかった!」


ルーシュが編成した兵士たちの半数以上がルーシュと同じスラム街出身者だった。手慣れた兵たちは兵糧が蓄えられている倉庫を見つけ出しすぐに火を放つ。炎に包まれた拠点にいる兵たちは敵味方の区別がつけれず混乱していた。


「バラン! こっちに来い!」


「す、すまない」


「戻ったら覚えておけよ!」


「いたぞ! あいつらは敵だ! 間違いない!」


「ったくよぉ! バランさんよぉ! そんなんだから舌噛むって言われんだぞ!!」


「うるさい! いつまで引っ張るつもりだ!?」


「だったら活躍しやがれ!」


「わかっている!」


「敵陣突破するぞ!」


ルーシュとバランが連合兵に追いかけられている間に、オランドとアリアが散っていた兵をまとめ上げ合流。ひと悶着あった後、ヴィータがルーシュを庇い負傷。


だが統一された王国兵たちは拠点から脱出に成功した。


「俺を庇わなくてよかったんだぞヴィータ。俺はバランを盾にするつもりだったんだからなぁ」


「おい!」


「い、いやぁ……俺よりルーシュの方が皆には必要だから……」


「お前はそういう奴だったなヴィータ」


「昔から変わりませんね」


ルーシュの策が上手くいったことで大量の兵糧を失い動揺が広がった連合軍の士気は低下。それを感じ取った将軍ら歴戦の兵たちは畳みかけるように戦線を上げ、連合軍を押しのけるように拠点を奪う。


戦線維持が出来なくなった連合軍は次第に内部分裂を始め、バラバラになった連合軍を各個撃破。烏合の衆と化した連合軍はもはやどうする事も出来ず撤退を始めた。


王国は深追いせず帝国の動きを警戒し、早々に戦争を終結させた。

戦争当初こそ苦戦したものの、蓋を開けてみれば王国の圧勝であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ